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第三十六話 食材の研究

「まずは天然の着色料を精製しよう」


「おーぱちぱちぱち」


「赤魚は味は淡泊だけどすり身だとお菓子なんかに使うにはさすがにちょっと風味が独特なんだよな」


「団子に混ぜたのはかまぼことかはんぺんみたいだったけど」


「クッキーが失敗したさつま揚げみたいになっただろ」


「あれはそういう食べ物だと思えば食べられるけど」


「許容範囲が広すぎて参考にならない」


「でどうするの?」


「困ったときの錬金術だ」


「一般のご家庭でできないやつ」


「うまくいったら製法登録して量産してもらうから」


「錬金術師の人たちが工場のラインで働かされる感じ」


「ではさっそく、赤魚をさばいて身だけにします」


「皮と骨と内臓はどうするの?」


「皮も色は出るんだけど、ぬめりと臭みがあるから今回はパス。ほかの部分は肥料にします。そこ入れといて」


「手が赤くなった」


「洗えば大丈夫。水溶性だから」


「次は?」


「すり鉢ですりすりすり身にします」


「すり鉢ないけど」


「そこは魔法でうぃーんってやる」


「うぃーんって音はならないけど」


「魔法は静かでいいよな」


「これはまえも使ったすり身だよね」


「ここに水と少量の酢を入れて加熱しながら混ぜます」


「濁った赤い水みたいのができた」


「これを搾って分離します」


「赤い水と赤いカスができた」


「こっちのカスは肥料にします」


「はい」


「ここまではまえも試したんだけど、まだ魚臭いので錬金術で精製します」


「どうするの?」


「色の成分だけ分離。えい」


「おお? 濃い赤い水?と薄い赤い水ができた」


「たぶんこっちは魚の出汁みたいになってるはず」


「んー。あんまりおいしくない」


「出汁は出汁で研究が必要だな」


「こっちは?」


「一滴とって団子に混ぜてっと」


「おおー。赤い団子だ」


「味見しよう。んむちゃ相変わらず粘りがすごい」


「あ、魚感はなくなったね」


「純粋に色だけ付けられるようになったな。成功」


「ほかの色もやろう」



*****



「よし、魚からは赤、青、黄、青緑、赤紫、オレンジが作れた。海藻からはピンク、薄黄、緑、薄青、青紫。野菜や果実からは赤、黄、緑、青。しかも赤っていってもいろんな色味があるし、水溶性だけじゃなく脂溶性の色素もとれたし」


「混ぜると変な色に変わるのもおもしろいね」


「赤魚の赤と野菜の赤を混ぜたらなぜか黒ができたからな」


「これ使った料理作って。カラフル団子」


「虎彦団子好きすぎだろ」


「ほかの料理が思いつかないだけだよ」


「確かになにに色付けようかな」



*****



「カラフル団子、カラフルクッキー、カラフルキャンディー、カラフルアイスだ」


「これたっくんが作ったの? きれいねえ」


「たっちゃんお料理できたのね~」


「味は全部同じなのかい?」


「今回は着色の試作なんで」


「しかしなんでお菓子ばっかりなんだ?」


「発想が貧困だからだよ」


「虎彦に言われるのは心外だな」


「ぐるう」


「これは美しいですね。最初に食べ物に色を付けると聞いたときには理解ができませんでしたがこれはいろいろと応用が利きそうです」


「やっぱり料理長呼んでこようよ。餅は餅屋って言うし」


「アイスはアイス屋さんよね」


「いやそういうことじゃないんだけど」


「俺はわかるぞ。姫さま」


「勇者様」


「いったいなにをわかり合ってるんだろう?」


「ところでその色はどうやって付けるんだ? 魔法かい?」


「あ、モブいたんだ」


「むしろ最初にわたしがいた部屋に君たちが入って来たんだが……」


「モブちゃん、久しぶりね」


「こないだ会ったばかりですよ、叔母上」


「タツ坊が呼んでるって?」


「あ、ネズミさん、ちょっと意見が聞きたくて」


「料理長、どれ食べる?」


「お、坊主、またつまみ食いか?」


「違うよ。辰巳が開発した色を付けた食べ物の味見してよ」


「食べ物に色を付ける? こりゃなんだ?」


「カラフル団子、カラフルクッキー、カラフルキャンディー、カラフルアイスだよ」


「比較のため味は全部同じにしてある。色だけ変えたんだ」


「ほう。ほかのものにも色が付けられるのか?」


「大体なんにでも付けられるはずだ」


「その、色を付けるのは絵具みたいなものなのかい?」


「あ、モブいたんだ」


「さっきから聞いてるのに」


「これが着色料だよ」


「へー。これを混ぜると色が付くのか」


「絵を描くこともできるのかな?」


「絵を描く? なるほど。できると思うよ」


「たっちゃん~アイシング作ったらどうかしら~」


「アイシング? ってなに?」


「砂糖と卵白があれば作れるわよ~」


「ちょっと待って、これでできる?」


「砂糖は粉にして~あとは混ぜるだけよ~」


「魔法で混ぜるよ。あ、こういうやつか」


「レモンジュースで固さを調整できるわよ~」


「これを分けて色を付けて、と」


「小さい絞り袋に入れて字や絵を描くのよ~」


「そこは魔法で、クッキーに……できた!」


「おおーお店に売ってるお高めのかわいいクッキーじゃん」


「こりゃいいが、うちの料理人に絵心はないぞ」


「わたしにやらせてくれないか」


「モブ?」


「細い棒はないかな?」


「箸ならあるよ」


「ちょっと太いが……なんとかなるか」


「おお、カラフルでポップなかわいいクッキーが量産されていく」


「モブちゃんにこんな才能があったなんて」


「王太子やめてアイシング職人に転職しなよ」


「初めてほめられた……うれしい」


「なんか拗らせそうだな」



後日王太子の手作りクッキーが城下でバカ売れした。


12/24 はクリスマス番外編を投稿しますのでお楽しみに!

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