第六十九話 勇者チームと偽勇者
「いやあ、助かりました」
「修復は応急処置なので、あとで城から派遣される技師に見てもらうように」
「掃除は終わったよ」
「勇者様って家事もできるんですね」
「お昼ごはんできたわよ!」
「お、お姫様の手料理をいただけるなんて幸せです」
「全部スーパーのお惣菜よ」
「すうぱあ?」
「ヒュー! ジュリたん! こっち見て!」
「ふらふら~ダンス~」
「あああ、やっぱりカオスだよ、勇者チームぅ……」
「ウシくん、手が空いてるなら皿洗いでもしたまえ」
「はいぃ!」
*****
「なんとかマイナスの印象をリセットできたようだな」
「いいことをしたあとは気持ちがいいわね!」
「いいこと~?」
「ピルスピア村のトグルァさんのお母さんに手紙、ビンザォさんはカムリ村で採れたトゥスカグルヴィの実をお取り寄せ……」
「勇者はクエスト管理大変そうですね」
「うん、楽しいよ!」
「そうですか……」
「先生はなんでそんなに疲れてるのかしら?」
「ふらふら~?」
「なんか微妙に言葉が通じないストレスが」
「そういえば虎彦たちが翻訳魔道具を手に入れたって連絡が来てたな」
「手配しようか?」
「いやあ、たぶんそれではよくならない気がするんですよね」
「うわああああ助けて~~!!」
「なんだ?」
「あそこよ!」
「あれ? あいつは」
「とりあえず踊っとく~?」
「踊りより雷では?」
「ずば~ん~」
ズバババーン!
「ひいっ?!」
「怪我はないかね?」
「うえ? はい……」
「なんで野ネズミと遊んでたんだい?」
「いや、野ネズミではないだろ」
「あら、このネズミ、料理長によく似てるわね」
「おいし~そう~?」
「俺は煮込みが好きだな」
「それで君はこんなところでなにをしてるんだね?」
「え? ぼくは魔物討伐をしに」
「できた~?」
「で、魔物はどこにいるのかしら?」
「魔物討伐に来たのにどうしてネズミと遊んでたんだろう?」
「どう見ても遊んではいなかっただろ」
「ああ、そうさ、ちょっと遊んでただけさ!」
「開き直った?!」
「この先に強敵ビッグボアがいるんだ。君たちも手伝ってくれたまえ」
「そのビッグボアってのは見つかったのか?」
「この辺のどこかにいるはずだ」
「まあどうせ進む道はいっしょだからね。ついて来てもいいよ」
「それではぼく、勇者ブジャマについて来たまえ!」
「ておくれ~?」
「そうねえ」
*****
「それで一日歩いた感じこの辺には魔物なんていなそうだけど?」
「勇者基準の魔物と違うのでは?」
「でも今日の獲物はネズミやウサギばかりよね」
「これがウサギ、だと?」
「らん、らんらららんらんらん♪」
「ふむ、今日の稼ぎはこんなもんか」
「そのびっぐぼあっていうのはどんな魔物なの?」
「ビッグボアというくらいだからイノシシなんだろう?」
「そうなのか?」
「イノシシってあのブタみたいなやつかしら?」
「牙もあるかもしれん」
「ああ、そうだ。巨大な牙があって毛むくじゃらで十フィートくらいあるらしい」
「じゃあ合ってるわね」
「一週間くらい探してるんだが見つからないんだ」
「どこにいるんだろうね?」
「イノシシなら森のなかとかか?」
「だからあそこにいるわよ。あのブタみたいなやつでしょ?」
「え?! あわわわわ」
「ほんとだ~」
「でっか。めちゃくちゃ興奮してるけど……」
「なんだ野ブタじゃん」
「これはいい獲物だ。やれ」
「らじゃ~」
ズバババーン!
「おいしそう~」
「いい匂いがするわ」
「おなかすいたね」
「ウェルダン!」
「かちかち~?」
「そうだ。ぼくたち勇者パーティーの勝利だよ」
「おまえはなにもしてないだろ」
「これはとてもレアな魔物だぞ。ぼくがこんなに探しても見つからなかったんだからな」
「なま焼け~?」
「いやただの野ブタ」
「これでやっと討伐報告ができる!」
「ふむ。それはいいが、偽勇者くん」
「偽勇者じゃない!」
「君は転生者だね?」
「「「「えええええ~~~~~?!」」」」




