第九十五話 むむいる
「屋敷はちょっとおかしなところはあったけど、まあ普通の屋敷だったな」
「これが普通なんですか?」
「田舎のほうに残ってる古い武家屋敷みたいなのはこんな感じじゃないかな?」
「武家というのは騎士ということですか?」
「ちょっと違うけどそんなもん」
「どんでんがえしとか隠しはしごとか隠し扉とか隠し通路とか迷路とか吊り天井とか落とし穴とか普通ないと思うけど」
『ニンニンじゃったのう』
「それで結局勇者ウニマルさんはもう亡くなってたわけだけど、……なにしに来たんだっけ?」
「勇者の文書とやらも読んだし、あとは……」
『わしがこの犯罪者をサツマに連れてって処罰することくらいじゃな』
『俺がなにしたってんだ! お宝をよこせ!』
「現在進行形で言動が犯罪くさいけど」
「チョコちゃんお腹空いてないか?」
『わっやめろ!』
「ぐるう」
「いらないって」
『おにいさまって呼んでもいいですか?(うみしーじゃーんでぃゆでーないびらに?)』
『お、おう(い、い~)』
「こっちもなんか犯罪くさいけど」
「その二人は放っといてもうそろそろ帰りましょうか」
「え? お姉さんも宿に帰るんじゃ?」
「なんならこのおっさんも宿に帰るだろ。屋敷で独りで暮らせるようなスキルなさそうだし。三日で餓死するぞ」
「いえ、それはそうなんですけど、そうではなくて、王国のほうにも帰ってはいかがでしょう」
「あ、そっちか」
「じゃあ今日は宿に戻って、明日はサツマに桃太郎と詐欺のおじさんを届けてからお城に帰ろうか」
『城?! そこにお宝はあるんか?!』
「お前は連れて行かないよ」
『なんでだよ!!』
「なんで行けると思うんだよ」
「桃太郎は用事が終わったら遊びにおいで」
『あの割れ目を渡ってかの? 遠いのう』
「いや迎えに行くから待ってろ」
「まあまずは帰ってごはん食べよ」
「そういえば宿の従業員ここにいるけどごはん出るんだろうか?」
「ちゃんと影が準備してますので支障ありませんよ」
「もう隠さないな」
「暗黒騎士団長ってバレてるからね」
「……ごはんはないかもしれませんね」
「ぐるぅ」
「チョコちゃんは影の人たちと仲いいからもらえるんだね」
『そんなにいやなら桃色騎士団にでも変えればよかろうに』
「それはなんかちょっと」
「桃色騎士団長のエドさ~ん」
「明日からもしばらくごはんはないでしょうけどしかたありませんよね」
「ごめんなさい」




