第二十三話 高台の魔道具師
「おじさーん、またねー!」
「ああ、またいつでも来てくれよ」
「ぐるる」
「仲良くなってるな」
「トラ様はむかしからずっとお可愛らしいですから」
「そうやってすぐあまやかす」
「船おもしろかったね!」
「そうか。よかったな」
「タツ様もあまやかしてるじゃないですか」
「俺はいいんだよ」
「ほかになにかおもしろいものないかな?」
「たしかあちらの方に魔道具街があったと思います」
「魔道具? ああ、あの簡易風呂みたいな?」
「そうです。いろんなものがあって眺めるだけでも楽しいと思いますよ」
*****
「うわあ、すごい。変な屋台みたいなのからめっちゃ立派なお店まである」
「屋台で売られているのは庶民むけですね。見習いが作ったような質の悪い商品ですが、安いので人気があります」
「へえ、これはどういう原理なんだ? 俺が習った魔法とも鍛冶とも錬金ともまた違う技術みたいだ」
「王城には魔道具師がいませんからね。この辺りではこの町が一番ですが、世界的には南の魔導都市が有名ですね」
「魔導都市! なんかすごそう!」
「この町や城下町よりも広いところに高い建物がぎっしり建っているそうですよ」
「ふーん」
「あの店入ってみようよ」
「冒険者用魔道具店か」
「へえ、いらっしゃいませ。ご案内いたしましょうか?」
「はい! ツアーお願いします」
「へえ、つあー?と言いますと?」
「あー、全体を見学させてもらえるか?」
「へえ、こちらからどうぞ」
「冒険者はみんなこういう魔道具を持ってるの?」
「ほとんどの冒険者は魔道具を持っていないと思いますよ」
「へえ、少々値が張りますので、魔道具にご興味を持たれた一部の冒険者のかたがお買い求めになりますね」
「高そうだもんね」
「強くて稼げる人向けか」
「へえ、こちらは特殊な効果を持つ武器や防具を展示してあります」
「おおー、かっこいい」
「火や水を出す棒とかか。光る剣ってなんの効果があるんだ?」
「へえ、斬るときに光ってかっこいいという趣味の武器ですね」
「あー、普通の冒険者は買わないよな」
「シャキィンとかシュパッとか音が出るのもあるよ」
「どこの世界にもこういうおもちゃはあるんだな」
「おもちゃにしてはかなりお高いですが」
「肝心の剣としての性能が低いのはちょっとな」
「へえ、そしてこちらはアクセサリーです」
「少し遠くがよく見える魔道具……眼鏡じゃん」
「小さい音がよく聞こえる魔道具……補聴器?集音器?」
「水のなかでおならをしても泡が出ない魔道具……神じゃん」
「いつ使うんだよ」
「へえ、こちらは生活用品を集めてあります。野営のときなどに便利です」
「あ、簡易風呂だ」
「簡易コンロと無限水筒か、持ってるな」
「縮小収納型の天幕と寝袋はより上位のものを使っていますね」
「馬車で使う振動吸収クッションか。あの馬車はまったく揺れないもんな」
「あの馬車自体が魔導具ですからね」
「魔物除け(弱)ってどれくらいの効果?」
「虫や小動物に毛の生えた弱い魔物が若干減る程度ですね。これも馬車や天幕により強い効果が付与されていますので不要です」
「ぐる」
「たいしたことないって」
「なんか俺たちかなり恵まれた装備持ってるな」
「見て、この辺時計っぽいのもあるよ。これはオルゴール?」
「へえ、こちらは有名な一流の職人の手による作品です」
「へえ、その職人はこの町にいるのか?」
「へえ、町から見える高台の上の屋敷にお住まいなので高台の魔道具師と呼ばれているのですよ」
「ざっと見たけどあまりピンと来ないな」
「すでに持ってるものか、向こうでありふれたものだもんね」
「この高台の魔道具師の作品はちょっとほかと違う気がするな」
「王都でも有名ですからね」
「そうなんだ」
「一度会ってみたいな」
「直接訪ねてみましょうか」
「会ってくれるのかな?」
「へえ、それがとても気難しいかたなのでどなたもお目にかかれないみたいなのですよ」
「まあそこはなんとかなります。明日には必ず」
「強行しようとしている……」
「楽しみだね!」
「お、おう」