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無職は今日も今日とて迷宮に潜る【3巻上巻8/25出ます!】【1巻重版決定!】  作者: ハマ
1.ダンジョン1階〜20階

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十六日目

 体重が増えていた。

 解せぬ。あんなに動いたのに何故増えるんだ。


 まあいい、少なくとも不健康でない事は分かった。

 ダイエットはボチボチやって行こう。


 それよりも今は、面接の準備だ。

 以前、履歴書を送っていた会社から、今日の午後1時から面接を行いたいと昨日連絡があった。

 急だなとは思ったが、中途で雇ってもらえるのならば、それくらい大した事ではない。


 俺は貸衣装屋に走り、ビッグサイズのスーツを借りた。


 これで準備万端である。



 面接を行う会社の前に来ていた。

 ホント株式会社。

 中小企業ではあるが、100年以上続く地域密着型の企業として、地元民に愛される会社だ。

 創業者は嘘が嫌いで、誠心誠意仕事に向き合い、人と人との繋がりを大事にしていた。嘘を言うと信頼関係を失う、誰も騙さないとの誓いからホント株式会社と命名されたそうだ。


 そう受付の人が念入りに言っていたので間違いない。


 失礼します。

 田中ハルトです。よろしくお願いします。

 はい、私の最大の成果は…。





 ピリッとした緊張感の中でも、和気藹々と面接は進んで行き確かな手応えがあった。

 全ての質問に澱みなく答えれたし、噛まずに言えた。


 でも落ちた。

 

 変化は履歴書の話に移ってからだ。


 貴方は我が社の社風はご存じですか?

 はい

 ではこの証明写真の人物はどなたですか?

 私ですが?

 …この証明写真はいつ撮られましたか?

 二週間前です。

 もう一度聞きます。この証明写真の人物はどなたでしょうか?

 …私です。太る前の私です。

 貴方は嘘を吐いている。人はたかが二週間でそこまで体重は増えません。我が社の社風を尋ねましたが、貴方は我が社に相応しくないのはお分かりですね?

 …嘘は吐いていません。

 私も嘘が悪いと言っているのではありません。ですが初対面の人を騙すような………。



 ……。





 喧しいんじゃおらー!!


 ダンジョン12階、岩に擬態したロックワームを叩き斬る。


 誰が嘘つきじゃボケー!!


 ビックアントとゴブリンを蹴り倒し、先に残りのロックワームを片付ける。


 テメーの薄くなった髪むしったろか!!


 離れた場所で擬態しているロックワームが、土の棘に貫かれて絶命する。


 潰れろクソ会社が!!


 近くの岩をロックワームと勘違いして殴り、拳を痛めた。

 二つに割れた岩から、魔力に反応してキラキラ光る魔鉱石が出るが、頭に血が昇りすぎて気付かない。


 それから暫く暴れると、疲れて動きを止めた。



 ホント株式会社の面接が終わると、その足で電車に乗りダンジョンに向かった。憂さ晴らしのためだ。

 何を言っても信じてもらえず、最初から雇う気は無かったのではないかと疑ってしまう。

 確かに写真と実物の姿に少しの乖離はあったかもしれない、今どき加工なんて当たり前なんだから見逃してくれても良いじゃないか。


 …ん?

 違うな、俺はそもそも加工なんてしていない。怒りすぎてごっちゃになっていた。


 そもそも、この体型になったのがいけなかった。

 やはり痩せなければ、色々と弊害があるかも知れない。



 ロックワームは全長1mの芋虫だ。体は周囲の色に擬態するカメレオンのような能力があるが、体はさほど硬くない。

 武器は鋭い牙で、擬態している所に獲物が近付くと一瞬で噛みつき抉り取る。

 そんな恐ろしいロックワームだが、特徴を知っていれば見分けるのは容易い。無骨な形で擬態していれば分かり難かったのだろうが、何故か球体のように丸くなって転がっているのだ。


 とりあえず、移動する先から丸い岩を攻撃していけば不意を突かれる事はない。


 そのはずなのだが、今、目の前でロックワームに噛みつかれている人を発見した。


 何やったんだこの人?


 頭から食い付かれており、手がぶらんと垂れ下がっている。

 つまり、その命は消えかけていた。


 大剣でロックワームを両断して、食われていた人物を助け出す。見た感じ二十代後半の女性で、分厚いヘルメットを装備しているが、顔の部分は剥き出しとなっており、ロックワームの牙が刺さったのかズタズタになっている。


 俺は治癒魔法を使用して治療に取り掛かる。


 フルパワーで治癒魔法を使用して治療したおかげか、顔に目立った傷は残っておらず治療の成功を確信する。

 そこで気付く。

 この人、息してないな。


 どどど、どうしよう!?


 AED?人工呼吸?心臓マッサージ?

 AEDなんて無いし、人工呼吸や心臓マッサージの経験は無い。

 それでも、やらなければこの人は死ぬ。


 俺は覚悟を決めると、治癒魔法を使いながら心臓マッサージと人工呼吸を行う。


 どうか訴えられませんようにと願いながら。


 頑張った。

 よく頑張った俺。

 蘇生行為は無事成功し、女性は目を覚ました。


 最初は何が起こったのか理解出来ていなかったが、見た状況をそのまま伝えると、土下座せんばかりの勢いでお礼を言われた。


 ここではお礼が出来ませんのでと言われて、後日会う約束をして名刺を貰った。


 去って行く女性に送って行こうかと声を掛けるが、大丈夫と言って去って行く。


 こうして取り残された俺は、貰った名刺に目を向けた。



 ホント株式会社副社長

 本田 愛

 ×××−×××−×××



 どうしよう。



ーーー


田中 ハルト(24)

レベル 11

スキル

地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈 魔力操作 身体強化 毒耐性 収納空間 見切り

装備  俊敏の腕輪 不屈の大剣

状態  デブ(各能力増強)


ーーー

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― 新着の感想 ―
[一言] 状態:デブ の無慈悲感(_:
[一言] 「AEDなんて無いし、人工呼吸や心臓マッサージの経験は無い。それでも、やらなければこの人は死ぬ。」 見ず知らずの人とキスはできないね。病気がうつるかもしれないからね。昔ながらのうつ伏せにし…
[良い点] こんなバカ雇いたく無いw
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