2巻発売記念SS 異世界? 転生ミーノ君!②
2巻購入していただきありがとうございます!
お礼のSSになります!
まだの方は、是非お手に取ってもらえたら嬉しいです!
本田実ことミーノが転生して、幾分か時間が経った。
この世界の時間基準で三年が経過しており、立ち上がり走り回れるくらいには成長していた。
三年といっても、前の世界のように1095回の昼と夜を過ごした訳ではない。
ミーノは現在八回目の昼を迎えており、夜はまだ七回しか経験していない。この昼と夜の時間が一定ならば、まだ計算しようがあるのだが、残念ながら同じ間隔ではなかった。
「この世界ってどうなっているんだろうな?」
ミーノは黒い尻尾をゆらゆらと揺らしながら、部屋に飾られた時計を見る。
表示された数字は、地球の物とは異なっており、見るだけで何となく意味が頭に浮かんで来る不思議な文字だ。
「ミーノどうしたの? 早く行かないとお誕生日会遅れるよ」
時計を見ていると、おめかしをした姉のシャーリーが、早く行こうよと急かして来る。近くには父と母もおり、二人とも他所行きの格好をしていた。
そういうミーノも、タキシードのような物を着用しており、これから出掛けるところだった。
「うん、今行くよ」
そう、シャーリーが言った通り、本日はお誕生日会である。
この地では、一人一人の誕生日を祝うのではなく、皆が一斉に歳を重ねるようになっていた。
それが、お誕生日会である。
とはいえ、これはそれほど大きなイベントではない。家族や地域、大きくて種族単位でお祝いする程度の催しでしかなかない。
そもそも、長寿な種族がいるので、歳を数える習慣が無いのだ。
ミーノが住む地域では、周辺住民が集まって誕生日のお祝いをする。
場所は大きな建物を借りて行われ、毎回数百人の獣人が集まって行われていた。
「楽しみだねミーノ⁉︎ あたし、今日で十歳になるんだよ!」
「うん、僕も三歳になる」
「えらいね! ちゃんと歳覚えてたんだ⁉︎」
「うん。あとね、お姉ちゃんはまだ九歳だよ」
「え?」
「え?」
年齢間違えてるぞと指摘をしてみるが、どうにも本人は理解していない様子だ。
困ってしまって、ニャンニャンと母のニャルを見上げると、「シャーリー、あなたは今日で九歳なのよ」と優しく教えてあげていた。
「え、でもクロエが、「私たち、九歳だからもう直ぐ十歳」って言ってたよ」
クロエとは、シャーリーのお友達の黒猫の獣人である。ミーノも同じ黒猫だが、あちらは幾分柔らかい色合いをしていた。
そんなクロエは、すました顔で悪戯をするので、シャーリーは度々悲鳴を上げている。
「お姉ちゃん、それ騙されてる」
「え?」
「騙されてる」
「……え?」
信じられないといった様子のシャーリー。
だが、残念ながら事実である。
というか、いい加減学べと言いたくなった。
そんなこんなで会場に到着すると、大勢の獣人が食事を片手に談笑していた。
「クロエ騙したね!」
「騙してない、ただ次は十歳って言っただけ。シャーリーの勘違い」
ムキー! と怒るシャーリーは、クロエに向かって飛び掛かる。しかし、クロエは気にした様子もなく料理に舌鼓を打ちながら華麗に避けていた。
そんな姉達とは離れて、ミーノは母親に付いて歩いて行く。
向かった先は、ミーノと同い年くらいの子達がいる所。
そこには沢山の遊具が置かれており、大半の子が遊び回っていた。
どうやらここは、同年代の子と知り合う場でもあるらしい。
「ミーノ、遊んで来てもいいよ」
そう母に送り出されるが、どうしたらいいのか分からなかった。
ここにいるのは子供ではあるが、獣人という人よりも優れた身体能力を持つ種族だ。その遊びもアグレッシブで、コースを走り回ったり、障害物の高い所にジャンプしたり、自分で投げたボールを取って来たりと、どうしたらいいねん状態だった。
そんな中を歩いていると、椅子に座ってぼうっと眺めている子供を発見した。
狸の獣人の子で、背中を丸めており、とても年老いて見えた。
ただ、その姿に親近感を覚えてしまった。
前世で、最初に探索者になろうと誘った人物。
最後まで、実に付き合ってくれた馬鹿な奴に似ていたからだ。
「なんだか、岸田に似ているな」
呟いた瞬間だった。
狸の獣人の子が、ミーノの顔を見たのだ。
驚いた表情は、ミーノを見ると、更に驚いて震え出した。
「おっ、お前……実か?」
前世の友との再会だった。
明日もSS投稿します。
田中の話です。