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プロローグ


 薄暗い森の中で少女が二人、土砂降りの雨に打たれ続けていた。



「ねぇ嘘でしょ。だめよ、だめなの。あなたじゃないの。ちゃんと立って、ちゃんと動いて。ちゃんと、ちゃんと……」


 頭が回ってない。ただ腕の中のベルデはどんどん弱っていくのが見て伝わってくる。魔力の動きがだんだんと少なくなっていく。

 嫌、嫌だ。目につく水が邪魔で仕方がない。どうして、どうして私は何もできないの。

 死ぬのは私の役目のはず、あなたじゃないの。ねぇ。


 ベルデはそんな私の顔を見て不安そうにした後、微笑む。


「アンネ様がご無事なら、いいのです。あなたが、幸せなら、わた、し、も、、」

 

 腕の中の少女はあどけない顔でどことなく幸せそうな表情で、自分のすべてを流しだす出すように言う。


「違うの。私はね、もうあと数年もないの。だからだめなの。あなたじゃなきゃだめ。私じゃなくあなたに生きて欲しいの。あなたが幸せになるの。ねぇお願いよ。私の、主人の一生のお願い。あなたにしか出来ないの。ねぇ、ベルデちゃん。お願いよ、、、」

 

 彼女は腕の中の命がどんな結末をたどったか、どうなったのか、そのすべてを分かっていながら、それでも縋り付くように何度も何度も言葉を紡ぐ。森に、雨に、言葉が吸い込まれていく。

 いったい何度言葉がこだましただろうか。少女は顔を歪ませ、掠れた声を振り絞って言葉を発する。


「待って、待ってよ!私を置いてかないで!一緒に連れてってよ。ベルデ、ちゃん、、」


 口何を言ったのかわからなくなるくらい言葉を繰り返す。視界がぼやける。頭がくらくらする、痛い、苦しい。だめ、もう、意識が…




      ※     ※     ※    ※



「嘘、だろ。なんだよそれ」


 急いで森を駆けてきた少年は、目の前で起きたことが信じられなかった。


 アンネが腕の中のベルデに話しかけている。

 それを見てもう助からないんだと悟ってしまった。悔しかった。もう死なせないと誓ったはずなのに。自分は何も変われていない。あの時の弱い自分のままだ。

 心の底が冷たくなっていくのを感じながら、見ている景色が何かおかしなことに気づく。ここが森であるのにその色が灰色であることに。


 泣いている彼女の周りがどんどんと灰色に侵食されていく。土が地面が木が森が、だんだんと灰色に染め上がって、生気を感じられなくなっていく。まるで時が止まったかのように。


「石?石が広がっているのか?なんで、誰が!」


 周りを気にする間もなくアンネが倒れ、急いで駆け寄る少年。


「大丈夫か、おい。おい!…早く、連れてかないと」


 少年はアンネと冷たくなって動かないベルデを抱え森を駆け出して行った。

 


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