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ダンジョン攻略10

2巻発売中!!!

ゴールデンウィークのお供に、お手に取ってもらえると嬉しいです!

 ネオユートピア跡地に入ると、収納空間からイルミンスールの杖を取り出す。

 すると、杖が反応して日向がいる方向を示してくれる。


 そちらに歩いて行くと、ツノ兎やスライム、ゴブリンに痺れ蛾とダンジョン10階までに出現するモンスターが襲って来た。


 相手にしてられんと無視して進む。

 そもそも、この鎧の防御力を上回れる奴はいない。

 ただ、ガンガンと五月蝿いだけだ。

 それだけなので、構わずに進む。


 他の探索者ともすれ違うが、俺の周りに群がったモンスターを見てドン引きしていた。


 杖が示した場所に到着すると、そこは開けた場所で、建物の残骸も無い場所だった。

 そしてここは、俺が心臓を抉られて倒れた場所でもあった。


 その中央には、不自然に揺り籠が置いてある。

 杖はそこにいると告げており、周囲にいるモンスターを魔力の波を発生させて一掃する。


 周囲を見渡すが、どこにもミューレの姿は無い。

 空間把握にも反応は無く、少なくとも近くにはいないようだ。


 揺り籠の中を見ると、布に包まれた日向がスヤスヤと眠っていた。

 どこにも怪我をした様子はないけど、念の為に治癒魔法を掛けておく。


 ホッとして日向を抱き上げると、揺り籠の中から何かが飛び出して来る。

 それはまるで蛇のように動き、手首に巻き付くとブレスレットのように硬質化してしまった。


 何かが抑えられる感覚を覚える。

 同時に魔力の動きを感じ取り、振り返りながら凶刃を杖で防ぐ。


 ……お前、何考えてんだ?


『田中殿、申し訳ないが、ヒナタのために死んでくれ』


 ミューレを睨み付けると、訳の分からない言葉を吐いて双剣を操り攻めて来る。


 意味が分からん。と呟きながら大きく下がり、風属性魔法を使おうとして、不発に終わった。


 は?


 魔法が使えない。

 魔力の流れは感じるし、身体強化も出来ている。

 だけど風属性魔法が使えなかった。


 なんだこりゃ?

 意味の分からない状況に、困惑して動きを止めてしまう。しかし、こちらの状況など知ったことかと、ミューレは突っ込んで来る。


 片手で杖を操り、ミューレの剣戟を凌いでいく。

 ドッ! ドッ! ドッ! と鈍い音を立てているのは、ミューレの剣がそれだけ重く鋭く、強い思いが込められているからだ。


 恐ろしい一撃一撃が、イルミンスールの杖を削って行く。


 とはいえ、自己修復機能のある杖だ。

 傷付いた瞬間から修復しており、ほぼ無傷のように見える。だからこそ、あえて剣を受けて止める選択をした。

 それもこれも、対話をする為、ミューレの目的が何なのかを聞き出すた為だ。


 おい、さっきのヒナタの為ってどういう意味だ⁉︎


『言葉の通りだ。あなたを生かす為に、ヒナタの命と肉体が使われた。それを返して欲しいのだ』


 返す? そんなこと、出来るわけないだろうが。


 こいつは俺に死ねと言っているのだろうか。いや、さっき死んでくれと言っていたな。なら、俺を殺すつもりなのだろう。


 だから拒絶するのだが、次の言葉で考えてしまう。


『ヒナタが復活すると言ってもか?』


 …………。


 ミューレの双剣を掻い潜ると、その腹を杖で突いて大きく後退させる。


 どういう意味だ?

 それはヒナタが生き返るってことか?


『その通りだ。田中殿が納得してくれるのなら、ヒナタは生き返る。あなたの息子が戻って来る』


 ……じゃあ、この日向はどうなる?


『その子から魂を移すだけで、危害を加えるつもりはない』


 魂を失ったら、この日向は死ぬんだろう?


『ユグドラシル様に頼み、代わりの魂を用意してもらおう。それで問題ないだろう?』


 ……ユグドラシルも承知しているのか?


『まさか、これは私の単独行動だ。ユグドラシル様は、田中殿に恩義を感じておられる。たとえどのようなことがあっても、この決断はしないだろうな。ユグドラシル様が、田中殿に危害を加える選択など取れるはずもない』


 ……他の奴らは?


『さっきも言っただろう、私だけだ』


 ……断る。


『……何故だ? 貴方もヒナタには生きていてほしいのだろう?』


 ああ、そうだな。

 だがな、この命はヒナタに貰った物だ!

 たとえヒナタが生き返ろうとも、俺が死を選んだら、あいつの選択を否定したことになるんだよ!

 そんなこと許せるか!

 何より、日向はこうして生きているんだ!

 代えの魂だと? そんな物いらねーんだよ!


