表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
334/348

フウマ10

4月25日2巻発売!!!

大幅に加筆しております!

新エピソードあります!

よろしくお願いします!

『これはまた、ヤバめでありんすなぁ』


 ぬらりひょんより富士山の噴火が予告されて、日本オワタ! となったミミ子だが、


「玉藻御前を連れて来い、奴は竜脈に詳しかったはずだ」


 と指示を受けて、フウマと共に西に向かい、半ば強制的に連れて来た次第である。

 それで富士山の火口を見てもらったのだが、どうにも反応がよろしくない。


『母様、どのような状況なのだ?』


『竜脈の勢いが凄ぉて、はっきりとは見えません。でも、何も手を打たんのなら、十日後には噴火しんすなぁ』


「その手段とは何だ?」


『あら、空耳が聞こえしんすなぁ。どこかの頭でっかちはんがやらかしたんに、太々しくて羨ましぃわぁ。これは、地球さんも喜びますわ』


「くっ⁉︎ 玉藻御前、頼む、竜脈を正常に戻す方法を教えてくれ」


 嫌味を言われても、何も言い返せないぬらりひょん。

 玉藻としても、こんな事態を引き起こした張本人を切り裂いてやりたいが、それで解決しないのは理解している。


 だから、責任を取ってもらう必要があった。


『……東の妖、全ての命を捧げる覚悟はありんすか?』


「…………人柱にするつもりか?」


 人柱。

 かつて人の世にあった風習。

 神から加護を与えられる為、穢れを祓う為に行われていた悪習。多くの命を無駄に散らした、忌むべき行い。

 しかし、これを知識ある者が適切に運用すれば、一定の効果が得られた。


『理解が早くて助かりますなぁ。……一万の妖を持って、竜脈を正常に戻す。選べ、生贄となる妖を連れて参れ』


 戯けた様子から、妖の長の顔になる玉藻。


 これは笑いごとではないのだ。

 東の地が混乱に陥るだけならまだいいが、日本という国そのものが消えようとしていた。

 人だけでなく、多くの妖も犠牲になる。

 たった一万の命で済むのならば、それを選ばない理由はない。

 その上、今回の騒動の元凶ははっきりとしている。ならば、責任を取ってもらうまでだ。


 妖気を高めた玉藻の九本の尾が揺れる。

 たとえ断ったとしても、ぬらりひょんを操り東の地から生贄を選定するつもりだった。


「…………」


 それを理解しているぬらりひょんは返答に詰まる。

 己が元凶と理解しているが、はいそうですかと部下達を差し出せるはずもなかった。

 これで憂が無くなるのなら、部下達を含めた己の命も差し出せただろう。

 ただ、その後の荒れるであろう東の地を思うと、どうしても頷けなかった。


 刀に手が伸びる。


 一触即発の空気に当てられて、くあぁ〜とフウマの欠伸が鳴る。


 水を差されて空気が緩む。

『これフウマ⁉︎』とミミ子に注意されるけど、フウマとしては止めるつもりだったのでどうでもよかった。


 噴火するのなら、主人に言ってどうにかするつもりだし、妖怪を一万体も殺させるつもりも無かった。


 そこら辺を「プルル」とミミ子に伝えると、『……フウマ』と感動しているようだった。


 ミミ子がフウマの言葉を伝えると、


『ほんに出来るのかえ? 天上の神々でも無理な話でありんすえ』


「待て、まだ頼るわけにはいかん。他に手段がないのか探す。それだけの時間は稼げないか?」


 何故か懐疑的な上に却下された。


「……プルル」(……なんでや)


 不満げに嗎声いて、フウマは落ち込んだ。


『時間を稼ぐのは可能ですが……相応の対価はいただきますえ?』


「土地の一部を譲る。それで足りないのなら、金銭で支払おう」


『大妖怪ぬらりひょんとあろう者が、人に染まりんしたなぁ。金銭なぞいらん。この地と、あんさんが使っている刀を貰いましょうか』


「ここを?」


『ええ、この富士山と樹海をいただきたい』


 逡巡するぬらりひょんは、一度頷いて腰から刀を取る。


「これで良いか、ここは飛地になるがいいのか?」


『構いません。あの子がどうにか出来ると言うのなら、賭けてみるのも一興じゃありゃせんか?』


「ブル」


 さっきの否定はなんだったんだと訴えるが、残念ながら玉藻には通じていない。


 その後、玉藻の指示により、火口から樹海に移動する。

 向かうのは、ダイダラボッチが封印されていた場所。

 ここに、富士山に続く竜脈が流れているそうだ。


 大穴が空いているのは、ダイダラボッチが封印されていた場所。

 そこに刀に術式を刻み込み、真っ直ぐに落とす。

 すると、何かが堰き止められる感覚があり、玉藻は印を結び妖術を使った。


 そんな一連の流れを、フウマはキラキラした目で見ていた。


 こういうので良いんだよ!

