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第二十二話 港町

「それじゃ、またね」


「お世話になりましたー」


「お元気で!」


「ん」


「がるる」


「それではまいりましょうか」



ペッペたちと散々遊んで帰ってまた宴をやって、翌朝はさっぱりとした別れだ。


馬車を見て若干慄いてたみたいだけど。



「これぞ冒険者!」


「なるほど。虎彦の冒険者のイメージがちょっとわかってきた」


「わかってなかったの?!」


「ぐる」


「チョコちゃんは冒険者の心得があるね」


「なんだそれ?」


「生きて楽しむ!」


「ぐるる」


「楽しいね」


「んーまだわかってないみたいだ」


「辰巳は生チーズを手に入れてどう思った?」


「うれしい。あと楽しみ」


「そんな感じ」


「生チーズは冒険なのか?」


「生チーズを手に入れるために村に来て森でボーとペッペとヒステさんとクさんとチョコちゃんに出会ったんだよ。冒険じゃん」


「まあそうか」


「全部楽しかったでしょ?」


「そうだな。楽しかった」


「じゃあ冒険だ」


「それが冒険なのか」


「そうだよ」


「じゃあまた冒険したいな」


「いましてるじゃん。この道でまただれかに出逢うかもしれないよ」


「そうか。いま冒険中なのか」


「そうだよ。毎日冒険の旅だよ」


「うん。わかってきたぞ」


「でもあまり暴走しないでね」


「う、すまん」


「トラ様、タツ様、このまま進むと港町ですが、次の目的地はそこでよろしいですか?」


「港町。船。外国?」


「魚! 魚獲れるのか?」


「大きな港町ですが外国の船は入っていません。漁港でもないので魚は獲っていないでしょうが、たくさん売っています。近隣の小さな漁村や隣の港から荷を運んでくる商業の町です」


「そっか。でもいろんなとこから人が集まるならにぎやかなとこなんだね」


「魚市場か。漁村にも行ってみたいけど、まずは市場調査だな」


「魚とチーズの料理ってある?」


「あるぞ。魚を手に入れたら作ってやろう」


「よし。やる気出てきた」


「なんのやる気だ?」


「おなか」



*****



「おお、これは」


「城下町とはまた違う活気だな」


「乱暴者もいるかと思いますのでできるだけ固まって行動してくださいね」


「辰巳が魚市場ではぐれそう」


「そ、そんなことない、と思います?」


「なんで自信なさげ?」


「虎彦こそ変な人について行っちゃダメだぞ」


「あちらが魚市場です」


「お。おお。広い」


「人が多いねえ。迷子になりそう」


「エドさんから離れるなよ」


「辰巳はぐれる気まんまんじゃん」


「いや念のためだよ」


「あ、あれなに? トゲトゲで青いの」


「トラフポッドですね。猛毒ですので触れないでください」


「あれは食材として売ってるのか?」


「うまく調理すれば食べられると言われています。よく人が死にますが」


「あーなんかそういうのあるよね」


「城では絶対扱わない食材だから見たことないんだよな」


「毒の勉強してなかったっけ?」


「トラフポッドの毒ってなんだ?」


「フポリンという毒だと聞いたことがあります」


「ああ、フポリンか。全身しびれて呼吸が止まって死ぬやつ」


「怖っ」


「たしか聖魔法と水魔法の複合解毒魔法の上級を一分以内にかければ三割救えるはず」


「ほぼ死ぬで確定じゃん」


「虎彦の謎魔法で三割を十割にできるかもな」


「ほ? それできたらめっちゃすごいね!」


「試さないでくださいね」


「そんなことしないよ」


「そ、そうだよな」


「タツ様、少なくとも解毒魔法なんて使えそうなのはあなただけですから、自ら毒を摂って試そうなんて考えたらダメですよ」


「あ、麻痺したら魔法使えないもんね」


「わ、わかってるよ」


「付けた先生が間違ってましたかね……」



*****



「見て! 船だよ! 大きいねえ」


「おお、そこそこデカいな。中世の帆船くらいはあるな。想像は超えてた」


「あれ乗ってみたいなあ」


「そうだな、貿易船だろ? 商人なら金払えば乗せてくれないかな」


「所有者を探してみましょう。ん」


「あ、いま影に指示したでしょ」


「なんでそこ鋭いんだ。見なかったふりして差し上げろ」


「そっか。気づかれると恥ずかしいんだっけ」


「……いまわたしが恥ずかしくなっています。あ、あちらへ行ってみましょう」


「オーナーさん見つかったみたいだね」


「トラ様、いつの間にお名前をお知りになったのですか?」


「へ? だれの名前?」


「あの船の所有者です。オーン・ナームさんというかたのようです」


「偶然だな。オーナーってのは所有者って意味だ」


「なるほど。とうとう影の報告まで理解されたのかと思いました」


「あ、あの人じゃない? 影が手を振ってる」


「手は振ってないだろ。やめて差し上げろ」


「あのう、わたしの船に乗りたいというのはそちらのみなさんで?」


「はい、見学だけさせてください」


「おじさん、あの船はなにを運んでるの?」


「こら虎彦」


「ははは、よろしいですよ。坊や、あの船は布や家具や雑貨なんかを運んでるんだよ」


「お魚は?」


「大き目の港から港に物を運んでいるのでお魚はあまり運ばないなあ」


「そっかあ」


「お魚はほら、あっちの小さい船が見えるかな? ああいう船で近くの漁村から運ばれてくるよ」


「へえ、お魚獲るとこも見たいねえ」


「ははは、そうか。かわいいなあ」


「絶対小さい子だと思われてるな」


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