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無職は今日も今日とて迷宮に潜る【3巻下巻12/25出ます!】【1巻重版決定!】  作者: ハマ
8.ネオユートピア

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ダンジョン攻略33 天津勘兵衛その5

本日、無職は今日も今日とて迷宮に潜る3下巻発売です!!!!

よろしくお願いします!

 地上への道は、すでに見つけている。

 秘密基地から離れた火山の麓、そこに81階に続く階段があった。


 勘兵衛は階段を使い、81階に向かう。

 そこには、5つのポータルと別の道に続く扉があった。

 この扉は、残念ながら勘兵衛では開けられない。これを開けるには、順当に攻略して資格を得なければならない。


 ポータルの一つに乗ると、1階にあるポータルへと飛ばされる。

 この景色を見て、まず懐かしいと感じた。


「……ここは変わってないな」


 記憶にある景色と同じ。

 あの頃のように人がいるわけではないが、思い出すと胸に去来する物がある。


 そんな己に「ははっ」と自嘲する。

 自分の手で捨てたのに、何感傷に浸っているんだと、己が浅ましく思えてしまった。


 右腕と顔を隠す為、ローブを深く被り迷宮を出る。


「おお、発展してるな……」


 最初に目に飛び込んで来たのは、大きなビル。

 そこに多くの人の気配があるのを感じ取る。

 次に見えたのは地面。ボコボコとした剥き出しだった地面が、平面に舗装されていたのだ。また、迷宮に至る道には街路樹や街灯も設置されており、記憶の中とまるで合致しなかった。


 一体、どれだけの時間が過ぎたのだろうか?


 立ち止まって眺めていると、探索者パーティが勘兵衛を追い越して行く。


 その後ろ姿をぼうっと見て、あることに気付く。


「……何で殺したくならない?」


 あの時、仲間を殺した時、人を殺したいというモンスター特有の衝動に逆らえなかった。

 大切な仲間を殺す。それだけ強力な欲求だったのに、今はそれが無い。


 この疑問には、右腕が答える。

 答えは単純で、不要な欲求を消したという。


「このくそっ」


 ガンッと右腕を叩く。

 人を勝手に改造しやがって。

 だが、これのおかげで地上でも活動出来るようになる。


 まるで人間だった頃のように、街中を見て回る。

 記憶との違いに、望郷の念のような感傷は湧かないが、人間に戻ったかのような感覚に陥る。


 かつて住んでいた家は無くなり、大きな商店に代わっている。

 仲間達とよく行った飲み屋も、潰されて公園になっていた。


 妻はどうしただろうか?

 平次は?


