第九十話 毒薬
「取り調べの結果こいつらは観光客をだましてぼったくりしたり、この辺の商店を脅して金を巻き上げたりしてただけで、観光船そのものにはあまり絡んでないのか」
「観光事業とか言ってたけど事業もろくにしてないんだね」
「こいつらに脅されて観光船以外の船が出せず漁ができなくなったと言ってた人もいましたね」
『弱いものを脅すことが事業とはあきれた悪党じゃのう』
「がるるる」
『ひぃっ!』
『しかも強いものには怯えるとは情けない』
「チョコちゃんはつよいもんね」
「ぐるる」
「やっぱり計画を立てたのはあの詐欺師みたいだな。こいつらの頭じゃ大それたことはできないだろ」
『あの詐欺師はやはり最初に絞め殺しておかなかったから被害者も多くなったのだ(あぬっちゅぬじむのーんちゃふぇーくにくびりくるちょーかんたんくとぅきがにぬんうふぉーくなてーん)』
「まあおじさんは影が追ってるだろうからとりあえず島に行こうよ」
『でもこの人たちを捕まえたら観光船はどうやって乗るの?(やしがうったーかちみてぃからくゎんこーしのーちゃーぬいびーが?)』
「観光船を実際に動かしてたのは脅された地元の漁師の人たちだから喜んで協力してくれたらしいぞ」
『船はいやじゃのう……』
「まだ言ってる」
「船に乗れない桃太郎とかだっさ」
『わしはどうせ勇者でも桃太郎でもないんじゃ……』
「ああすねちゃったじゃん」
「ぐる」
『む、これは……いかん、早くここを出るぞ!(ん、くれー……だー、ふぇーくくまからんじら!)』
「どうしたの?」
『あの悪者が変な毒薬をまいていったようだ(あぬわるむんぬふぃんなどぅくぐすいまちほーてぃんじゃるぐとーん)』
「毒? なんの毒だ? 調べてみよう」
「辰巳、まずはいったん出るのが先」
「ん、わかった」
「桃太郎も行くよ」
『うん』
「さすがトラ様、猛獣使いの名を冠するだけありますね!」
「はいはいエドさんも落ち着いて」
『まだ影響は強くないようだがみんなちょっとおかしくなっているな(なーだしるしぇーちゅーくねーんぐとーしがんなびっちぇーんふぃんなとーさ)』
「はいみんな、深呼吸して」
「すーはー」
「水飲んで」
「ごくごくぷはー」
「どう?」
「治った」
『そんな簡単に治るかい!』
「桃太郎ツッコミできるようになったね」
『早く勇者の島に行こうよ!(ふぇーくゆーしゃぬしまんかいいちゃびら!)』
「一人治ってないのがいるな」
「もとからかもしれないからよくわからないけど」
『たぶん私がずっと飲まされていた毒薬と同じだろう(うーかたわーがぬまさりとーたるどぅくぐすいとぅいぬむんやるはじ)』
「なんだその毒薬って? どういう毒だ?」
「あれ? まだ治ってない?」
「トラ様、これが通常営業です」
「そうだった」
『あのうそつき男と離れてから毒が抜けて少し落ち着いてきたが、興奮して失言をしたりおかしな行動をしたりするような毒薬だと思う(あぬゆくしむにーしゃーとぅふぃざみらりてぃからどぅくぐすいぬぬぎてぃくーてーんちむとぅやーちちゅーしが、ちむわじわじーとぅなてぃいーっくゎしゃいいるんなくとぅしゃいしゅるぐとーるどぅくぐすいやらうむゆん)』
「単におかしなやつだと思ってたが薬のせいだったのか」
「あれ? まだ治ってない?」
「トラ様、これが通常営業です」
「そうだった」
『ねえ早く勇者の島に行こうよ(えー、ふぇーくゆーしゃぬしまんかいいちゃびら)』
「あれ? まだ治ってない?」
「トラ様、どうやらこれが本性のようです」
「知ってた」
『本性はそんな簡単に治らんのう』




