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悪魔の誘惑! やっとそれっぽいのが出てきて安心

ちょっと短めになりましたがキリをよくするため投稿。

 悪魔のサナタンと名乗った少女は俺が断りの台詞を口にする前に食い下がってきた。


 ここは俺の会ったことさえない曽祖父の住処のドア越し。

 ひ孫が勝手に上がり込んでいて、しかも二日目から悪魔に謎の勧誘を受けているなどと知ったらどんな顔をするんだろうか?


「ち、近場様、亡くなったばかりで色々とご不便をされているでしょう? あたしが今日一日手取足取り、天界での過ごし方をご享受して差し上げます」


「待て、君は悪魔なんだろう? 天界での過ごし方なんか知ってるのか?」


 悪魔なんてものは普段地獄にいるのではないだろうか。


「勿論です。あたしたちが働いている閻魔庁も基本天界にあるんですから。それにお教えするのは死者の心得ですから、場所はそれほど重要じゃないんですよ」


 そういえば、朝も昼も夜もないのにどうやって時間を知ればいいのか、とか割と悩んだ気がする。

 そんなことは次に会った時にミルクに全部聞けばいいと、なんとなくそう思っていたのだが……。


 ミルクは俺にとって死神である以前に死者としての先輩であるわけで。

 昨日が天使長との面会など特殊なことがあり過ぎただけで、明日はオフだというミルクにすべて聞けば解決だと思っていたのだ。


 と、ミルクは死神で、こいつは悪魔で……。

 俺はふと疑問がわいた。


「こ、根本的なことを最初に聞いてもいいか……?」


「はい、なんなりと」


「まず……悪魔って、何? 死神とか天使とは違うものなんだよな?」


「ああ、悪魔は天使や死神と違って現世で悪事を働いたものの魂を狩り取る業務についている者のことを言います。ですが、あたしはまだ悪魔に成りたてでして、召喚の仕事とか任せてもらえないので事務職や、今のように死者の方の案内を中心に業務を行っているわけですよ」


 この台詞を聞いて、物陰でこっそり盗み聞いている天使のララファが「うまいわ! 見事にあの男好みの台詞よ」などと小さくガッツポーズを決めていたのは誰も知らないことである。


 俺は、サナタンとやらの言葉を聞き終えて、とりあえず、ずっと言ってやろうと用意していた言葉を紡ぎ出した。


「俺はある死神にすでに案内してもらう約束をしていてだな。だから、君の案内は要らない。帰ってくれ」


 さて、ここで、「この台詞は想定の範囲内」なんてサナタンが心の中で思っていたことは俺にはまるで伝わらないので……、


 そこで、サナタンは大きな瞳にたっぷり涙を溜める。

「そ、そんなぁ……、ここで真彦様を案内させてもらえないと、あたし、上司にこっぴどく怒られちゃいますぅ」


 それで、俺の心はぐらりと揺れてしまった。

 このサナタンという少女、改めて見るとミルクほどではないが、物凄く可愛いではないか。


 化粧けの全くない幼い顔立ち、うるうるとこちらを見上げてくる大きな瞳。本気で困っているような真一文字に引き結ばれた口。そして、これぞ悪魔の証明といわんばかりのお尻の辺りから生えた黒い尻尾は力なくだらんと垂れ下がっている。


 それにいつの間にか、呼び方が「近場様」から「真彦様」に変わっている。

 ミルクの「真彦さん」もかなり良いが、「様」付けも素晴らしいものだ。特にこんな美少女から呼ばれると。


 よいのだろうか。

 俺はこんな可愛い子を困らせていいのだろうか?


 しかし、間もなくミルクとの約束の時間だ。

 相手をしている暇はないだろう。できればミルクよ、早く来てくれ。


「えーと、サナタン、と言ったか。本当にすまないが、俺には先約があるんだ。君が怒られるのは気の毒に思うが、その約束を反故にするわけにはいかない」


 俺は欲望を抑え込み、強い意志を込めて、言う。

 これでも分かってくれないのなら思い切ってドアを閉めるまでだ。


 すると、サナタンは今度はとうとう、瞳からぽろぽろと涙をこぼしながら、ぽつりぽつりと独り言のように、言った。


「う、うう……、そうですか、あたし、この仕事、実は楽しみにしてたのに。死者リストで真彦様のお顔を見たときから、ご一緒できるのを」


 ちなみにこの台詞はララファの仕込みであった。

 しかし、そんなこと、そのときの俺には判るわけもない。

 

 そして、俺の心はまたしても、グラン、と揺れるのだった。

 ヤバイ。

 これ以上は罪悪感が持たない。


 助けてくれミルク。俺は今、本当に悪魔の誘惑に屈しそうになっている。


 もう、顔を知らないひいじいさんでもなんでもいい、誰かこの場に現れてこの状況を打破させてくれ。


「そうだ、これからでなければいいんですよね? ではその死神の方との約束が終わったら、翌日以降あたしに天界を案内させてください!」


 そうすれば、上司に怒られずに済みますし、時間を気にしないで案内できます、とサナタンはさも最高のアイデアを思いついたとばかりに、パッと顔を輝かせる。


 うーむ。

 可愛いぞ。


 ミルクの時もそうだったが、女の子の泣き顔というものは男にとって凄まじい破壊力を発揮するものだが、それが笑顔に切り変わったときの魅力はもう言葉にしがたい。


 それに、ミルクと約束しているのはもうすぐ訪れる明日だけだ。

 それ以降を誰とどう過ごそうが勝手ではないのではないだろうか。


★★★★★★★★★★★★★


 その様子を覗き込み、聞き耳を立てていた天使のララファは感涙に咽びそうになっていた。まさかあそこまで完璧にやってくれるとは。

 今更ながら、あのサナタンとかいうミルクを彷彿とさせる如何にも臆病で男受けしそうな悪魔に目を付け、近場真彦をかどわかすように仕向けた自分の慧眼に感動すら覚える。

 思わず涙を流してしまいそうだ、自分への誇りで。


 あとは、死神のミルクと最後のデートを楽しんだ近場真彦に悪魔のサナタンを徐々に近づけていき、うまく仲を裂くように誘導していけばいい。

 完璧ね。完璧すぎるわ。

 さあ、サナタン、最後の一押しを叩き込むのよ!

 

 もう少しでコロッと行くんだから。


 そんなララファは、自分が隠れているのとは違う方向から腰に小さなコウモリの羽根がある小柄な黒ワンピースの少女が飛んでくるのにまるで気が付いていないのであった。


★★★★★★★★★★★★★


 俺の心はもうほとんど傾いていた。


 死んだら性欲が無くなる、と最初に言ったのは誰だっただろうか?

 ミルクだっただろうか?

 ララファだっただろうか?

 それともミカ天使長だったろうか?

 どちらにしても、そいつは嘘つきだと思う。


「そ、それなら……」


 と、同意の返事をしかけたときだった。


「真彦さーん! ちょっと早めですけど、来ちゃいましたよ!」


 胸から下げた水晶髑髏からミルクの声が響いた。


 そして、すい~っと、黒いワンピースに身を包んだ金髪碧眼の少女が俺と悪魔の少女が話している現場に降りてきたのだった。


次回、「SHU☆RA☆BA」

になるかどうかはまだわかりません。


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