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生命枝計画  作者: 子畑
NegaResurrectionPLR
19/35

P19 裏切りのブラックブック

挿絵(By みてみん)



「ブラックブックは味方ではないのですか?」


 彼女の疑問の回答は、おそらくNOだ。

 彼らとは少なくとも敵対関係にはないが、決して味方というわけではない。


「少なくともブラックブックと魔女が共闘することはあり得ない、そうでしょ」


 基本的にはyesである。

 ただ例外もある。


「いや、ブラックブックは世界の理であり、新しい世界そのものともいえる。一方の魔女はいわゆる世界のバグではあるが魔女もまたこの世界の内的な要素から生まれたバグだ。メイドインリザレクション。だから魔女に関係する物語を持ったヤツらに与するブラックブックもいる」


 それがやつだ。 


「数少ない例外だ」


 10年前くらいだったろうか。

 世界の多くがすでに何らかの物語を帯び始めている頃だった。

 8回目となったリザレクションAIの起動実験に際しヤツらは現れた。

 その時はスクランブルした魔女狩りハウンドが全て落とされ、エンダー&リザレクションズAI研究所が襲撃された。

 全てが始まるより前に恐らく真っ先に動いた2体の魔女、ニューホープとストライクバックエンパイア。

 そして裏切りのブラックブック「魔女戦争」。

 この先に待つ結末を予見していたのか、イニシアチブを取り確実にこちらの出鼻をくじいた。

 以降連中の消息は絶たれているが、奴らは確実にタイミングを狙っている。


「そしてその襲撃の影響は今なお残っている。仕事は終わらないし、俺は定時に上がって酒を飲むこともできない」


「それはあなたの怠慢ですよビッグハット室長、そのせいで私がここにいるんです」


「解ってる、やる気が出ないんだ。たぶん燃料が切れてると思うんだけど、酒飲んでいいかな」


「駄目です」


 それにあの女が持ってきた預言書。

 名前をネガリザレクション文書と言うらしい。

 今も少しずつページが蘇っているあの本にはまだ見ぬ魔女の記録が増え続けている。

 アレは何時の記録なのか、預言書と言うからには未来の記述なのだろうか。


「あー……俺の目算ではそろそろポストヒューマン戦争が起こる予定だった。既存世界から脱却し新しい世界規範へと乗り換えて新規の上位世界は完成するはずだった。そういうつもりだった。でもすぐにそうはいかないらしい。シナリオを……歴史を書き換える必要がある、くそったれの魔女たちを駆除する必要がある、奴らを次の人類に据えるワケにはいかないからな」


「彼女らはバグだから選考対象にはならないと?」


「はき違えるな。いや、口が悪いなそれは名前に騙されている。俺たちの目的は別に次の人類にふさわしい奴らを選ぶことじゃない、次の人類、超人は既に決められている。俺たちの役割はその次世代への継承を円滑に行う事、そのためにジーニアス10を中心に組織され活動している出来レース監視団が俺たちだ。本来だったらヒトの役割はもう終わっているハズだったんだ。俺たちは超人たちの世界に住む一介の自然動物に戻る予定だった。上位者の愛玩動物、あるいは物語の登場人物、モブ、ゲームのコマでもいい、いくらでもある盤ゲームのピース、ただの背景。この星の運営者なんてものを気取る必要もなく何も背負わないそんなただの水とタンパク質の塊、普通の生き物になれるハズだった。ただまだすべては終わっておらずどこかで誰かが邪魔をしている」


「それが魔女だと?」


「そうは言っていない、可能性は高いが……決めつけてはいない、ただその可能性は十分にある」 


 魔女連中は何を思って妨害をしているのか。

 既存文明や規範の破壊、次世代種への台頭、単なるレギュラーへ恨みを募らせたイレギュラー。

 そのどれもがあり得るように思えた。

 魔女も組織立った集団とは思えない、その一部が散発的に抵抗しているだけかもしれない。

 それとも人類がまだやれると、そうとでも言いたいのだろうか。


「俺だって別にもう人類種が終わったコンテンツであるなんてことを声高々に主張する気なんてのは無いんだ、ただ単純にそれ以上に優れたものが大量に出てきた結果自然とそれに移っていったというだけで、主要な機種がすげ変わっただけだ。ガキの頃モバイルフォンはスマートフォンに変わり大学を出るころにはニューロランナーに切り替わった」


「何の話です?」


「だから俺にもまだできる事があるって事さ、あの女の預言書を見てみろってなんで上にマグを置いてるんだ、バカ、なんで本の上にマグを置くんだやめろ」


 まさしく人類は愚かだった。


「そのネガリザレクション文書の3ページに書かれているだろう、君も私のページを集めてページリーダになろうって」


「そうですね」


「だから俺はそのページリーダーってやつになろうと思ってな。預言書を拾い集めて世界を導く仕事だ、こんな椅子にふんぞり返ってるよりよほど夢のある仕事だ」


「なれるんですか、それ?」


「それは解らん、解らん方が夢があるからな。さぁ憂鬱だがそろそろ仕事を始めよう、未来のために忌まわしき魔女と裏切りブラックブックを滅ぼす。大切な……夢の無い仕事だ」








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