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第八十話 うぶん

『ぐぶりーさびら、うぶんぬしこーいなとーいびーんたい』


「ぐう」


「がるる」


「すう」


『ぐがー』


「んむにゅ」


『あぎじゃびよー。んなくたんでぃんじてぃゆーゆくとーるむんぬ……』


「んあ? あれ? おはよ」


『ぐすーよーぬゆくとーるとぅくるぐぶりーそーいびーたしが、うぶんぬしこーいなとーいびーたくとぅ、ぬんちけーがちゃーびたんどー』


「そうなんだ。みんなー! ごはんだよー!」


「ごはん!」


「がう!」


『む? 飯か?』


「むにゃ?」


「エドさんが寝ぼけてるの初めて見た」


「ね、ね……」


「ん?」


「寝ぼけてませんよ!」


「はい、よだれ拭いて」


「んむ」


『ぐすーよー、くまんかいめんしぇーびれー』


「行こう」


「相変わらず一言もわからんのだが」


「ふぃーりんぐ?」


「虎彦のはちょっと合いすぎじゃないかな」


『わしも地方の言葉はなぜかむかしからわかるほうじゃが、ここの言葉はわからんのう』


「俺と同じってことか。……どういう仕組みなんだ?」


「翻訳魔法を通してもわからないのは不便ですね」


「もう少し改造してみようかな」


『くぬうじゃうてぃうぶんぬしこーいなとーいびーくとぅゆーゆーとぅしくぃみしぇーびれー』


「ありがとう」


『うおお、こりゃあすごいわい』


「盛りだくさんだな」


「毒見は……大丈夫そうですね……うるさい!」


「どしたの?」


「いえ、なんでも」


「影にからかわれてるな」


「油断しました……タタミは危険ですね」


「いや畳のせいじゃないだろ」


「このお魚おいしいよ」


『こっちの煮物もうまいのう』


「なんでこんなに味付けが和風なんだ?」


「出汁が効いてるよね」


「キゥミュィァマェントゥ王国にはない味ですね」


『むかしせんせが作ってくれた味に似てるのう』


「サツマにはこういう味があるの?」


『いんや。せんせ以外にこういう味の料理は作れんと思うぞ。しばらく食べてないのう』


「こっちにも勇者がいたのかな?」


『勇者? 勇者とこの料理となんの関係があるんじゃ?』


「あれ? 魔道具師組合の棟で勇者の国の料理ってのがあったけど食べたことないの?」


『それは親子丼、そば、ラーメン、ハンバーグ、カレーとかそういうのじゃろ?』


「あー、普通の和食を知らないのか。お子様向けの料理ばかりだな」


『わしはせんせが作ってくれたもん以外知らんからな』


「え? そのせんせって勇者??」


「えーと、その話はまた今度にしようか」


『いや、おぬしらが知らぬのもムリはない。つまらない話じゃがわしの過去についてすこし話しておこう』


「え? つまらないならいいや」


『そうか……(しゅん)』


「ちょ、いや、話したいなら話していいぞ。虎彦、たぶんおもしろいから聞こうか」


「わかった。いいよ」


「トラ様、おもしろいとよろしいですね」


「こら、圧力をかけるな」


『う、うむ。おもしろく脚色しよう』


「妙な脚色はしなくていいぞ」


「むかーしむかしあるところに」


『おお、それは! そうじゃな、それでいこう』


「なんか急に心配になってきたな」


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