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第四十話 魔物学者

明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!

「転移魔法陣のこと忘れてたね。一瞬だった」


「風呂と同じくらいの魔力で済むなら楽だな」


「……簡易風呂にそんな魔力使う人はいませんけどね」


「ぐるぐるぅ」


「あ、チョコちゃん! どっか行っちゃった」


「料理長のとこだろ。いつの間にか餌付けされてた」


「オレも料理長のごはんつまみ食いに行こうかな」


「トラ様にはご紹介したい者がおりますので、もう少しこちらに残ってください」


「ナイス」


「じゃあなにか軽食お願い」


「かしこまりました」


「一瞬で転移してきたわけだけど、魔物学者の人ってもう手配できてるのか?」


「走ってくると思います」


「走って?」



バタン!



「珍しい魔物がいるって? どこだ?」


「落ち着いてください。王族のまえですよ」


「は? なんだエドゥオンか。魔物はどこだ?」


「まずはご紹介させていただきます」


「早くしろよ」


「こちらはネクォンダリィ・ピゥンコンタ、高ランクの冒険者で、魔物学者でもあります」


「ネコ、だりい……ネコさんだね」


「ピンコン……もしかしてトリさんの関係者か?」


「ええ、近衛騎士団長の弟ですね」


「ん? 兄貴のこと知ってんのか?」


「こちらはトラ様、ヒゥミェリアン様と勇者様のご子息様であらせられます。そしてこちらはタツ様、トラ様のお友達でトリュベィラ殿をはじめ王宮内のお歴々に実力を認められた優秀な冒険者です」


「兄貴の弟子か。そりゃすげえな」


「あのね、ヒトモドキのことについて知りたいんだけど」


「ヒトモドキはなあれは町からちょっと離れた街道沿いによく出現して人を驚かせるんだが別に危害はなくて驚いた人が勝手に怪我したりすることはあるけどよく聞くと向こうからなにかされたという話は聞かない無害な魔物で遠くから見ると人間のような形と動きをするんだが近くで見ると明らかに人間ではなくて巧妙に人間をだまそうとかは全然できてないザンネンなやつで切ると丈夫で柔らかい皮を残して消える謎の生き物で」


「はいそこまで」


「なんだよ。もっとしゃべらせろよ」


「ヒトモドキの研究したくないですか?」


「は? したい」


「ここに生きたヒトモドキがいます」


「なんで王城内にそんなもの連れ込んだんだよ見せろ」


「いじめないでね」


「会話と観察だけ許可します」


「会話? ヒトモドキと? なに言ってんだ?」


「おいで」


「ん? なんだそれ? それはヒトモドキじゃないだろ?」


「俺たちみたいな形になれるか?」


「お、がんばってる」


「え? ヘッタクソだけどヒトモドキなのか?」


「しょーんってなっちゃったじゃん」


「口の利きかたに気を付けてくださいね」


「いや、ヒトモドキにわかるわけないだろ」


「わかるんだよ」


「魔物や動物も人の会話の内容が理解できるようなんですよ」


「ペッペの話ってまだ冒険者組合で宣伝してないのかな? ハゲのおっさんに言ったのに」


「ん? ペッペは友達ってやつか?」


「なんだ聞いてるんじゃん」


「ペッペは会話ができますからね」


「なに言ってるんだ?」


「実際体験するまえは百パー同じ気持ちだったけど、そうなんだよ」


「そうなんですよ」


「とりあえずヒトモドキと会話してみれば納得するだろ」


「ヒトちゃん草食べる? にょーんってなった。はい」


「ヒトモドキって草食べるのか?」


「ヒトモドキ全体なのかこの個体の好みかはわからないけどこの草が好きみたいだな。ほかのものは食べない」


「なんと。俺はなにも知らなかった。魔物のことについてなにも知らなかった。なんてこった」


「なんかすっごい落ち込んでる」


「それでさ、俺たちはこいつがミルヘドリンやスラヘドリンの仲間なんじゃないかって考えてるんだけど、魔物オタクの考えはどうよ」


「ミルフェドゥリィムとスラフェドゥリィムのことです」


「魔物オタク? まあ、そうだな、さっきの見た目は似てたな」


「なんかほかの魔物と明確に区別する方法はないのか?」


「魔物の鑑別は角や牙や毛を調べることが多いんだがフェドゥリィム属は見た目や性質が似ている以外の共通点がなくて鑑別方法が確立していないんだフェドゥリィム属の特徴は体内に獲物を取り込んで麻痺毒で自由を奪ってゆっくり消化することでそのとき獲物には幻覚が見えるらしいけど詳細はわかっていないな環境の色に同化して潜んでいるので気づいたときには手遅れのことが多い」


「つまりわからないってことね」


「俺はなにも知らない……」


「聞けばいいじゃん」


「は?」


「ヒトちゃんってスラヘドリンとかドロヘドリンの仲間?」


「ぷるぷるしてるな」


「んー、ほかのヘドリンを知らないのかな? 酪農の村に行ってミルヘドリンに会わせてみようか」


「確かに人間の勝手につけた名前だけ聞いても見たことがなけりゃわからないよな」


「それ、本当に会話がわかっているのか?」


「たぶん、わかってると思う、よ?」


「自信なさげだな」


「ヒトちゃんは人間と仲良くしたいの?」


「お、うにょーーんってなったな」


「仲良くしたかったのですね」


「その伸びるのが返事なのか?」


「はいならにょーんってなって、いいえならぺたーってなるように教えたからね」


「なるほど……俺はなにも知らないのに魔物学者とか言って恥ずかしい……」


「落ち込み激しいな」


「騎士団長のおっさん呼ぼうか?」


「やめて差し上げろ」


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