 イルミンスールの杖を地面に突き刺し、魔力を大量に流す。

 杖は俺の意思を汲み取ってくれたのか、植物を生み出し日向を守る結界を作ってくれた。


 少しだけ待ってろ。

 そう日向に告げて、俺は収納空間から不屈の大剣を取り出す。


 向き直ると、ミューレはどこか諦めた表情をしていた。


「リミットブレイク」


 力が溢れて、全能感が脳を支配する。

 これまでは、スキル並列思考を使って制御していたが、どうにも上手く行っている気がしない。

 他のスキルを意識してみるが、いつもの反応が無い。

 これは、スキルが使えなくなっているな。


『気付いたか? 貴方の巻き付いたそれは、能力を封じ込む効果がある。だが、特殊な能力は無理だったようだな……』


 試しに大剣を振ってみると、ブンッ! と鳴り辺りに衝撃が走る。

 しかし、その感触には違和感があり、どうにも上手く行っていないような気がする。


 まあ、それでも戦える。


 ミューレを睨むと、あちらも戦闘モードに入る。

 ここからが本番だ。



ーーー



 ミューレがヒナタの転生先を知って、これまでにやったことは田中ハルトの観察だった。


 ダンジョンに潜っているのを遠方から眺め、どのように戦い、どのように動き、どのような弱点があるのか調べ上げて行った。


 だが、その結果は惨憺たるものだった。

 都ユグドラシルで作られた他者の能力を調べるアイテム『アナライズリング』を使い見た能力は以下の通りだった。


ーーー


田中 ハルト(25+13)(混沌)

レベル error

《スキル》

地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈 魔力操作 身体強化 毒耐性 収納空間 見切り 並列思考 裁縫 限界突破 解体 魔力循環 消費軽減(体力) 風属性魔法 呪耐性 不滅の精神 幻惑耐性 象徴 光属性魔法 悪食 勇猛 自動人形生成 森羅万象

《装備》 

守護獣の鎧(魔改造) イルミンスールの杖

《状態》

ただのデブ(栄養過多)

世界樹の恩恵《侵食完了》

世界亀の聖痕 《侵食完了》

聖龍の加護 《侵食完了》

聖天の心部

《召喚獣》

フウマ


ーーー


 種族が人間から混沌へと変わっていた。

 この混沌は、未だ変化を続ける者に見られる特徴で、たどり着く先は、ユグドラシルに刃が届く者になる。

 しかし、田中ハルトは現時点でその者らを凌ぐ力を持っていた。


 これから先、己の存在を決め、種族が定まれば、聖龍やユグドラシルのような唯一の存在となるだろう。

 天使という種族に収まっている間は、勝ち目が無かった。

 それを理解しても、ミューレは挑む決断をする。


 正面から戦えば、何も出来ずに負ける。

 だから、己の信念に反した罠を仕掛けて、その能力を封じる選択をした。


 ユグドラシルの一部を使い、錬金術師が作り出した腕輪型のアイテム。

 能力封じの腕輪は、一定期間の対象の力を封じる効果を持っている。

 これは、都ユグドラシルで罪を犯した者を拘束する際に使われる物だ。普通の者ならば、魔力まで使えなくなるほどの効果を持っているが、田中ハルトにはそこまでの効果は期待出来なかった。


 日向の背に隠した能力封じの腕輪は、上手く対象の腕に巻き付くことが出来た。

 その甲斐あって数多くの能力を封じたが、特別なスキルまで封じるのは不可能だった。

 予想通り、ユグドラシルと錬金術師の技術の結晶を持ってしても、田中ハルトの能力は完全には封じれない。


 だからといって、今更引く気も無い。


 双剣を操り、転移魔法と遠距離からの攻撃魔法で攻め立てる。


 どれだけ身体能力が優れていようと、スキルで補助されていなければ、その力は格段に下がっていた。

 魔法を避けることは出来ず、剣を受け切れずに、その身に届く。


 違和感に気付いたのは、何度もその身を刻んでからだった。


 多くの血が流れているはずなのに、倒れる気配が無い。


 田中ハルトは、今はまだ人の形を保っている。ならば、多くの傷を負い血を流せば倒れるはずだった。


 しかし、そうはなっていない。

 むしろ、動きが良くなっており、ミューレの攻撃も対応されてしまう。


 更に、


『……治癒魔法を使えるのか』


「これまで何度も使っているからな、同じように魔力を動かしゃ、そりゃ使えんだろう」


 負った傷はすでに癒えており、動きが洗練された物へと変わっていた。その上、田中ハルトが片手を掲げると、「レイ」と唱えて光を放つ。


 ミューレは身を捻って避けるが、内心はそれどころではなかった。


 これが、真の英雄たるゆえん。


 この時、ミューレの勝ち目は万に一つも無くなった。

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― 新着の感想 ―
作中の時間そこそこ経ってるのにデブが解消されないからまだ蟻蜜のみ続けてるのかな?美味しくも感じなくなってただデブになるだけのものに成り下がってるのに(´・ω・`)
これは、田中さんにとって良い訓練になったな 今迄もスキルが無くてもスキルっぽいことが出来てたのに、スキルを封じられて完全に物にしてしまったという…
感想じゃなくてすいませんが、活動報告をスマホで読もうとするとAppStoreで開きますか? となって読めないです
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