第百七話 警備員
「いらっしゃいませ。魔王城へようこそ!」
「なんか違う」
「なんでや。めっちゃ歓迎してるやないか」
「そもそも歓迎するのがおかしい」
「ターさんお留守番ご苦労様です」
「他の四天王のみなさんがそろうと聞いてわくわくと炎が止まりません」
「炎は止めて」
「まずは応接室へどうぞ。お茶の準備ができています」
「見た目イケメン執事なんだけどなあ」
「あんなムキムキで口から火を吹く執事がいるか」
「ターさんかっこいいですよねえ。わたしも火を吹きたいです」
「やっぱりエドさんって中二病?」
「わあぁかっけーっす!」
「ここにもいた」
「どうぞおくつろぎください」
「おお、これは豪華」
「張り切ったはるなあ。今日は四天王の顔合わせやさかい龍王も席についてな」
「かしこまりました」
「いつもどおりくだけた感じでええよ」
「マジで? 盛り上がっちゃうう?」
「盛り上がらんでええけど」
「そういうキャラなんだ」
「っす! 盛り上がるっす!」
「ダメな組み合わせかもしれん」
「盛り上がるまえにみんな紹介させてな」
「ういっす」
「まずはまあ紹介するまでもあらへんけどわたいが魔王の烏丸鳳凰、人呼んでカラス魔法王です。よろしゅう」
「人呼んでないだろ。初耳だし」
「うっさい。次は四天王で魔王城警備員の永井龍王、ドラゴンや」
「ドラゴンだぜえ! ドラゴンいっちゃう? 火い吹いちゃう?」
「あとでな。次はせんせやな。わたいの元上司で四天王、百田熊次郎せんせや」
「カラスくんといっしょに祠めぐりをしていたらこちらに飛ばされてしまった百田です。やっと会えたねえ」
「いまごろかいな。ほんでせんせといっしょにいてはった四天王の」
「桃園天雀です。赴任先の学校の近くの神社からこちらに飛ばされて来ました。……久しぶりに思い出したけど懐かしいわね」
「なんや小学校のせんせになるとこやったとか」
「せっかく子どものころの夢がかなって先生になるところだったのに一度も学校に行けなかったの。でもこちらで学校を作れて結局夢はかなったわね」
「サツマはいまも庶民が学校に通ってるみたいだからな。めっちゃ影響残してる」
「子どもたちの役に立ってるならうれしいわ」
「あと四天王は桃太郎やな」
「た、太郎です。えっと、どうやって来たのかはわかれへんけど、なんやピンクの球に入ってたらしい、です」
「緊張してるのか? 知り合いしかいないだろ」
「口調がめちゃくちゃ」
「せやかてせんせに見られてるし恥ずかしい」
「五百年ももじもじしてるほうが恥ずかしいわ」
「でこっちも自己紹介してや」
「雑なフリ。オレは参内虎彦、そこの魔王を倒したことになってる勇者の息子で冒険者だよ。トラって呼んで」
「あの勇者か! あれは面白かったな! 『くっ魔王め!』『勇者様!』かなんか言って」
「その話はあとでな。俺は虎彦の幼馴染の乾辰巳だ。冒険者?だ」
「わたしはお二人のお供をさせていただいております、御者のエドゥオンです」
「影の一団を率いてはる暗黒騎士団長や」
「もうやめてくださいよぅ」
「それとなぜか異世界からついて来た宿屋の兄ちゃん」
「ご紹介にあずかりました、魔王軍参謀のプルストラット・プルストラッティっす!」
「魔王軍は現在一人しかいないけどな」
「最後は……自己紹介でええんか?」
「わたしはトラのいとこのモョオブォンだ。正直魔王城に来てしまってよかったのか疑問だ」
「それはみんなが疑問に思ってる」
「モブ様、軽率ですよ」
「暗黒騎士団長のエドゥオンには言われたくないよ」
「ぐっ」
「モブも四天王救出プロジェクトの一員だからね」
「一員……いい響きだ」
「モブい」
「ぐるう」
「ああそうだチョコちゃんもいるよ」
「俺の猫のチョコだ」
「猫……」
「なにか?」
「猫かどうかはともかくとても優秀なのは確かだね」
「ぐる」
「だれにでも懐きすぎでは?」
「がう」
「ほめてくれる人と、なでてくれる人と、おいしいものをくれる人はいい人だって」
「真理っす」
「ゆるすぎだろ」
「ぐるる」
「あと桃太郎はしかたないから面倒見てやるって」
「なんでや?!」
「一番下っ端認定」
「ザンネンな大人だ」




