第八十五話 勇者の孫
「よく食うな」
「相当おなかへってたんだね」
『くれーたんめーぬつくたるうぶんぬぐとーん。なつぃかしゃぬ』
「泣きながら食べてますね」
「おじいさんのごはんに似てるって」
「あの詐欺師はどうなったんだ?」
「あれは影が監視してますのでいつでも押さえられますよ」
『その影っちゅうんはなんなんじゃ?』
「エドさんの分身みたいなやつだよ」
『分身? 忍者か?』
「さすが勇者。忍者知ってるのか」
『ニンニンってやつじゃろ?』
「なんかイメージがかたよってる気がする」
「なんですかそのニンジャって?」
「影みたいなやつだよ」
「循環さすな」
「混乱してきました……」
『くゎっちーしゃびたん。ちゅふぁーらかだん。くぬぐうんちゃぬぐとぅっしけーししぇーゆたしゃがわからん』
「おなかいっぱいになってよかったね」
「なんか落ち着いたな」
『もうやけになって暴れたりせんことじゃ』
『わーがわっさ。あひゃんがれーっしてぃべーとーたしぇーわっさしゅんどー』
「ちゃんと謝れてえらい。あとちょっと言葉づかいが違う?」
「全然わからん」
「地元の人に聞きましょう」
『ぐぶりーさびら。しだるさらーさぎやびら』
「あ、いいところに。お姉さん、この人の言葉ちょっと違う気がするんだけど?」
『ぬーがたがら?』
「なんかしゃべって」
『くぬやどぅぬっちゅやみ? くゎっちーしゃびたん。むるまーさくとぅかふーしやたさ』
『あい、にふぇーでーびる。……くぬっちょーぶんぬあるっちょーあいびらに?』
「やっぱそうなんだ。この人えらい人らしいよ」
『やしがあんぐとぅはごーぎさるっちゅぬじぬんむっちぇーうらんしぇーふぃるまさぬ。かにぬはんでぃとーるぐとーいびーん』
『いーひゃー、あしひゃー!』
『あきさみよー!』
「はいはい落ち着いて」
『なにを言われてどう興奮しとるんかさっぱりわからんわい』
「えらい人なのにこんな小汚くて金持ってないなんておかしい。頭のネジが外れてるみたいって言われて、ああそうだよ!って逆ギレしただけ」
「そうなんだ。そこは認めちゃうんだ」
「常識があるのかないのかよくわかりませんね」
『わーがむんぬあてぃぬねーらんしどぅしっちょーる。わかとーさ』
「知らないってことがわかってるのはえらいね。でもお姉さんを驚かせたのはよくないね」
『わーがわっさ。うさんなむんにうまーりてぃんじふぃねーむん、ちゃーしんいじぬすぃじららんぐとぅなとーん。くぬぐとぅふぃんちしゅしぇーふぃんやっさ』
「すぐ反省して謝れるのえらい」
『わんにんぐぶりーさびら。あねーいやんむんやいびーたん。やなむにーっしねーくとぅわっささびら』
「仲直りできてえらい」
「低レベルにほめすぎだろ」
「人はほめられると悪いことできなくなるから」
「計算されてた」
「トラ様は人心掌握がお得意ですから」
「なんかいやなほめかただな」
「それでおじさんの名前は?」
『わんねーうにつぃびんでぃいゆるむんどぅやる』
「うにちび?」
『あんやさ』
『むしかゆーしゃぬあとーあいびらに?』
「なんで?」
『ゆーしゃぬなーじきーやなめーんかいうにぬちちゅくとぅやいびーんどー』
『やさ。わーたんめーぬゆーしゃどぅやたっさ』
「え? おじいさんが勇者だったの? 勇者の孫?」
「ちょっと待て。急にどういう話だ? それに勇者『だった』ってどういうことだ?」
「この人の名前はうにちびで、名前にうにがつくのは勇者が名付けた子孫らしい」
「ウニナーのウニですか?」
「ということはオニナパのオニ? 鬼か?」
『鬼が勇者ってことかの? 混乱してきたわい』
「で、おじいさんがその勇者で、……名前は?」
『たんめーやうにまるやたっさ』
「うにまるだったって」
『うめーやうわーちみしぇーびてぃい? むしか……』
『にじゅーにんあたいめーうてぃみーくーてぃーしゃん』
『あぎじゃびよー!! みしなーく……』
「二十年くらい前に亡くなったらしいよ」
「それってここの勇者が本物だったとしたら、もしかして勇者が亡くなったから虎彦の父さんが召喚されたってことになるのか?」
「魔王が存在するかぎりこの世界に勇者が一人だけ呼ばれるって魔……カーさんが言ってましたね」
『なんじゃ。この世界に勇者が一人しかおらんのならわしは勇者じゃないということじゃろう。わかっておったのなら早う言わんか』
「いえ、カーさんがそう言ってるだけで確認がとれてはいませんので」
『うぇーんうぇーん、うやふぁーふじがなしーめー』
『なくな。なかんけー』
『初めて言っとることがわかった気がするのう』
「ほら、これで拭いてあげなよ」
『い~、くれーちゃーしゅが? はごーさぬ』
「おじいさんのむかし話でも聞かせてあげれば?」
『えー、んかしんかし、たんめーややまんかい……』
「そういう話じゃなくて」
「なんかわからんがボケを感じた」




