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第十三話 町の探索

「あれ買っていい? 辰巳、なにあれ?」


「わからないのに買おうとするな」


「わからないから買うんじゃん」


「トラ様、あれはヒトモドキの皮です」


「なにそれ?」


「人に似た姿でたまに現れるのですが、微妙にへたくそなのですぐにバレて殺される生き物です」


「え、なんか齧られたりするの?」


「いまのところ特に悪さはしないのですが、そのままにしておくわけにもいかず駆除しています。なぜわざわざ人前に現れるのかは謎です。一説によると人に紛れて天敵から身を隠そうとしているのではないかと考えられています。」


「なんかかわいそう」


「あの皮はなんに使うんだ?」


「人の皮よりも丈夫でしなやかなので手袋や財布に加工されます」


「財布はともかくあれで作った手袋はちょっといやだな」


「肌触りがよくて人気がありますよ」


「触ってみてもいい?」


「どうぞ」


「うわー! めっちゃ柔らかい! 気持ちいい!」


「まさかこれ本物の人皮が混ぎれてたりはしないよな?」


「人の皮はもうちょっとカサカサしてますし、なによりヒトモドキは指紋とかがないんですよね」


「ほんとだー。つるつるではないけど複雑な模様にはなってない」


「これのなかみはどうなるんだ?」


「皮を剥ぐと溶けちゃうんですよね。なので特に利用方法もないというか研究も進んでない感じです」


「ほう。ちょっと興味が出てきた」


「この皮でソファーとか作ったら気持ちよさそう」


「王の執務室の椅子がたしかそうですね。少し手に入りにくいのであまり大きなものは作られません」


「手袋作ってもらおうかな」


「これ鎧下に向いてるかもな。あとで注文しよう」


「鎧下としては高級品ですね。騎士団幹部でも持っている人は少ないですよ。でも品質がいいので憧れの品ではあります。鎧下ではなく部分的に張り付けて使う人もいますね」


「なるほど。それなら端切れでもいいのか」



*****



「この店はなに?」


「いろんな乳製品があるって聞いたんだが」


「いらっしゃいませ。こちらでは近隣の酪農家から毎日仕入れた新鮮な乳や加工品を扱っています」


「試飲とかできますか?」


「ええどうぞ」


「どんな種類があるの?」


「ケム、ボー、クセャゥなどの生乳と、それらのチーズ、バター、発酵乳、ジャムなどがあります」


「ジャム?」


「舐めてみますか?」


「ん……コンデンスミルクじゃん」


「料理にコクを出すのに使います」


「保存食の扱いなのかな」


「チーズとかもかなり硬くてしょっぱい……」


「村に行くとチーズを作る途中の柔らかくて甘いものも食べられますよ。日持ちがしないのでこちらには置いてませんが」


「お、それがあるといろんな料理が作れるんだよな。虎彦が好きなティラミスとかチーズケーキも作れるぞ」


「この世界版のティラミス! そういうのいいね」


「それでは仕入れ先の村をご紹介しましょうか」


「お願いします。ついでにあれとそれとこれもください」


「辰巳がわりとやる気だ」


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