 気になりはするが、それだけだった。

 会いたいとも思わないし、どうなっていようと助けもしないだろう。

 これが、魔人化した影響なのか、右腕に操られているからなのか不明だが、それも含めてどうでもいいと考えてしまう。


 もう一度右腕を殴っておく。


 一通り見て回ると、目的の人物を探しに動く。

 どんな奴なのかまるで分かっていないが、対大型モンスター用殲滅兵器・参型を倒すほどの実力の持ち主だ。早い内に頭角を現していてもおかしくはない。


 迷宮の近くに戻ると、ビルにある文字が掲げられているのに気付く。


【探索者協会】


 勘兵衛の時代には無かった組織だ。

 もしや、御庭番の連中が探索者を管理する為に組織したのかと思ったが、実態は違っていた。


「まさか、あの坊主がやるとはな」


 息子の平次が、御庭番を壊滅させて組織を立ち上げたのだという。

 それも、当代最強の探索者として名を馳せていた。


 興味が湧いた。

 時代的に平次が対象であるとは考え難いが、現在の探索者のレベルを知るいい機会だと思ったのだ。


 恐らく平次がいるのは、このビルの中央の階。

 そこに大きな魔力があった。

 正面からは向かわず、まずは外から様子を窺おう。


 と考えたのだが、自分の息子を甘く見ていたと悟る。


 迷宮に登り、そこから中の様子を見ようと目を強化して覗き見る。すると、中年の男と目が合った。


 空間魔法とは便利な物だ。

 転移魔法よりも早く発動可能で、熟練者になれば予備動作もほぼ無い。それは、勘兵衛も使用しているので実感している。

 だが、相手に使われると、想像以上に厄介だった。


「っ⁉︎」


 突然現れる平次。

 恐ろしい長剣が握られており、勘兵衛目掛けて振り下ろされる。

 それを既のところで避け、魔法を放ちながら距離を取る。

 咄嗟に放った魔法に大した威力はなく、簡単に防がれてしまう。だが、動きを止められた。


「どうして魔人が外にいる? それも、かなり強いな……」


 平次は、目の前の男が父親だとは気付かない。

 ローブを被っているのもあるが、たとえ顔を見たとしても判断は付かなかっただろう。

 それだけ、勘兵衛は変わってしまったのだから。


「いや悪い、余りにも強そうだったから覗き見しただけなんだ。別に誰にも危害を加える気は無い、お前とも争いたくは無い。ここは、見逃してくれないか?」


 これは本心。

 地上に戻ったのはあくまでも調査で、対象を発見できなければ奈落に戻るつもりでいる。これは、対大型モンスター用殲滅兵器・参型の意思でもある。


 対大型モンスター用殲滅兵器・参型の目的は、名前の通り大型モンスターの殲滅。魔力を必要としない人の世界は、守るべき世界でもあった。

 だから、ここで争うつもりは無いのだが……。


「魔人の言葉ほど信用出来ないものはないな……」


「聞かん坊め……」


 平次は知らぬ間に、実の父と戦いを繰り広げる。

 長剣と刀が斬り結び、無数の魔法が飛び交いダンジョンの上で激しくぶつかり合う。

 かつての最強と現在最強の探索者の戦闘は、段々と規模を拡大させて行く。このまま戦い続ければ、街にまで被害が及ぶだろう。


 それを危惧した平次は、早々に決着を付けるべく全力を出す。


「天断ち一閃!」


 それはかつて見た友の技。

 模倣でしかないが、平次の必殺の一撃。

 全てを断ち切るような特性は持っていなくても、限りなく近い威力を発揮していた。


 恐ろしい一閃が、空を駆け抜ける。


 これをまともに食らえば、勘兵衛でもただではすまない。


 だが、そうはならなかった。


「そこまで付き合ってやれるかよ」


 勘兵衛は天断ち一閃が放たれると同時に、この場から離脱。ダンジョンの中に逃げ込んでいた。


 こうして、最初で最後の親子の再会は幕を閉じた。





 それからの勘兵衛は、ゴーレムの強化を進めつつ、地上で目ぼしい探索者を試して行く。

 平次に見つかり、地上での活動はやり難くなったが、ダンジョン内で戦えば問題はなかった。


 そんなある日、ゴーレムが暴走した。

 保有魔力を拡大して、対大型モンスター用殲滅兵器・参型に近い容量にすると、突然自我を持ち暴れ出したのだ。


 その被害は甚大で、秘密基地を半壊させてしまうほどだった。


「くそが‼︎ せっかくここまで作ったのによう! 何してくれたんだ!」


 右腕もガチガチと動き、珍しく怒っている様子だった。

 だが、この怒りは暴走したゴーレムに向いたものではない。どうなるかという好奇心から、試してみた勘兵衛に向けられたものだ。


 右腕が動き、勘兵衛の顔を殴打する。

 真面目にやれという意思だ。


「ごふっ⁉︎ くそっ、失敗しただけだろうが。次は隔離した所でやるよ」


 もう一度右腕が動く。

 また顔面だろうと身構えた勘兵衛だが、次は腹を殴打された。

 今回の被害で、計画は大きく後退してしまった。なのに、またやろうとしている勘兵衛に怒りを抱いていた。


「ぐふっ⁉︎ 分かってるって、次はちゃんとやるからよ」


 何も理解していない勘兵衛に、対大型モンスター用殲滅兵器・参型は呆れて何も抗議しなくなった。



 その後、地上で勘兵衛は己の身内を殺す。

 いつも通り、目ぼしい奴を相手にしていたのだが、どうやらその中に混ざっていたらしい。


 それを、かつての仲間だったマヒトから知らされた。


 平次の息子であり、勘兵衛の孫である男を殺した。


 だが、何も感じなかった。

 それを、虚しいと思ってしまった。


 マヒトと戦闘になり勝利するも、トドメを刺さなかったのは、何も感じないのなら殺しても意味がないと思ったからだ。

 対大型モンスター用殲滅兵器・参型は殺して取り込めと五月蝿かったが、無視してマヒトを放置した。


 ただ、それだけの出来事だった。





 孫を殺してからも、勘兵衛は地上を見て回った。

 そんな些細な出来事で、あの力を諦める理由にはならなかった。


 いつまで経っても現れない。

 どの強者も平次には程遠く、見た目だけで違うと分かる。


 他のダンジョンにも向かうが、結果は同じ。


 それでも探し続けた。


 だからだろうか、奈落に戻ると秘密基地が壊滅していたのは。


「これは何の冗談だ?」


 秘密基地の周りには激しく争った形跡があり、何者かに襲撃された可能性が極めて高い。

 破壊された多くのゴーレム。

 そして、襲撃して来たであろうデーモンの姿も見える。


 すでに死んだデーモンに近付き、右腕が取り込む。

 記憶をあさり、何が目的なのかを探る。そこにあったのは、偶々ゴーレムの軍団を見つけたから襲撃したろ、というふざけた内容だった。


 ここまで入念に準備を行っていたというのに、そんな軽い理由で台無しになってしまった。


 秘密基地の内部を調べると、地下の倉庫に並べられたゴーレムと、その奥にある実験室は無事だった。


 まだ何とかなる。

 計画は大幅に狂ってしまったが、これで終わりではない。


「あの野郎、絶対に殺してやるからな」


 思い浮かべるのは黒い翼の天使。

 考えるだけで震え出すが、それを上回る怒りが湧いて来る。


 白銀の大剣の使い手の捜索は一旦止め、ゴーレムの作成に集中する。

 数よりも質を。これをコンセプトに、自我が芽生えないギリギリを狙って造り出して行く。


 慎重に、もっと強く、暴走させないように、怒りをぶつけるように、従順で強力なゴーレムを一体作り上げた。

 かなりの労力を掛けただけあり、相当の力を持ったゴーレムに仕上がった。勘兵衛でも倒すのに梃子摺るだろう強さだ。

 正に、天使に対して強力な切り札と言っても過言ではなかった。


 そんなゴーレムだが、見事に暴走してしまった。


「なんでこうなる⁉︎ いや、まだそう決めつけるのは……」


 今回のゴーレムは、対天使として造り出したというのもあり、天使を感知することが出来る。もしも近くに天使がいるのなら、勝手に動き出したとしてもおかしくはなかった。


 まだ可能性はあるか? あまり期待はしていないが、少なくとも天使に見付かる前にどうにかしたい。まだこちらの準備は整っていないのだ。


 発信機を頼りに、ゴーレムを追う。


 途中で破壊されたという情報が入って嫌な予感がしたが、ゴーレムの残骸を解析すると、とても喜ばしい情報が入っていた。


 白銀の大剣の使い手が現れたのだ。

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暴走じゃなくて実は正常で狂ってるのこいつらじゃねーのか?w
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