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第六十八話 勇者チーム3

「あああったあった、この石橋が最北端だよ」


「やっとか。長かったな」


「大きな川ねえ~」


「この川が国境になってるのよ。ほら、あそこに砦があって警備兵がいるわ」


「なんかもめてるみたいだけど」


「国境警備兵に絡むなんて命知らずだな」


「だから知らないと言っているでしょう!」


「この辺りで見かけたという話を聞いたのだ。隠し立てするとどうなるかわかるな」


「わかりませんよ! しつこいな!」


「あのう、いいかしら?」


「ちょっと待ってください。いま取り込みぇえええ! お姫様?!」


「なにかもめてるようですけど、力になりましょうか?」


「うわわわわわわ」


「警備兵がなさけない。しゃっきりせんか!」


「はいいいいい!」


「お茶いる~?」


「あ、ありがとうございます?」


「なんなんだ君たちは。急に割り込んできて」


「まったく命知らずだな」


「ん? なんかこの人どっかで見たことあるような」


「あら、あのときの。偽勇者ですわ、勇者様」


「あ、あああ! ああ、いたなあ、そんなの」


「ぼくは偽勇者じゃない! なのにこんな辺境に送られて」


「まだ反省してない、というかもう(なお)らない感じかしら?」


「病気じゃないぞ!」


「姫さまに対する無礼は許さんぞ」


「なんだよ! おまえらだれだよ! さっきから!」


「ちょっと! この国のお姫様と勇者様を知らないどころか絡むなんてどうかしてますよ!」


「踊っちゃおうかな~」


「それで落ち着いたなら事の経緯を聞きたいんだが」


「は、はい! そこの無頼漢が突然現れてびっぐぼあとかいう魔物を見なかったかと聞かれたんですが、なんのことかわからず、いつまでもしつこく付きまとわれて困っていました!」


「君はこの国の警備兵だろう。どんな馬鹿者が現れて騒いでも、無頼漢だのしつこいだのと言ってはいけないよ」


「は、はい! 申し訳ございません!」


「上司か」


「スタァップ! いい加減にしろよ! ぼくは魔物の討伐に来たんだ。こんなところで遊んでる場合じゃないんだよ」


「君、この仕事中の警備兵にたずねてすでに『知らない』と答えてもらったんだろう? 『知ってる?』『知らない』『あっそう』で終わりの話だ。なのになぜいつまでも無意味に絡むんだ。遊んでいるのは君のほうじゃないのかね?」


「この辺りを警備していて魔物が出たら知らないはずがないだろう! こいつはぼくのことをバカにしてるんだ!」


「君が馬鹿なのは事実だからしょうがないがね。逆にこの辺りを警備している警備兵が『知らない』と答えたのならこの辺にその魔物はいないということではないかね? もしその魔物が本当に実在するなら君がここで時間を浪費している間にほかの場所で被害が出ているかもしれないぞ」


「ぐぅ」


「ぐうの音が出たわね」


「ケンさんに詰められたらだれだってそうなるよ」


「ぐ~ぐ~ぐっぐぐぅ~♪」


「え~っと、それでお姫様がたはどうしてこのような辺境へ?」


「ただなんとなく全国を回っているだけよ」


「ええぇ」


「この辺りではイタズラしなかったのか?」


「んー、たぶん。特になにも」


「たしか国境の砦でパーティーを開いた気がするけど」


「それは……」


「でも警備兵は数年で入れ替わるからもうだれも知らないと思うわ」


「あのう、もしかしてそれって十八年まえの砦の備蓄食糧すっからかん事件のことですか?」


「なにか伝わっているのか?」


「先輩から何度も『あのときは本当にひどかった』って愚痴を聞かされましたし、砦の引継ぎ事項として『勇者が来たらまず食糧庫に鍵をかけろ』がありますよ」


「なにをしたんだ……」


「国境なので戦争になる可能性もありますし、辺境なので魔物が発生する可能性もあります。川が氾濫して近隣の村落に被害が出るかもしれません。そういう非常事態のために、この砦には三年分の備蓄食糧やさまざまな物資が計画的に集められて管理されているんです」


「なるほど。避難所や防災センターのような役割も兼ねているのだな」


「備蓄食糧がいたまないように古いものを消費するのも砦に駐留する警備兵の役割のひとつなので、それはつまりわれわれの普段の食糧でもあります」


「ふむ、そうなるだろうな」


「それを一晩ですべて食い切って空にした事件です」


「それは……伝説になっててもおかしくないな」


「だってみんな『勇者様とお姫様が来てくださった』って喜んでパーティーをしてくれたのよ?」


「周辺村落の数千人を巻き込んで大宴会をやったそうですが」


「あのときはみんなおなかをすかせてたのよ」


「その後数か月砦の兵士たちは味付けのない魔物肉のみで生き延びることになったそうです。それに翌年は飢饉で食糧が足りなくなったのですが、備蓄がなかったため援助できず、周辺村落では結局借金をしたり身を売ったりもしたそうですよ。餓死者までは出なかったようですがかなり悲惨な状況だったそうです」


「そんな……」


「その場かぎりでいいように見えてもあとさきを考えないとこうなるからな」


「ごめんなさい」


「城からの援助もあって最悪は免れたようなのでこれは愚痴に収まってるんですよ。もし餓死者や自殺者が出てたらそんなことは言ってられませんからね」


「わたくしも過ちを認めますわ」


「あ、そんなお姫様、わたしは先輩から聞いた話をしただけで」


「それでいま食糧庫にはなにが入っているんだ?」


「あ、ダメですよ。もう鍵はかけましたからね」


「……そうではない。足りない物資があるなら供給するし、いらないものがあるなら引き取ろう。わたしは旅の商人なのでね」


「予算は決まってますし、契約先から計画的に供給されていますから」


「それでも足りない分があるものだろう。見たところ砦もあちこち傷んでいるようだし。これは過去の清算だ。今回金はとらんぞ」


「……砦の保守費用はギリギリでちょっと足りてないんですよね」


「あら、それならお兄さまに言っておくわ」


「王様に?!」


「ふむ。ではわたしが査定して見積を出そう」


「なにこの人たちぐいぐい来る……」


「うふふ~いっぱい踊ったわ~」


「全然来ない人もいる……先輩、助けて~」


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