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奈落49(世界樹⑧)改

 森に到着した頃には、フウマと天使が輝きまくっていた。


 天使の猛攻を必死に凌ぐフウマ。

 やられてばかりではないと反撃するが、その全てを避けられ、防がれてしまい効果を成さない。


 スピードで言えばフウマが圧倒的に上のはずなのだが、どうにも動きが遅いように感じる。立派なサラブレッドの頃の速度があれば、楽に振り切って、反撃するのも簡単だっただろうに、今はあの頃のキレが無い。


 残念だ。

 所詮は豚か。


 それでも何とか食らいつき、攻撃に見舞われながらも、治癒魔法で回復して、良い勝負と呼べる位にはなっており、見せ物として悪くなかった。


 それが暫く続き、飽きて来たなと思い始めた頃、突然変化が起きる。


 フウマが変身したのだ。

 名馬と呼んで差し支えない立派なサラブレッドに姿を変えたのだ。


 それを見て、俺は嫉妬した。

 何でお前だけ元の姿に戻ってるんだよと、先ずは俺からだろうがいと激しく嫉妬した。


「リミットブレイク」


 別にフウマの姿にムカついて使った訳ではない。

 サラブレッドになった今のフウマは、これまでにないほど強く、荒々しい魔力を放っていた。

 それこそ、あの天使を殺し兼ねないほどの強さだ。


 光が走り、雷鳴よりも速く天使は地面に叩き付けられた。


「リミットブレイク・バースト」


 激しく嘶くフウマの姿は、まるで神獣の麒麟を彷彿とさせる。

 怒り狂い、まるで全てを破壊しかねない様子である。


 そして、その怒りをぶつける矛先は、叩き付けられて瀕死の天使に向かう。


 急いで向かっているが、正直、間に合うかはどうかは微妙である。

 仕掛けたのがフウマからとは思いたくないが、可能性が九十パーセントくらいありそうなので、死なせたくはない。まあ、間に合わなかったら、それでもいいや。


 そんな適当なことを思っていたのだけれど、何だかんだで間に合ってしまった。


 落雷のようなフウマの一撃を正確に予測し、振り下ろされた前足をガッチリと受け止めた。

 恐ろしいまでの負荷が体に掛かり、結構なダメージを受けてしまうが、それでも根を上げる程ではない。


 やり過ぎだ、バカ馬。


 黄金に輝くフウマを睨み付けると、フウマは正気に戻ったのか、その瞳に理性が戻る。

 俺はふっと笑い、正気に戻ったフウマを見て、風のハンマーで殴り飛ばされた。


 ピンボールのように弾かれた俺は、木々に衝突しながら吹き飛ばされていく。


 おかしいな。

 フウマには理性が戻ったはずだ。

 だから主人である俺を攻撃するはずが……はずが……結構やられてるな、おい。


 これまでにもフウマから攻撃されているので、今更されても驚かないが、今度は一体どんな我儘で暴走しているのだろうか。


 風を操り、勢いを減退させて木の上に着地する。

 すると、前方の視界が急激に揺れ始め、途端に空気が爆ぜた。


 遠目から見ていたが、これは避け難い。

 視認し難い上に、フウマの魔力操作の能力が高く感じ取り難い。何とも厄介な魔法だ。

 俺がこれを使えるようになるには、相応の練習時間が必要になるだろう。

 やはり、風属性魔法だけで言えば、フウマの方が圧倒的に上手く使い熟している。


 空気の振動による攻撃から逃れた俺は、近くの木に飛び移ると、追って来る魔法に対して魔力の波を送り、全ての魔法を無効化する。

 来ると分かっていれば、無効化するのは容易い。

 風属性は負けていても、魔力の操作能力で言えば俺の方が上なのだ。


 だが、そうなると読んでいたのか、フウマは上空から高速で迫り突撃を仕掛けて来る。


 黄金に輝く馬のような何か。

 まるで伝説の麒麟のような姿のフウマが、その蹄で押し潰さんと落下して来る。


 それを見て、同じことしてんじゃねーよと思いながら、そろそろ終わらせようと合図を出す。


「ヒヒーン!!」


 するとフウマは一度動きを止めて、更に魔力を増して一際光り輝く。

 辺りを圧倒するような気配は、森で戦って来たモンスター達よりも更に強力で、その魔力の質も上を行っている。


 まったく、いつの間にこんなに強くなったんだよと悪態を吐きながら、俺は腰を深く落として拳を構える。

 お互いに武器の無い丸裸の状態である。

 条件は同じ、真正面から来い、叩き潰してやると視線を送ると、フウマは察したのか一気に加速する。


 目視するのも困難な速度、そんな動きで森の中に隠れて恐ろしいスピードで迫り来る。

 フウマは自ら纏う大気すら操っているのか、空間を切り裂く音も衝撃も無く、光だけが周囲を走って行く。


 本来なら、俺はその姿を見失っていただろう。だが、フウマは俺の召喚獣である。その位置は正確に把握している。どうなに動き回ろうと、俺とフウマの繋がりが何処にいるのか知らせてくれる。

