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フウマ⑤

【告知‼︎】

4月25日に無職迷宮2巻が出ます‼︎‼︎

新しいエピソードを追加しております!文字数も倍以上になっております!

皆様には口絵を是非見てほしい!

よろしくお願いします!!

 目の前でミミ子が酷い拷問を受けている。

 手足が縛られ、同族達に激しい仕打ちを受けて顔を歪めている。

 キュンキュン⁉︎ と悲鳴が聞こえて来て、こちらも心が痛んでしまう。

 ミミ子はやめてくれと、もうやめてくれないと死んでしまうと訴える。


 しかし、誰もやめてはくれない。


 ミミ子が自白するまで、くすぐりの刑は続行されるのだ。


 フウマは思う。

 ああはなりたくないなと。

 可愛いらしい顔でも、あそこまで顔を歪めたらとてもではないが見ていられない。

 あんなブサイクな面は晒したくないなと、爆笑し続けるミミ子を見て思った。




 という夢を見た。




 楽しそうな笑い声が聞こえて来て、うるせーなーと目を覚ますフウマ。


『おお、ようやく目を覚ましたか』


 そう言うのは、夢の中で拷問を受けていたミミ子だ。

「ブル?」としながら辺りを見回すと、広い部屋でたくさんの妖怪達がどんちゃん騒ぎをしていた。


 なんぞこの状況? と疑問に思っていると、ミミ子とは反対側から声が届く。


『これは北と西の友好の証、慶事と呼ぶにぴったりじゃありゃせんか? こういう時こそ、騒いで楽しみましょうよ』


 そう笑うのは、九尾の妖狐の玉藻御前だった。


「ブル?」


 しかし、今ので余計に分からなくなった。

 北と西の友好の証とは何のことか、さっぱり分からないのだ。


『これフウマ、あれほど言ったであろう。禍ごとが起これば、互いに協力し合えるように同盟を結びに行くと』


「ブルル?」


 そんなの言ったっけ? とよく思い出せないフウマ。

 これは仕方ない。

 記憶容量のほとんどをアニメや漫画に費やしており、他は残りかすのようにしか覚えていない。

 その残りかすも、森での生活に割り当てられており、残りかすの残りかすしか普段の生活に使用されていないのだ。


『くぅ〜! 覚えとらんな⁉︎ フウマだから仕方ないと言えばそれまでじゃが、もうちょっとこう、しっかりしてくれぬか⁉︎』


「ヒヒン!」


『しっかりしてるって? そうか、フウマはそれでしっかりしているのだなぁ……。まあ良い! ちゃんとサポートしてやるからの!』


 ガッカリとしながらも、それなら自分が補助すれば良いかとミミ子は考えを改める。

 そもそも、フウマは妖怪側とは関係の無かった存在なのだ。

 酒呑童子の暴走を止めてもらい、北の地を治めてもらっているだけでも、感謝しても仕切れなかった。


『話は終わりやんしたか? さっきはすんまへんでしたなぁ。まさか、眠りの香が効くとは思いませんした』


「ブル」


 寝不足だったから、周りに便乗しただけだからと強がってみる。

 フウマは魔法には強い抵抗力を持っているが、この世界独自の力であり、別系統の妖力に対してはそれほどではない。

 身体強化を施せば、それなりに対抗できるが、無防備だと効果は抜群だったりする。


 まあそれも、危険と判断した瞬間に相手を制圧するので何も問題は無いが。


 つまり玉藻は、それだけ危険な行為に及んでしまった。

 もしも使った技が、フウマの身に危険を及ぼす物なら、その首は落とされていた。


 だからミミ子は非難する。


『母様、何故あのようなまねを? フウマの力は本物ですじゃ。酒呑童子でも何も出来ずに滅ぼされました。もしも、フウマが敵と判断していたら……』


 母様は死んでいた。

 そう言葉を続けそうになるが、それは言わないでいた。

 心配するというのが、大妖である九尾の妖狐に失礼に当たると思ったからだ。

 しかし玉藻は、心配してくれているミミ子の姿が楽しくて、嬉しそうに微笑む。


『ふふっ、心配してくれるのかえ? その時は別の者が跡を継げばよいじゃありゃせんか。それよりも、まずはあの強大な存在が何を企んでおるのか、我らをどうしたいのか知ることが先決でしんた』


『それは、命を賭してでもやる価値があったと?』


『ええ、妖の命運が掛かった事態でありんすからね』


 この国に突然現れた強大な存在。

 下手をすれば、世界を滅ぼしてしまえるかも知れない存在。

 そんな危険な存在が現れたら、最大限まで警戒するのは当然だった。


 これは、かつて己の過ちで妖怪を滅ぼしかけた玉藻の贖罪でもある。


 もちろん、ミミ子からも報告は受けているが、それを全て信用するほど玉藻は愚かではない。

 東の地を牛耳る大妖怪、ぬらりひょんは情報戦を得意としていた。己の力もさることながら、誤情報を流して意図的に操ることもあるのだ。

 玉藻もそれなりにするのだが、ぬらりひょんには一手二手先をいかれていた。

 おかげで、騙されたことは何度もある。


 だから、確かめるなら直接この目で、という結論に至ったのである。


『まあそれも、杞憂であったようでありんしたがね……』


 フウマから害意はまったく感じない。

 ミミ子からの報告にあったように、あの強大な存在は妖怪達にまったくの無関心。というより、その存在に気付いてすらいないのだろう。


「ブル!」


 そんな玉藻の心配なぞ知ったことかと、フウマはどんちゃん騒ぎに参加していいかと聞く。

 するとミミ子が『行ってよいぞ』と言い、「ヒヒーン!」と飛び出して行った。


 その後ろ姿を見て玉藻は、ふとフウマを操れるのではないかと考えてしまう。

 これは興味本位だった。

 試しに妖力を伸ばして触れてみると、


『ッ!?』


 この世の物ではない、世界を滅ぼすような存在達に邪魔をされてしまった。


 口元を押さえて顔を青くする玉藻御前。

 強大な存在の眷属もまた、強大な存在なのだと悟るのだった。

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― 新着の感想 ―
二巻も楽しみにしてますね
2巻も買うよ
興味本位で操れるのかなー?でちょっかいかけるからなんて……過去本当に反省してるんか?ww
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