その後の世界
活動報告にあとがきを上げております。
奈落の世界に平穏が訪れた。
といっても、世界の化身クラスの化け物の衝突が無くなっただけで、普通のモンスターからしたら特に変わりは無かった。
ただ問題はその中間に属するモンスター。
ともすれば、世界の化身を倒す可能性を持っており、上位の存在にのし上がる者や、正面から戦い討伐してしまう反則野郎になってしまう奴もいた。
そんな彼らの扱いだが、基本的にこれまでと変わらない。
数がそれほど多くないのも理由だが、本能でとある場所を目指すということが判明しているからだ。
その場所とは、世界樹ユグドラシル。
世界の化身の一柱でありながら、その力は信じられないほど弱い。
戦闘が不向きというのは確かにあるが、奈落で争う力が無いというのは致命的である。
そんなユグドラシルを目指すのは、手っ取り早く取り込んで、己を強化する為である。
以前は聖龍が守っていたが、不在の今、狙って来る愚か者がいる。
頭部が筒状になり、体は羽のない昆虫。
体は大きく、森の木々を簡単になぎ倒すほどの力を持っている。
地を這いながら迫るモンスター。
頭部の筒から、魔法の砲弾が連続して発射される。
狙うはユグドラシル。
守護者達が抵抗しているが、足止めも出来ていない。
このままでは、ユグドラシルに届いてしまう。
そう思った時、地面が盛り上がり、ある一体の世界の化身が姿を現す。
それは巨大な黒い蛇。
名をウロボロスという。
ウロボロスは、虫のモンスターを丸呑みにすると、ユグドラシルを一瞥。
そして、何も言わずに地中に潜り去って行った。
去るウロボロスを見つめるのは、エメラルド色の髪を持つ少女。
世界樹ユグドラシルの化身である。
『何とも無愛想なもんじゃのう……』
苦笑するユグドラシルに、守護者であるミューレは言う。
『良いではありませんか、ウロボロスも無理矢理やらされているのですから』
ウロボロスがここを守るのは、メシアからの命令である。
そのメシアも、イルミンスールから指示を受けており、ウロボロスは番犬扱いされていた。
『まあそれも、聖龍が復活すれば必要無くなるのだがな』
『まだまだ時間は掛かりますが、そうですね』
聖龍は、あと四百年から五百年は転生の為の力を溜めなくてはならない。これを疎かにすれば、転生体は虚弱な力しか持てなくなってしまう。
だから、ここは待つしかないのだ。
『……そろそろですかね?』
『そうじゃな』
もう間もなく、新たな世界がこの奈落に取り込まれる。
それも、今回は二つ同時にである。
これまで迷宮として使われていた世界と、次に迷宮となるはずだった世界。
この二つが、この世界に加わるのだ。
『どうするつもりかのう? あやつは、これまで通りにはさせないと言っておったが』
『彼ならば、あっと驚くようなことをやってしまいそうですね』
思い浮かべるのは太った男。
今はかなりスマートな姿になっているが、出会った当初の印象が強過ぎて、そのイメージで固まってしまっていた。
世界に風が吹き始める。
基本的に、この世界では風は吹かない。
風が起こるのは、何かが起こっている時だけである。
そして、今回の風は、新たな世界が加わって起こった現象だ。
風が吹き荒れると、大地が大きく揺れる。
どうやら無事に、世界は奈落へと取り込まれたようである。
『……むっ、風が止まぬな?』
『そうですね、まだ続いているのでしょうか?』
いつもなら風は止むのだが、今は弱い風が吹いている。
何者かによって起こされたものでもなく、ただ一定の速度で吹いていた。
何が起こっているのかと辺りを見回していると、ミューレが何かを見付けたようで、上空を指差している。
『おお、これは……まさか、このようなことが可能だとは……』
何かやるだろうとは思っていた。
それが、これほど壮大なものだとは思わなかった。
ユグドラシルが見上げた先には、遥か上空に浮かぶ青い星の姿があった。
これにて本編完結。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。




