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第二十話 晩餐

「すまん、待たせた。いい風呂だった」


「クさんもそろったことだし、食事の用意も整ったところだし、宴だ!」


「虎彦、落ち着け。冒険者の話とか聞きたい年頃なんでよろしくお願いします」


「ああ、そういう年頃ってあるわよね。じゃあとりあえず乾杯しましょ」


「乾杯!」


「ボーの乳だけどな」


「ここのボーの乳は格別だ」


「やっぱ新鮮だからかな? おいしい」


「このスープもおいしいわ! なにこれ、貴族の味?!」


「ルィル、落ち着け」


「貴族じゃないって」


「そうよね。こんなの貴族でも食べてないわよ。……え? まさか」


「はいこれ! この串焼きおいしいよ!」


「なに? ……んまっ! なにこれ? なにこれえ!」


「ルィル、静かに」


「だってこれ! 食べてみて!」


「ん。うまい」


「もっと感動して! 興奮して!」


「感動してる」


「この二人おもしろいね」


「虎彦、とりあえずワイバーン串出して反応みるのはやめろ」


「どんな反応するか楽しみじゃん」


「……いま、ワイバーンって言った? 言わなかった?! どっち?!」


「ワイバーンだよ。おいしいよね」


「ワイバーンって珍しいのか?」


「いえ、さほど。それなりに手には入りますから」


「珍しいかどうかってよりお高いわよね?! 少なくとも串焼きにはしないわよ! 初めて見たわ!」


「確かに。ワイバーンの串焼きはトラ様のご要望でしたので料理長が」


「あー、高級食材を屋台飯ふうにしちゃった感じか」


「おいしければいいんだよ」


「うむ」


「あんたたち! 常識ってものをどこに捨ててきたのよ!」


「ルィル、夜なかに大声を出すのは常識がない」


「!!!!!!」


「ちょっと落ち着いて。お団子どうぞ」


「もぐっ。……グルジャヴァティェサプルシェントのむっ団子かしら? でもなにこの味?」


「ケモネゥミの粉末をまぶしてあります」


「ケモネゥミ?! 小指の爪の先に乗るくらいで銀貨一枚するわよ?! それをまぶした? 富豪なの?!」


「おいしいよね」


「おいしいわ。でもおいしいとかじゃないのよ!」


「おいしければいいじゃん」


「うむ。これはうまい」


「お茶も飲んで」


「これはどんなお茶なのよ? すごいお茶じゃないでしょうね?」


「クリモフの実を炒って煮出したものです」


「雑草じゃない。なんでそんなもの……おいしい」


「おいしければいいんだよ」


「うむ。団子に合うな」


「はあ。わかったわ。別に高価なものを好んで食べてるわけじゃないのね」


「貴族でも富豪でもないからね」


「それであなたたち、なんでこんな村にいるのよ」


「生チーズ買いに来たんだけど、……なんでこんなにいるんだっけ?」


「まあ予定外のことが起きるのも旅の楽しみだよな」


「タツ様が暴走したからですね」


「辰巳が森で暴れるのが好きってわかった」


「すまん……」


「でも今日はボーと仲良くなれたし、ペッペとも友達になれたからいいや」


「そのペッペと友達っていうのがよくわからないのよね」


「明日みんなで行ってみようよ。たぶんまた遊びに来ると思うんだ」


「わたしたちもそんなヒマじゃないわよ。でも森の入り口でしょ? 明日も森の見回りに行くからいっしょに行きましょう」


「これがツンデレ?」


「まあその亜種だな」


「なんの話?」


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