第三十九話 ヒトモドキ
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「おいしかったねー」
「スラ自体はほとんど水のようなものらしいからヘルシーだよな」
「おみやげに干しスラ芋もらったし、これで帰り道も楽しい」
「勇者もいろいろやってるんだな」
「今代の勇者様は魔王を倒してくださいましたが、あまりそういう方面では活動していませんね」
「あー、興味なさそうだもんな」
「むかし晩ごはんに公園のハト捕まえてきたから逃がしてあげたことあるよ」
「勇者ならもうちょっといいもの捕まえられるだろ……」
「あれ? なんだあれ?」
「トラ様、タツ様、お下がりください。あれがヒトモドキです」
「ヒトモドキ? ああ、あの皮をとるやつか」
「一応見かけたら駆除対象ですので片づけてきます。このまま馬車のなかでお待ちください」
「そんなに危険がないなら近くで見てもいい?」
「俺も生きてるのを観察したいな。ちゃんと護衛するからいいだろ?」
「そうですね……わかりました。あまり近づきすぎないでくださいね」
「全然人間っぽくないね」
「もっと人間よりなのかと思ってたな」
「個体によってはもっとうまいのもいますよ。遠目で見ると本当に人間に見えるようなのもいるんです。油断して近づくとヒトモドキなのでびっくりするんですよ」
「そっか。ヒトモドキになりたてなのかな?」
「ん? なりたて? 最初からこういうものじゃないのか?」
「え、だってうまいヘタがあるならもとは全然違うんじゃないの?」
「そんなこと考えたことありませんでしたね。あまり近くで時間をかけて観察するようなヒマもないですし」
「なんか俺たちの真似してないか?」
「首傾げてる」
「もしかして人間の練習してるのか?」
「びっくりさせたいのかな?」
「ぐる?」
「伸びてる」
「縮んで丸まった……。ん? なんかこれ、見たことあるな」
「ミルヘドリンが乳吐き終わったときみたい」
「それだ! こいつなんとかヘドリンの仲間なんじゃないか?」
「なんで人間の真似してるんだろう」
「ぐるぅ?」
「なにも言わないからわからないねえ」
「ん? 今度はチョコの真似しようとしてるのか?」
「がう」
「ヘタクソだねえ」
「なにをしようとしてるのかはわからないけど、特に脅威には感じないんだよな」
「遊んでほしいのかな? ペッペみたいに」
「いままではみんな気味悪がって見つけたらすぐに駆除していたんですが……。ペッペやチョコさんのことを知ってから見るとちょっと違って見えますね」
「もうちょっとよく観察してみたいな」
「オレたちについて来る?」
「ぐる」
「お? ぷるぷるしてるな」
「ついて来るならにょーんってなって、ついて来ないならぺたーってなってみて」
「にょーんってなりましたね」
「こいつもちゃんと言葉がわかってるんだな」
「ついて来るのはいいですが、もしトラ様たちに危険が及ぶようでしたら切り捨てますよ。よろしいですね?」
「にょーんってなった」
「なに食べるんだろう?」
「飼育条件が全然わからないぞ」
「普段はなに食べてるの?」
「ん? なんかトゲトゲになったな」
「草かな?」
「にょーんってなりましたね」
「好きな草とかある?」
「これか? こっちのは? ぺたーってなったな」
「この草ならいくらでも生えてますけど、王都周辺には少ないでしょうから少し採っていきましょうか」
「にょんにょんしてる」
「それにしてもどうやって観察しようかな。魔物の基本知識が少なすぎる」
「それなら魔物に詳しい者を手配しましょう。……ちょっと人格に問題ありますが大丈夫だと思います」
「人格に問題?」
「普段は普通の人なんですけど、まあ会えばわかります。特に悪い人ではないですのでご安心ください」
「チョコちゃん草刈りしよう」
「がる」
「にょんにょんしてるな」
今年最後の更新となりました。読んでくださってありがとうございます。
みなさまお体に気を付けてどうぞよいお年を。




