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第七十八話 海を渡る

「カーさんが異世界を検索してる間に次の目的地に行こう」


「カーさんが元気になってよかったです」


「最初から元気だったけど?」


「気を使わせないようにおちゃらけてるけどいつも寂しそうだったんですよ」


「魔王がまさかあんなんとはな」


「エドさんの天敵だよね」


「さあ、次はどこでしょう!」


「全力でごまかそうとしている」


「この先の海を越えたら島があるらしいよ」


「どうやって渡るんだ?」


「一応船が出てるみたい」


「海は危険ではないのでしょうか?」


「海の魔物はおいしいらしいよ」


「よっしゃ、狩りだ!」


「これで大丈夫」


「トラ様、たくましくおなりで」


『あんたらも船に乗るんか? その馬車は載せられんぞ』


「馬車は袋にしまうよ」


『袋? ひやあ! すんげえな』


「この船はどこまで行くの?」


『これはオニナパ行きだな』


「どれくらいかかるの?」


『順調なら三日くらいだな。三人かい?』


「ぐるう」


『おわっ! なんだそのおっかねえのは?!』


「チョコちゃんだよ。おりこうだから大丈夫」


『他の客や積み荷にいたずらするんじゃねえぞ』


「がう」


『よし、じゃあ金貨一枚な』


「はい」


『おっと、気楽に出すねえ。船室は二つあるから好きなほうに乗りな』


「はーい」


「よっと」


『うわっと! いきなり宙に浮くんじゃねえ! びっくりするじゃねえか! 本当に人間か?』


「なかなか騒がしい人ですね」


「船室ってこの大部屋みたいなのか」


「二部屋ある。三日間ここで過ごすのは結構きついね」


「左の部屋はおっさんどもが酒盛りしてて臭いしうるさいし、右の部屋は見た目殺人鬼みたいな人が一人座禅組んでるんだが」


「見た目で殺人鬼は失礼じゃない? こんにちはー!」


『む? 子どもか? あまり騒ぐでないぞ』


「おじさん殺人鬼?」


『んなわけなかろう。なんじゃ怖いのか?』


「怖くないよ。裂きイカ食べる?」


『おお、馳走になろうか』


「一瞬で殺人鬼と仲良くなるスキルすげえな」


「お邪魔いたします。これから三日間よろしくお願いしますね」


『酒盛りさえしなけりゃいい』


「それなら心配いらない」


「おじさんはおになぱ?に行くの?」


『ああ、鬼退治にな』


「……やっぱ殺人鬼?」


『逆じゃ。どうも暴れ回っとるやつがおるらしゅうて討伐に呼ばれたんじゃよ』


「へえ。おっさん冒険者かなにかか?」


『用心棒みたいなもんじゃ。裂きイカの礼にこの船の上ではお前たちを守ってやろう』


「依頼料安すぎない?」


『なにやら懐かしい味がするもんでのう。もう少しないかの?』


「たこやきならあるよ」


『たこ……やき? なんじゃこれは……うまい……うぅ……』


「泣き出したぞ」


「そんなにうまい? 全部食べていいよ」


『かたじけない……』


「そんなに味わって食べる人初めて見た」


「普段なに食べてるんだ?」


「あんまり餌付けするとウシ先生みたいについて来ちゃいますよ」


「ワイバーン串か」


「たこやきに夢中で見向きもしない」


「たこやきに負けるのは納得いかないな」


「急に料理人魂燃やすのやめて」


『ああ……』


「最後の一個に葛藤してる」


「それ食べたら豚まんやるぞ」


『なぬ?!』


「食べた」


『うわあ……もちもちやあ』


「泣きながら食べてる」


「うまかろう、うまかろう」


「どういう目線?」


「ワイバーン串カツもあるぞ」


「なにそれ初じゃない?」


『串カツ……ソースは?』


「ほれ」


『もぐもぐ……うまっ』


「最初の印象は殺人鬼だったけどいまは泣いた赤鬼だし、中身は武士っぽい」


『一生お守りいたしますぞ!』


「いやいらないけど……」


「絶望の目で見てるぞ」


「だから餌付けしちゃダメって言ったじゃないですか」


『ん、取り乱してすまない。名乗りもせず無礼であったの。わしはあちこちで用心棒の真似事をしながら暮らしておるちんけな無頼者じゃが、受けた恩を返さぬわけにはいかん。迷惑かもしれぬがしばし同行してもよいかの?』


「まだ名乗ってないけど」


『そうじゃな。わしはここしばらく桃太郎侍と名乗っておる。サツマでは一応それで名が通っておる。もとの名は忘れてしまったのでな』


「桃太郎がたこやきもらって家来になるんじゃ話が違う」


「んーやっぱりそうか?」


『おお? 桃太郎の話がわかるのか?』


「きび団子で餌付けした動物を使役して鬼退治する怪異だろ?」


『わしの知ってる話とちょっと違う……』


「ケムニン団子ならあるよ」


『む? 知らない味だが悪くないな』


「はいお茶」


「虎彦、怒涛の餌付けをするのはやめなさい」


「さっきまで自分もやってたくせに」


「どうなっても知りませんよ」


『ところでおぬしらはなにしにオニナパへ行くんじゃ?』


「なんとなく?」


「ただの旅行だな」


『ほう、長らくそんな人間は見たことないな』


「おいしいものを食べてきれいな景色を見て変な人に出会う、そんな旅だよ」


「変な人……」


『目的もなく旅行なんぞしている時点で大概おぬしらのほうがよほど「変な人」じゃろうて』


「いまのところそんな感じじゃなかったけどな」


「旅行しているという事実よりももっと別のところに違和感があるからでしょうね」


「え?」


「え?」


『出航だ! 揺れるから頭ぶつけんじゃねえぞ!』


『おお、ようやくか』


「しゅっぱーつ!」


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