表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/348

百六十二日目

 久しぶりのダンジョンに興奮して、昨日は長居してしまった。

 22階まで行き体の調子を確かめていたのだが、どうにも体が重く感じる。

 それでも十分に動けていたので、今日も調整すればそれなりに行けそうな気がする。まだ風属性魔法のスキルも、上手く扱えていないので、今日あたりに練習するつもりだ。


 さて、これから不動産屋に行こうとアパートを出る。

 来年の三月までに退去しろと書いてあったので、遅くとも4月には工事が始まりそうだ。

 それまでに新居を決めて、引越ししなければならない。


 スマホで近所の不動産屋を検索すると、駅近くにあり、ぶらぶらと徒歩で向かった。



 よろしくお願いします。

 間取りは1Rから1LDKで、はい、トイレ風呂は別で。

 予算ですか? そうですね〜三万円から七万円位でありませんか? あれだったらまだ出せますけど。

 駐車場は要らないです。 はい、車持ってないので。

 不便じゃないですか? うーん、もう徒歩に慣れたんで、特に不便は感じないですね。

 あーこの値段だと駅から離れるんですか。

 車があった方が良いと。

 もう少しないですかね?


 えっ? 職業ですか?


 無職ですね。今はダンジョンで稼いでますけど。


 ……ない? 貸せる物件が無い?


 どゆこと?



 不動産屋に話を聞くと、なんでも探索者をやっている人には貸さないでくれと、物件のオーナーに頼まれているらしく、探索者に貸せる物件が無いそうだ。

 市営住宅ならば紹介出来るが、1Rや1LDKの間取りは無いらしい。更に駅から離れているようで、車はあった方が良いと言う。

 どこか貸してくれそうな所ありませんかと尋ねると、ギルドで探索者向けの物件を取り扱っているそうで、そちらに行かれてはどうかと教えてくれた。



 という訳でギルドに来ているのだが、建物の扉が閉まっていた。

 なんでも、ギルドのシステムにトラブルが生じたらしく、本日は十分に業務を行えないと判断したようだ。

 ギルドの前には仮設テントが設置されており、モンスターやダンジョンで取れた素材の買取りのみ行われている。

 本来ならば、これも中止したかったのだろうが、探索者達の生活も掛かっているので、止めるに止められなかったのだろう。


 俺は素材買取りを行っている人に、システムの復旧はいつ頃になりそうかと尋ねると、早ければ明日にでも戻るらしい。


 そうですかと頷いて、俺はダンジョンに向かった。




 ダンジョン22階


 サイレントコンドルに向かって、風属性魔法を使い攻撃を仕掛ける。

 風の刃が手から飛び出ると、そのまま突き進み、サイレントコンドルに当たる事なく空中で霧散した。


 また風の刃を使い、サイレントコンドルに向かって飛ばす。

 それも外れて、空高く舞い上がり霧散した。


 風の魔法は使いやすい。

 攻撃力は地属性魔法に比べると劣るが、発動が早く視認し難いというのは、使われるとかなり厄介な魔法だ。

 それは使う側からすれば強力な武器となるのだが、どうもサイレントコンドルは風属性魔法を感じ取っているようで、あっさりと避けてしまう。

 おかげで、こちらに気付いたサイレントコンドルは、急降下して襲って来る。


 俺は、自身を中心に竜巻を発生させて、サイレントコンドルを巻き込もうとするが、風の流れを読んだのか、サイレントコンドルは強襲をめて旋回を始めた。

 どうやら、流石のサイレントコンドルも竜巻は突破出来ないようで、周囲を旋回して様子を窺っている。


 ならばと、更に竜巻の威力と範囲を広げて、旋回していたサイレントコンドルを巻き込んでやろうと更に魔力を込める。



 そして上空にいる。



 いや、使った後で気付いたのだが、威力を上げると竜巻は分厚くなり、俺も巻き込まれて上空に投げ出されたのだ。

 咄嗟に魔法を解除した頃には、上空で無防備な姿を晒しており、サイレントコンドルに見事キャッチされてしまった。


 サイレントコンドルの鉤爪が腹に突き刺さり、激痛が走る。


 サイレントコンドルが、100kg以上の重量を持ち上げ飛行可能なのは知っていたが、まさか自分が連れ去られるとは思ってもいなかった。


 ……うん、サイレントコンドルと一緒の空の旅は中々悪くない。


 なんて言うかボケ!


 風の刃で足を切り裂くと、足が開き解放される体。

 神鳥の靴の機能で、一歩二歩と空中を蹴り、不屈の大剣でサイレントコンドルの首を落とした。


 落下する俺とサイレントコンドル。

 このままでは地面に衝突して、死にはしなくても重傷は間違いなく負うだろう。

 だから風属性の魔法を使い、空気のクッションを作り出し衝撃に備える。



 そしてまた連れ去られた。


 えっ?となり上を見ると、別のサイレントコンドルに捕まっていた。


 上空に投げ出された豚を狙って待機していたのは、何も一羽だけではなかったようだ。


 ならばとまた倒すのだが、またキャッチされてしまう。


 なんでだと狼狽えて周囲を見ると、十羽以上のサイレントコンドルが俺を狙って旋回しているのだ。


 結局、一時間以上の空の旅を楽しみ、大地の偉大さを改めて考えさせられる探索となった。


 今度からサイレントコンドル見かけたら、確殺しようと心に決めた。

18時幕間投稿

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おもしろい(´・ω・`)
[一言] こんなん笑うやろ
[一言] 「来年の三月までに退去しろと書いてあったので、遅くとも4月には工事が始まりそうだ。それまでに新居を決めて、引越ししなければならない」 アパートに居住している人にも居住権があるから、立退料と…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