第十八話 夜
夜遅くに村に着いた。
「あんれ、おめだぢこったら遅くまでなにしてたんだ? うぢのボーもいるし、チォグザィナャッなんか連れて来てどうすんだ?」
「トラ様!」
「ごめんなさい。ボーはオレのこと心配して残ってくれたんだ。チョコちゃんはいいこだから大丈夫だよ」
「ぐるうる」
「俺が森の奥まで行っちゃったから遅くなったんだ。申し訳ない」
「この子たちをたまたま見つけたから保護して来たわ。……なによ? なんでみんなそんな目で見るのよ!」
「ルィル、遅い時間だから静かに」
「とりあえずみなさまお疲れでしょうからお風呂に入ってください。その間にお食事をご用意いたします」
「エドさんありがとう」
「お風呂があるの?! わ、わたしも入っていいかしら?」
「トラ様とタツ様のあとでしたら構いません」
「……様? え? もしかしてあなたたち貴族……様かなんか?」
「違うよ?」
「確かに違うな」
「えぇ?」
「まあおめだぢぁちょっとこっち来て茶でも飲んでけ」
「うむ、ありがたい」
「辰巳、いっしょに入ろう」
「トラ様、簡易のものですので少々手狭かと」
「日本の風呂より狭いかなぁ」
「一人で入るの怖いのか?」
「そんなことないぞ。一人で入る」
「タツ様、さすがです」
「初めてのところだから不安なんだな」
「なるほど。一度いっしょにご案内すればよかったですね」
「あまり過保護にするのはよくないぞ」
「それもそうですね。わたしがごいっしょできればよかったのですが」
「いや過保護だろ」
「エドさん、あれどうやって入ればいいの?」
「あれ? 虎彦、どうした?」
「なんか見たことない感じでどうやって入ればいいかわからないんだよ」
「ん? もしかして異世界の風呂ってなにか違うのか?」
「喜んでご案内しますよ! さあ行きましょう!」
「過保護があふれてる」
三人で風呂に来た。
一本の棒が地面に刺さっていて上に魔石が二つはまっている。
「これ、どうすればいいの?」
「うわこれじゃわかんないな」
「この棒の下の魔石に魔力を込めると不可視の壁が生成されます」
「おお! シャワーブースみたいになった」
「上の魔石に魔力を込めるとお湯が出ます。温度や量や出かたは魔力の質でコントロールできます」
「シャワーだ。浴槽には浸かれないのか」
「下の魔石に込める魔力で形は変えられますよ」
「お風呂になった! これオレでもできるかな?」
「どうぞやってみてください。庶民でも使える簡易お風呂なので問題ないはずです」
「どれどれ? まず下の魔石にっと。うわあ、なんだこれこんな感じか」
「トラ様お上手です!」
「いやぐにゃぐにゃだけど」
「お湯はこれ? ちょろちょろしか出ない」
「トラ様とてもお上手です!」
「そんなわけないだろ。過保護だとよくないぞ」
「辰巳、やってみて。みんなで入れるやつ作って」
「みんなってそんな大きくできるのか?」
「魔力さえあればどんな大きさでもできるはずですが」
「やってみよう。ん? ああこういうことか」
「おおお。すごい。大浴場だ」
「これは……! 木のお風呂ですか? 広いですね」
「お湯を溜めてっと。こんな感じかな」
「わあ、みんなで入ろう! エドさんも!」
「え?! わたしもですか? そんな恐れ多い」
「さっきいっしょに入りたいって言ってたくせに」
「チョコちゃんも入るかな?」
「動物をお風呂に??」
「チョコちゃん飼うならちゃんとお風呂に入れたほうがいいと思うんだけど」
「んー猫ってお風呂いやがるんじゃないか?」
「猫じゃないでしょ。聞いてみようよ」
「聞いてみるって……」
「チォグザィナャッをお風呂に入れようとする人なんて初めて見ました」
「……チョコちゃん、お風呂に入ろう。お風呂わかる? 温いお湯で体洗うの」
「話してますね」
「連れて来たな。チョコ、風呂に入るのか?」
「ぐる」
「入ってみるって言ってるよ」
「じゃあ入るか」