 そして、それはフウマも同じ。


 さあ、来い!

 真正面から受けてやる!


 俺の意思を感じ取ったフウマが一筋の光となり、降り注ぐ。


 拳に魔力を込めて、光に向かってその拳を……振り抜く事はせずに、横に大きく飛んだ。


「ブッ!?」


 まさか避けられると思っていなかったのか、フウマは先にある木々を破壊しながら動きを止めようと減速する。


 バカめ!


 その隙を俺が見逃すはずもなく、止まろうとするフウマと距離を詰める。

 この野郎、卑怯だぞとフウマの目が訴えて来るが、そんなもん知らん。つーか、まともにぶつかれば双方無事では済まない。ならば片方が犠牲になるべきだろう。


「ヒヒーン!!」


 動きの遅くなった悲鳴を上げる馬面に拳を叩き込んで、その意識を刈り取る。

 安心しろ、殺しはしない。

 フウマもそのつもりはなかったようだし、偶の癇癪だろうとは分かっている。もしもやる気だったら、もっと風属性魔法で攻めて来ただろうし、ここら一帯が無事な訳がない。


 それだけの魔法をフウマは使える。

 じゃれ合い程度のぶつかり合いならば、そんな魔法を使う必要もなく、この程度の結末で十分だろう。


 気を失い、元の子豚サイズに戻ったフウマを小脇に抱えると、都ユグドラシルに戻ろうと飛び上がる。


 天使がまだ倒れているようだが、ここは放置した方が良いだろう。


 難癖つけられても困るからな。


 なんて考えていたからだろうか、なんか厄介な鳥がやって来ていた。


 その鳥はとても大きくて、とても高密度の魔力を持っていた。

 頭部には曲がった嘴があり、目が四つに毒々しい鶏冠がある。二対の翼に、尾は孔雀のような形をしているが、そこから落ちる液体が森を腐食させていた。


 腐食した森は広がって行き、葉は枯れてしまい木は朽ちて消えてしまう。それは、そこに住むモンスターも例外ではなく肉体が腐敗して死んで行った。


 ああ、こりゃ面倒なのが来たなぁと思いながら、準備をする。


 見た感じの強さは、森で現れた奴らに近い。

 だからこそ、容赦なくやるべきだろう。


「リミットブレイク」


 再びリミットブレイクを使って、魔法陣を展開する。

 展開するのは、速度上昇と爆発。

 石の槍を作り出し、顔面狙って撃つ!


 即座に動き出して、鳥の下、死角になっているだろう場所に移動する。


 上空で爆発が巻き起こる。

 俺の魔法が直撃して、鳥は怯んで甲高い悲鳴を上げる。しかし、大したダメージにはなっておらず直ぐにでも動き出すだろう。


 だから白銀の大剣を作り出し、狙いを澄ませる。


 一瞬の溜め。


 鳥の四つの目が危険を察したのか、激しく動いている。


「アマダチ」


 頭部が動き、四つの目と合うがそれも消えて無くなる。

 白銀の光が鳥を飲み込んで、全てを消し去ってしまったのだ。


 うん、なんかアマダチの威力が上がっているような気がするな。これも、俺が強くなっている証なのだろう。


 脅威が無くなったので、フウマを回収して都ユグドラシルに向かって飛ぶ。


 外からでは、都ユグドラシルの場所は結界の効果によって見ることは出来ないが、一度結界に触れたおかげでその魔力を感じ取れるようになっていた。おかげで、見えなくても何処にあるのかはっきりと理解できる。


 ニールがくれた端末を見ると、結界の外でもこっちだと進む道を示してくれている。なかなかに優秀な物のようだ。


 下に視線を向けると、女の天使がこちらを見ていた。

 何かアクションがあるかなと思ったが、特に何も無さそうなので、放置した。


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