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奈落71(世界樹30)改

 ここまで、都ユグドラシルの案内を何度もされているのだけれど、終わる気配が無い。


 守護者の本部から始まり、錬金術師の工房や俺が働いているような食糧プラント。都ユグドラシルの建設を担う企業や、娯楽を提供している企業。暗部と呼んでいいのか分からない、反世界樹思想を持つ者を捕まえる部署などなど、いろんな所を案内してもらった。


 正直、ここに住んでいて反世界樹思想に染まる奴らの気持ちが分からない。ユグドラシルの守護が無ければ、ここにいるほとんどの奴らは生き残れない。それを理解していないのだろうか?


 まあ、どこにでも危険な思想をする奴らはいるもんだ。

 気にしても仕方ないな。


 そんで今回だが、なんかいつもと様子が違う。


 オベロンの姿がおかしいのだ。

 いつもは小さいのに、何故か今回は俺よりも身長が高くて顔立ちも凛々しくなっている。更に髪も青色に変わっており、背中の羽が天使の翼のように変わっていたのだ。


 もう別人だって言われても信じるレベルだ。


『ハルト殿、オベロン様が急用で来れなくなったので、今回は私が案内致します』


 やっぱり別人だった。

 つーか、よりにもよってオリエルタかよ。

 え? これって嫌がらせですか?


 何でお前が来るんだよ。そう不満気に尋ねると、『オベロン様から頼まれました』と答えた。


 あの野郎、絶対わざとだな。


 オベロンに怒りを覚えつつ、オリエルタに今回はお休みでと伝えて戻ろうとする。でも、オリエルタは俺を掴んで、


『お待ち下さい。ユグドラシル様の準備も、もう間もなく完了いたします。あちらに戻る前に、是非、都ユグドラシルの良い所を知って欲しいのです』


 もう十分分かってるから。と言うと、


『オベロン様に案内されたのは、職場ばかりだったでしょう? では、観光に良い場所をお教えします』


 嫌だよ。何でテメーとデートみたいなことしないといけないんだよ。地獄じゃねーか。


 せめて女性連れて来い、話はそれからだボケ。


 そんな俺の気持ちを無視して、オリエルタは引っ張って行く。周囲の視線もあり、強く抵抗することも出来ずに連れて行かれてしまった。

 ったく、たくさんの視線を受けると、動きが鈍ってしまう自分が恨めしい。



 オリエルタが案内する場所は、一般の住人が世界樹にお祈りする所や、最も高い位置にある浮島、使い魔を育成する施設に、エンタメが盛んな地域、カップルが訪れる名所などなど、くっそどうでもいいような所だった。


 テメー、カップルからの視線が痛かっただろうが‼︎


『すみません、私の好きな場所があそこだったので……』


 恋人同士が訪れる場所があった。

 そこは、都ユグドラシルにしては古めかしい造りをした建物で、広い湖を見下ろせる場所でもあった。

 湖には世界樹が反射しており、そこで二人の写真を撮ると永遠に結ばれるそうな。


 そこには当然、恋人同士しかいなくて、男だけの俺達は注目を集めてしまった。

 特にオリエルタの顔は知られていて、いろんな思いを秘めた視線が注がれていたのだ。それでも、気にした様子もなくオリエルタは立っていた。


 だから、少しだけ気になった。

 多くの視線の中には、怒りや憎しみの感情が込められた物があったから。


 ……なあ、平気なのか?


『ええ、本来ならもっと早くにこうなるべきだったんです。それが、罷り間違って英雄の父と呼ばれるようになってしまった。貴方が呼ばれるはずだった名を、私は奪ってしまった……』


 悪意ある目を向けられるよりも、苦しそうにしているオリエルタ。

 よほど英雄の父と呼ばれるのが嫌だったと見える。


 まあ、そりゃそうだよな。何だよ英雄の父って。ダサくね? 子供は活躍してるけど、本人は生んだだけで何もやってないってことじゃん。そんなダサい二つ名で呼ばれたら俺だったら引き篭もってるね。ていうか、ここから逃げ出してるって。どんな罰ゲームだよって話だ。


 こいつも辛かったんだなぁと少し同情しようとして、こいつヒナタ捨ててんじゃんと思い直して、ざまぁな気持ちになった。

 気分も良くなったので、話を変えてやろうと思う。


 なあ、ヒナタの母親ってどんな奴だったんだ?


 もうちょい別の話題があっただろうと、かなり後悔した。

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