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第三十一話 お魚の村

「おーい、村が見えたぞー」


「ぐるぅ」


「え、どこ?」


「あれか? 岩と砂浜と船と小屋しかないけど」


「言われないと人が住んでるとは思えないですね」


「この村は周りが岩で囲まれてて陸路じゃとても行き来できないのさ」


「畑とかもないね」


「家畜もいなそうだな」


「海で獲れるもの以外の食糧はこうして運んでやらないとすぐに飢えて死ぬことになるな」


「何人くらい住んでるんだ?」


「ふた家族で十二人だな」


「思ってたよりも多い」


「一生ここに閉じ込められてるのか」


「船で隣の村に行ったりはするさ。婿や嫁に行ったりもらったりもするしな。たまにはこの船に乗せて町に行ったりもするよ。……さあ着いた」


「おう、トト! あれ? 客か?」


「ちょっと見学させてやってくれ。魚獲るのに興味あるってんだ」


「お、魚獲りになるか? うちの村はいいぞ、魚獲るしかないからな! がっはっは」


「おお豪快だ……」


「振り切ってんな」


「魚獲りになるってんじゃねえんだよ。坊主、このオヤジに頼めば見たいもの見せてくれると思うぞ」


「わかった! おじさん! あのね、お魚どうやって獲ってるのか見せてほしいんだけど」


「お、魚獲りになりたいのは坊主か? よーしよし、いまから舟出してやるから乗りな!」


「一時間くらいで出るからな。それまでに戻って来いよ」


「やった! なんのお魚が獲れるの?」


「ぐるぐる」


「ここは赤魚と白魚がたくさん獲れるぞ。ほらあそこの岩から……」


「さっそく盛り上がってるな。さすが虎彦。俺は村の見学でもしようかな」


「それならこの村の荷物下ろして村人に渡すからついて来な。三十分で全部見終わるけどな」


「トラ様は今日も愛らしい」


「はいはい。ついて行かないのか?」


「トラ様は自由にしているときが一番愛らしいので。それに影が付いていますし」


「このなにもない海のどこに影がいるんだ……」


「ふふふ」


「トト、頼んでた野菜はどうだい?」


「ああ、ばあさん。これでどうだ?」


「ああ、いいね。果物もあるのかい? うれしいね」


「ちょうどよく熟してるのがあったからさ」


「あたしゃこれが好物なんだよ。あんたあたしに求愛でもするつもりかい」


「ばか言っちゃいけねえ。俺なんかがばあさんみたいな別嬪に釣り合うわけないだろ?」


「あらほんとだね。死んだじいさんのほうが百倍マシだったわ」


「なに言ってんだ。まだ死んでねえだろ」


「どんな会話なんだこれ。俺には高度すぎる」


「あらあらこんな子どもなんて連れて来たのかい? あと三十年もしたらいい男になるかもね」


「ばあさんに合わせるなら五十年は必要だろ」


「んひひ」


「いつもこの調子なのか?」


「ああ毎日な」


「そりゃ大変だ」


「慣れたよ」


「お魚とれた!」


「ぐるるぉ!」


「坊主がいるとなんだかいっぱい獲れたな!」


「トラ様はお魚にも好かれるのですね」


「そんなわけあるか」


「おう、戻って来たか。坊主、魚獲りはどうだった?」


「おもしろかった! 海でこうぐいっとやってばちゃーってとれるの!」


「なに言ってるのか全然伝わってこない」


「ははは、よかったな坊主!」


「トラ様の可愛さが天元突破してます」


「はいはい」


「辰巳も来ればよかったのに」


「そういえば魚獲るのに釣り竿とか網とか使わないのか?」


「魚獲り魔法だよ。ざばーって」


「なんだそれ……それは見たかったかも」


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