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第五十四話 山道

「次はもっと遠くに行こう」


「アース山も結構遠かったぞ」


「ではこの国の境界を見に行きましょうか」


「なにそれ国境? なにがあるの?」


「東はアース山を越えることになるから事実上あれが国境みたいなもんだろ? 西は海だし」


「西の海を渡ったところには魔王がいましたが、いまは王国の一部になってますね」


「北はボーのいる村と森だよね。あの先はなにがあるんだろう?」


「たしか大きな橋があるとか聞いた気がする」


「むかしの魔法使いが作ったという石の橋ですね。その辺はもう別の国ですよ」


「そんなに広くないんだな」


「じゃあどこに行くの?」


「南の国境です。王都からずっと南に行くとだれも渡ることのできない死の渓谷があって、そこが国境になっています」


「死」


「危険じゃないのか?」


「渓谷に入れば確実に死ぬでしょうが、近づくだけなら特に危険はありません。一部観光地みたいな感じになっているくらいですし」


「冒険だね」


「まあいいけど。どれくらいかかるんだ?」


「王都からなら馬車でおおよそ八日くらいでしょうか」


「ここからでもあまり変わらないだろうな」


「途中の村に寄りながら十日くらいかけてゆっくり行きましょう」


「勇者チームはこっちに来てないよな?」


「いまは北の方を回っているようですよ」


「父さんはこっちの方で悪さしてなかったの?」


「国中まんべんなく歩き回ってましたよ。魔王が待ちくたびれてたくらいです」


「待ってたの?」


「んんっ、聞かなかったことにしてください」


「なにかヤバいことに触れた気がする」


「南に行くには海沿いと山越えの道がありますけど、どっちにしましょうか?」


「おいしいのは?」


「トラ様はお魚が好きですから海沿いのほうがおいしいと思いますよ」


「じゃあそっちで」


「ごまかしたな」



*****



「かなり来たけどまだか?」


「この馬と馬車は優れていますから順調ですよ。予定通りあと二日で到着すると思います」


「さすがにちょっと飽きてきたね」


「ぐるう」


「ではこの辺りの温泉に」


「いや、この辺全部温泉じゃん」


「ではここから山道に入りましょう。少し気分が変わるかもしれません」


「がう」


「そうだね」


「この辺の森の危険度は?」


「さほど変わりませんよ。死の渓谷のなかだけが異常なので」


「じゃあどこかに止めて狩りに」


「タツ様は転移魔法が使えるのでいつでもこの馬車に戻ってこられますよ」


「そうか……じゃあ馬車は進んでもらって俺は」


「がるる」


「チョコも行くか?」


「ぐる」


「馬車は次の夜営場所に移動しておきますね」


「オレは夜営の準備する」


「トラ様は夜営がお好きですね」


「また変な冒険者の人いるかな」


「変な……」



*****



「だれもいなかったね」


「山のなかだしな」


「辰巳とチョコちゃんの獲ってきた鳥の料理はおいしかったけど、三人と一頭の食事はちょっと寂しいよね」


「海沿いの道もだれもいなかったけど、不思議と寂しくはなかったよな」


「森のなかのほうがにぎやかなはずのに寂しいのってなんでだろうね」


「にぎやか?」


「いろんな声が聞こえるでしょ」


「それは虎彦だけだな」


「え? 聞こえてないの?」


「虫の声と風の音くらいは聞こえてるけど」


「行くな……とか、来るな……とかは?」


「完全にホラーじゃん」


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