 みんな、予備動作無しで力を使うものだから、まったくかっこよくなかったのだ。

 魅せるという美学が足りない、男の浪漫が足りない、厨二への愛が足りていない!


 そんな風に興奮していると、玉藻から状況の説明がされる。


 なんでも、竜脈の余剰分をこの場に溜めているらしく、限界が来れば一気に流れ出して、即座に噴火するそうだ。


『期間はおおよそ一月、といったところでありんしょうか。それまでに、何らかの方法を考えなんし』


 一時の猶予を与えられたぬらりひょんは、即座に動き出す。

 東の妖怪のほぼ全て、それにミミ子も加わって過去の文献から、竜脈の制御の仕方を徹底的に調べ上げて行く。

 しかし、出て来るのは人身御供ばかり。

 やることは、玉藻御前が言っていた内容とさほど変わりはなかった。


『天上の神でも不可能なのか? フウマの主人ならば可能かもしれんというのに……』


「神は万能ではない。所詮は、世界に作り出されただけの物に過ぎん。その存在価値は、我らとそう代わりないのだ」


 そこまで言うか、と思ったが、確かにと思わないでもない。

 ダイダラボッチを封印するという行動にも、その封印にも小細工を仕掛けていたことにも、神と呼ぶには、その矮小さが滲み出ていた。


「仮に、可能な存在がいるとすれば、それはもう我らの知る神ではない。もっと違う、別の何かだ」


『違う、何か……?』


「ブル?」


 ミミ子からの視線を感じて、調べるフリをして漫画を読んでいた顔を上げるフウマ。

 神以上の力を持つフウマ。

 更に強いその主人。

 改めて、一体何者なのかと疑問に思うミミ子だった。


 それから日々が経ち、いい解決策が思い浮かばず、フウマの主人に頼ろうとした時、


「プルル!」(用事があるから、ちょっくら行ってくらぁ!)


 と、空気を読まずにフウマがどこかに行ってしまった。


『お、おいフウマ⁉︎ どうするのだ⁉︎ 日本の一大事なのじゃぞー‼︎⁉︎‼︎⁉︎』


 その叫びは空に消えて行ってしまう。

 マジどうするのじゃ……と途方に暮れていると、不思議な木を持ったフウマが現れて、ミミ子を連れて樹海に飛んだ。


 降り立ったのは、一時的な封印を施した大穴。

 そこに不思議な木をぶっ刺すと、みるみる木は育って行き、不思議な力を発するようになった。


 その力はミミ子にも影響を与える。


 三尾だった尾が、四尾になり、五尾まで増えていた。


「ブル?」(これで大丈夫か?)


『……大丈夫じゃろうが、いろいろと納得が行かん。説明してもらってって⁉︎ フウマ⁉︎』


 説明が面倒になったフウマは、「ブルル」(あとは任せた)とミミ子を置き去りにしてどこかに行ってしまった。


『あとは任せるって……』


 ミミ子は巨大な大樹を眺める。

 富士山を噴火させるほどのエネルギーを吸収して、竜脈を正常に戻してしまった不思議な木。


 それはまるで、奇跡のような出来事だった。


 木を眺めていると、自然と頭を垂れていた。


 優しい風が吹いて、ミミ子の頭を撫でる。

 はっとして頭を上げると、そこにはエメラルド色の髪の少女の姿が見えた。


 しかしそれも一瞬のことで、ふっと消えてしまう。


 まるで狐につままれたような気持ちになりながら、『母様とぬらりひょんにも説明せんとな』と気持ちを切り替えて、ミミ子は立ち上がる。


 こうして、一連の騒動は幕を閉じる。


 しかし、それから数日後、世界オワタ! 的な出来事が起こって混乱に陥ることになる。


 それを知らないミミ子は、そっと樹海を後にした。



ーーー

ミミ子


九尾の妖狐、玉藻御前の三百三十三番目の子。名は適当に付けられた。地方の妖怪を取りまとめる役目を任されていたが、フウマと出会ってしまったことで大出世する。北の地の妖怪の主の補佐、ぬらりひょんから名と顔を覚えられ、玉藻御前も再認識する。

この世界の、世界樹ユグドラシルの巫女に選ばれる。加護を与えられ、三尾から五尾まで成長する。


ーーー

フウマの話はこれで終わりです。

明後日より、田中の話になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>まるで狐につままれたような気持ちに 自分でほっぺをつまむとw
巨大な力を気ままに使って助けたり助けなかったり畏れ恐れられるのは もう神話の神様そのものなんよ…
ミミ子は苦労人間違いなしや 世界オワタのちょい前に富士山に樹がにょっきとか皆超気になってそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