第七十九話 ウニナー
そのあといくつかの島に停泊しながら四日後にオニナパに着いた。
「やっとついたな」
「がううう」
「いろいろありましたね」
「用心棒は結局船酔いで役に立たないし」
「途中で出た怪物も辰巳が倒したし」
『かたじけない』
「まだ元気ない?」
「苦あい薬飲むか?」
『それだけは勘弁じゃ……』
『はいたい。ゆーいめんしぇーびーたん』
「ん?」
「翻訳魔法効いてないんじゃない?」
「いや、翻訳されてこれだぞ?」
「久しぶりに絶望しました」
「虎彦ならわかるか?」
「ぜんぜんわからないよ」
『オニナパの連中はちょっと変わった物言いをするとは聞いていたが』
「わかるの?」
『皆目』
『ぐすーよー、やどぅんかいぬんちけーっしいちゃびらたい』
「どこに行くの?」
『なーまーがなねーかとぅまゆるとぅくるぬあてーあいびーみ?』
「ないけど」
『わったーやどーうぶんいっちんうんしらーさいびーんたい』
「よし行こう」
『くまんかいいめんしぇーびれー』
「なんだ? どうなったんだ?」
「この感じ久しぶりですね。大変無力です」
『客引きの類であろうとは思うが』
「おいしいごはんの出る宿だよ」
「どこがどうなってそうなるんだ?」
「わかんないけどおいしそうな気がする」
「おいしいならしょうがない」
『……それでいいのか?』
「こういうときはトラ様におまかせするのが一番ですからね」
「悟ってるな」
「ところで桃太郎は用事があって来たんじゃないの?」
『ああ、そうじゃ。宿に着いたらちょっと依頼人を探しに行こうかの』
「……探しに?」
『その辺で聞けばわかるじゃろ』
「聞く? オニナパの言葉わかるのか?」
『わからんかのう?』
「まあいいけど、晩ごはんまでに帰ってくるんだぞ」
「辰巳がまたお父さんムーブしてる」
「だれがお父さんか」
『なんだか懐かしいのう』
『ぬんちけーさびたん』
『はいさい。ぐすーよーながみちっしうくたんでぃんさーいびらに? でぃーさい、くまうてぃみふぃさあらてぃうじゃんかいいみしぇーびれー』
「足洗うの?」
「お湯か?」
『おおこりゃあいいわい』
「なにかいい香りがしますね」
「ごわごわタオルが気持ちいい」
『うーふーいちゃびらたい。くまーうんじゅなーぬうじゃやいびーんたい』
「おお、立派なお座敷」
「和室? クマモトにもサツマにも和室はなかったよな?」
『これは……初めて見るがなかなか落ち着くな』
「魔、……カーさんの城で見たことがありますね」
「へー、うちにも和室はないよ」
「虎彦んちは西洋風だよな」
「辰巳んちにもないよね?」
「リビングの一角が畳コーナーなだけだな」
『たたみ……これが……』
『ゆーゆーとぅしみしぇーびれー』
「はーい」
「虎彦、オニナパ語わかってるんじゃないか」
「わからないよ」
「なんでわからないのに会話できるんだ……」
「トラ様は天才ですから」
「もうそれでいい気がしてきた」
『ぐごー』
「桃太郎寝てる」
「出かけるんじゃなかったのかよ」
「まあ畳は気持ちいいしね」
「……床に寝るのですか?」
「もともとはベッドだからな」
「へえー」
「ベッドを床一面に敷いてあるのですか??」
「高級なカーペットみたいなもんだ」
「ああ、なるほど。寝具のように上質なカーペットと言われれば理解できますね。上級貴族でも屋敷の一部にしか敷き詰められませんが」
「すーすー」
「ぐるる」
「あれ? みんな寝てるぞ」
「船旅の疲れが出たんですね」
「俺も、ふぁあ、眠くなってきた」
「おやすみなさいませ」
「エドさんも寝よう……ぐう」
「……タタミって危険な催眠効果とかないですよね?」




