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第六十二話 薬師の交流

「そういえばひごっどんの薬草あずかってたんだった」


『あらいいケモネゥミね。これを採りに行ってたの?』


『もうそろそろ切れるころだろう?』


「団子にかけるのに必要だもんね」


『団子??』


「この団子にかけるとおいしいよ」


『グルジャヴァティェサプルシェントのお団子かしら? これにケモネゥミをかけるの? なんで?』


「おいしいから」


『わたしの命を救った貴重な薬草をおいしいからというだけで団子にかけると?!』


「はい食べて」


『もぐもぐ。ただの苦い粉だと思っていたが、こうするといい風味がするねえ』


『フィグォルド様?! それ、食べても大丈夫なんですか?』


『あら、渋い味ねえ。グルジャヴァティェサプルシェントは甘すぎてあまり好まなかったけどこれなら好きだわ』


『マネタ様まで?!』


『わたしはお団子だけのほうが好き。それよりこれいろんな色が着いてるの、なんで?』


「色着けたんだよ」


『だからなんでよ』


「お魚だよ」


『お魚? ダメ、全然言ってることわかんない』


「この魚から色の成分だけを抽出してその団子に混ぜたんだ」


『なんでそんなことするの?』


「きれいだから」


『きれいだから魚の色を着ける。おいしいから貴重な薬草をかける。変わってるのね』


「変わってるの?」


『あら、わたしはいいと思うわ。薬師としてはケモネゥミは病気の人を優先してほしいけど、お魚からとった色を着けるのは楽しいわね。……薬にも色を着けられるのかしら』


「成分によるかもしれないけど、ほとんど影響ないはずだ」


『区別がつきづらい薬があるのよ。色を変えたら間違わずに済むわ』


「あ、そうだ。薬や材料の保管に困ってたりしない? 冷たくする魔道具があるよ」


「なんで急にセールス始めたんだ」


『いまは地下室に置いたりしてるけど、この辺は暖かいからすぐ傷んじゃうのよね』


「それなら地下室全体を冷やすタイプと箱型のタイプがあるよ」


『詳しく聞きましょうか』


「俺も薬師だからな。情報交換しようぜ」


『さすがは賢者様ね』


「ふふふ」


『うふふふふ』


「なんか急に悪代官と越後屋の雰囲気になった。オレじゃ成敗できない」


『さ、さすがにわたしにもマネタ様は捕らえられないぞ』


『それよりほかにもお菓子があるの?』


「クッキー、ケーキ、チョコレートとか」


『なにこれ! すごいきれい!』


「うちの王太子が作ったからね」


『げほっ! ……なんで王太子がお菓子作るのよ』


「お菓子職人だから?」


『変な国ねえ』


『おお、これはすばらしいですな。目の高いかたがたに大流行しそうな』


「んー、これ以上作らせると王太子が過労死しちゃうからなあ」


『なんで王太子に作らせるのよ!』


「お菓子職人だから?」


『変な国……』


「こっちの飾りのないほうならたくさん作れるよ」


『仕入れにはあの谷を渡らねばならないのですよね?』


「転移魔法なら」


「ちょーっと待て! 虎彦、なにいきなり国交ルート開こうとしてるんだ?」


「この件は国王陛下に連絡をとりますのでもう少々お待ちください」


『え? 王様に連絡とれちゃう人なの?!』


『賢者様に勇者様の息子のお供だもんねえ』


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