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第15話 報酬の力

「と、いう訳で」


「何がと、いう訳で、だ」


三日後。再びリゼルの家にやってきたオスローとニノンは、特になんの遠慮もなく家に入り、ミアとセリに癒され、そして席についてそう言った。言っておくがここは二人の家ではない。


「お父様から許可を貰ってまいりましたわ。一ヶ月後まで期間を伸ばしてくださるそうよ!」


「そうなの!? 嬉しいわ! 一ヶ月もあなたと一緒にいられるのね!」


きゃあきゃあとはしゃぐリゼルを眺めながらオスローが少しだけ、ほんの少しだけ微笑む。ずっと彼と一緒にいて、ずっと見ていた人でないと分からないほどの表情の変化だったのに、リアは何故か気がついたようだ。そんな彼を見てにっこりと笑った。


「あら、でもニノン」


「どうかなさって?」


はっとなにかに気がついたように、リゼルは笑うのを止める。


「他国っていってもどれだけの距離があるのかは分からないけれど、一番近い国でも結構な距離があるんじゃないかしら? 三日で往復してきただなんてあまりにも速くない?」


リゼルはフォルカ王国の王女で、国内の権力者なんかはだいたい記憶しているが、ニノンのことは知らない。それらしき家も心当たりがない。つまり、ニノンはフォルカ王国の出ではない。セルゼデートとフォルカは隣同士で、一番近い国だが、馬で往復しても三日は必ずかかる。その次にこの国から近い国に行って帰ってこようと思ったら、少なくとも五日はかかるだろう。だがニノンはにっこりと笑顔で答えた。


「もちろん、エルミュールまで使者を休まず馬で走らせたらからですわ。三日で戻ってきてくれたんですもの。報酬は弾みましたわよ?」


「エルミュール!?」


あまりに驚いて、リゼルは思わず大きな声で聞き返した。エルミュールといえば、ここセルゼデートの隣の隣の王国。馬で往復七日はかかる場所である。因みに隣の隣、と言ってもフォルカの隣ではない。反対側だ。


「た、大変だったでしょうね、使者の方……」


そんな距離を三日で往復してきた使者に感心しながら彼女がそう言うと、ニノンはきょとんとした顔を返した。


「わたくしが差し上げた報酬を見て、疲れなど吹き飛んだと言わんばかりに嬉しそうに帰っていきましたわよ?」


現金な使者である。


「そうだ」


それまで黙って二人の会話を聞いていたリアが、急に口を開いた。みんな一斉に彼女の方を振り返る。


「せっかくニノンちゃんが長くいられるようになったんだもの。またみんなでどこかに遊びに行けたら楽しそうだわ」


彼女はふわりと微笑んだ。ニノンの心がときめく音が聞こえた気がする。


「なんて素敵なんでしょう! わたくし、大賛成ですわ!」


一番にその提案に食らいついたのはもちろんニノンだ。モスグリーンの瞳を輝かせてリアの手を取る。


「わたくしね、セルゼデートに来たらぜひ行きたいところがありましたの!」


「まあそうなの?」


ぜひ行きたいところ、と聞いて今度はリアが彼女の手を握り返す。


「海! に、行きたいのですわ!」


とてもきらきらした表情で、彼女は言い切った。



「……海……?」


少しだけ眉間にしわを寄せて、オスローが低い声で呟く。どうやら意外だったようだ。


「そうですわ。 前に来た時はお母様がいらっしゃったから、私のしたいことが何も出来なかったのですもの」


頬をふくらませ、彼女は不服そうな顔をする。


「エルミュールの海はこの国より綺麗ではないし、あまり整備されておりませんの。ですからエルミュールで海に行っても何も出来ないのですわ」


確かにそうだ、とリゼルは頷いた。セルゼデートの海は、底が透けて見えるほど綺麗なのだと聞いたことがあったからだ。フォルカの海も綺麗だが、セルゼデートの海も悪くない。そう思ったのか今度はリゼルが、リアとニノンの手の上に自分の手を重ねた。


「私も行きたいわ!」


さて、三人が賛同した。残るはオスローだけだ。


「そのような期待の目で見られても仕事が……」


「これも仕事だと言えばよろしいのですわ。誰も反論しませんわよ」


言い訳のような真実のような何かを口にしようとしたオスローを素早くニノンが遮る。


「しかし……」


「客人の要望も聞けませんの?」


「お前のは要望ではなく我儘だろう……」


諦めたように、彼はため息をつく。ニノンは一切譲らない様子だ。彼が折れるしかないらしい。


「……仕方がないな」


彼はもう一度、大きくため息をついた。


「特に重要な仕事がない一週間後ならいいぞ」


「ありがとう近衛騎士くん、あなたがいてくれると心強いわ!」


リアが、とても嬉しそうな顔をオスローに向けた。


「そうと決まれば早速予定を立てませんこと? 一週間しかありませんのよ」


「そうね。どこなら行っても大丈夫なのかしら?」


再び三人で話が進み始める。どこからか羊皮紙を取り出してきたニノンは、リアの羽根ペンを借りて書き留めだした。


「オスローが直接統治している領地に、とても綺麗な街がありましてよ。そこはいかが?」


「確かにそこが一番かもしれないな。治安も良くて安全だ」


なんだかんだ言ってオスローも、リゼルとどこかに行けるのが楽しみなのかもしれない。

この四人で遊びに行ったら絶対楽しいなと思ってこうなりました。遊びに行きます。海に。羨ましい。(いや私海怖いんで海が羨ましい訳では無いんですけど)


次回の更新は少し開いて4月4日の予定です!

それまでは別の作品を更新してるので良ければ〜

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