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「じゃあ行こっか!」というアンネの言葉から二人は学内を歩き始める。
「あれは何かしら?何かすごい圧を感じるのだけれど」
「あれは魔法工作研究部の成果物……だったと思います。ただなぜこのサイズで作ったのでしょう?邪魔になると思うのですが」
そこには少し見上げるほどの大きさの像が立っていた。
その石のおじさんはローブにとんがり帽を被り、右手から炎を出している。そしてその表情は無表情のようで少し寂しそうな様子である。
ただ、なぜこれが扉の前に置いてあるのかは二人には全く見当もつかなかった。
「聞いてみたいのだけれど、授業が終わってすぐだからまだ誰もいないわね」
「部員が来られるのを待たれますか?」
「いえ、いいわ。次のところを見に行きましょう」
少し寂し気な雰囲気をした像に背を向けるとそのまま二人は歩きだす。
そうして歩きながらアンネはベルデに問いかける。
「ベルデちゃんは入りたい所ってある?私に気にせず、好きなところに入っていいわよ」
「いえ、私はお嬢様が入るところに在籍いたします」
「もー、ベルデちゃんのしたいことを聞いてるのに」
「お嬢様がしたいことをサポートすることが私のしたいことですので」
「もう、ベルデちゃんったらかわいい事言うんだから」
そんな会話をしつつ二人はあまり人がいない食堂にたどり着く。
「ずいぶん歩いたわね、少し休憩しましょう。ベルデちゃんは何飲む?」
「では、紅茶を。お持ちしますのでお嬢様は席でお待ちください」
「ありがとう、ベルデちゃん」
二人がお茶を飲んでいると入り口が少し騒がしくなってきた。
そちらに視線を向けると、アンネは何かを感じたように目を見開く。
「あの人すごい魔力ね。それにとても澄んだ色をしているわ」
そうして見ていると、当の赤い髪の少女とぱちりと目が合う。
そしてその少女はこちらに向かって歩いてくる。
「一年生かしら?何かこちらを見て話していたけれど、困りごとかしら?」
「ええと…」
「ああ、ごめんなさいね。自己紹介がまだだったわね。私はこの学園の生徒会長のアイリーン・アイルフォーレンです。よろしくね。」
(アイルフォーレン。貴族家のトップね。めんどくさいのに当たったかしら?ややこしい事にならないといいのだけど)
「私はアンネリーゼ・エルメストと申します。こちらは私の従者のベルティア・ドーラです。よろしくお願いします」
「あら、あなたがそうなのね。話は聞いているわ、3年からの編入は大変でしょう。特にベルティアさんの年齢は1年生と同じなそうですし。何かわからないことがあれば何でも聞いて頂戴ね?といっても、もう半年くらいで生徒会は引退なのだけれどね」
「はい、ありがとうございます。ところで先輩はどうして食堂へ?」
「今日は料理担当の方とお話があるの。もしかして生徒会に興味ある?」
「いえ、不思議に思っただけです。生徒会は編入したばかりなので…」
「それもそうね。でも興味が出たらいつでも生徒会室に来てちょうだい?アンネリーゼさんは魔法も優秀なようですし歓迎するわ。」
「ありがとうございます」
そんなやり取りをしていると、入り口のほうから「会長そろそろお時間です!」という声が聞こえてくる。そちらを見ると生徒会と思わしき人たちがそろっていた。
「呼ばれてしまったわ、それでは失礼しますね。また会いましょう。アンネリーゼさん、ベルティアさん」
返事を聞く前に行ってしまったアイリーンを見送って、アンネは息をつく。
「はぁ、びっくりしたわね。というかさすが会長なのかしら?ベルデちゃんのことも知っていたみたいだし」
「はい、私も少し驚きました。これは固有魔法も知られてしまっているのでしょうか」
「ベルデちゃんはそうかもしれないわね。さすがに私のまでは知られていないと思うけれど。さすが公爵家、油断ならいわね」
(知られると面倒なことになりそうね)
「ところでお嬢様は生徒会には入ら「入らないわ」……そうですか。お嬢様は何かやりたい部活動はございましたか?」
アンネの食い気味の否定に驚きつつもやりたいことを聞いてくるベルデに、少し意外そうな顔でアンネは答える。
「そうね、今のところ部活はしなくていいかしら。3年がいきなり入ってきてもみんな困っちゃうだろうしね」
「そうですか」
「でも魔法陣学で少しやりたいことがあるから、ベルデちゃん手伝ってくれる?」
「もちろんです、お嬢様」
そういって二人は微笑み食堂を後にし、帰宅の準備をするのであった。