第三十八話 揚げスラ
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果樹園から王都に戻るまえに果樹園のふもとの町に寄ることにした。
「トラ様、この町にはちょっとした名物料理がありまして」
「よし食べよう!」
「虎彦、話を最後まで聞け」
「いいんですよ、さあ行きましょう」
「おう!」
「二人ともすごいニコニコしてる」
「あちらの店でご用意してあります」
「いろいろ隠さなくなってきたな」
「こんにちはー」
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
「なんか高級そう?」
「高級というわけではありませんが有名な老舗なので庶民にはちょっとだけ敷居が高いですね」
「うそをつくな。絶対庶民が入らない店だろ」
「おかげさまで王族や貴族のかたにもご利用いただいております」
「トラ様、今日はこの辺りでしか獲れない、というか作れない料理ですよ」
「ごまかしかたヘタか」
「へえ、楽しみ」
「気にしないのかよ」
「こちらで少々お待ちください」
「おしぼりとお茶をどうぞ」
「おお、こっちに来てから初めてのサービスな気がする」
「やはり老舗の高級料理店は違いますね」
「高級って言った!」
「このお茶おいしいね」
「気にしないのかよ」
「前菜をお持ちしました」
「なにこれ?」
「青白いきれいな皿に載った半透明のなにこれ……イカ刺しみたいだけどぷるぷるしてるな」
「スラ刺しという料理です。こちらのタレでお召し上がりくださいませ」
「うす青緑のタレ……全然なにものかわからないけど」
「んまっ辰巳これおいしいよ」
「躊躇ないな。あ、味はさっぱりさわやかな香りとほんのり酸味があってちょっとしょっぱい……全然わからないけどうまいな。本体は少し歯ごたえのあるところてん……いや柔らかいこんにゃく?」
「透明のやつ自体には味ないね」
「んー、ほんの少しなにか香りづけされてるのかな?」
「よくぞお気づきでございますね。素のままでも癖はないのですが食べやすくなるようわずかに香草で香りをよくしてございます」
「さすがはタツ様」
「へえ辰巳すごいね」
「う、やめろ、このくらいでキラキラした目を向けるな」
「お待たせいたしました。主菜をお持ちしました」
「おおいい匂いがする」
「こちら大変お熱くなっておりますので気をつけてお召し上がりください。味が付いておりますのでそのままでどうぞ」
「見た目はアレに見えるんだけど」
「食べてみよう」
「あ、完全に春巻きだ」
「そとはパリパリなかは熱々トロトロで具材がシャキシャキでうまい」
「トラ様たちには見慣れた料理でしたか。期待させてしまってすいません」
「ぐるぐる」
「チョコちゃんも気に入ったんだね。あ、似てはいるけど、なんとなく違うものな気もするんだよね」
「どういう料理なんだ?」
「こちらはスラフェドゥリィムを揚げたものでございます」
「スラヘドリン? ドロヘドリンとかの仲間?」
「さようでございます。フェドゥリィム属の仲間ですが、生まれたばかりで毒物に汚染されていなければ麻痺毒がなく無色透明で、味も澄んだ水のように爽やかなのが特徴でございます」
「もしかしてさっきの透明のやつも?」
「特別に澄んだスラフェドゥリィムに香草を与えて香りを付けたものでございます」
「香草を与えて? 生きているうちに食べさせるのか?」
「そのとおりでございます。こちらの料理も澄んだスラフェドゥリィムにスープと具材を与えて三時間ほど置いてほどよく具材が消化されたところをこの形に切り分けて揚げるのでございます」
「え? 切ってそのまま揚げるの?」
「揚げるとそと側がパリパリの皮になってなかがトロトロになってウマーになるのでございます」
「エドさん、オレたちの知ってる料理とはまったく違うよ」
「そうでしたか。楽しんでいただけたようで安心しました」
「これはなんていう料理なんだ?」
「この辺りでは揚げスラと呼んでおります」
「絶対勇者だ」
「そのとおりでございます。何世代かまえの勇者様が揚げスラを開発してくださったと伝わっております」
「やっぱり」
「ほかの料理もスラ推しなんだね」
「なんでもこの地域の水が特別スラフェドゥリィムの飼育に適しているそうで、非常に高品質の澄んだおいしいスラフェドゥリィムが作れるのでございます」
「へえ、水でそんなに変わるのか」
「あ、辰巳が研究したくなってる」




