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十四話

  俺はその日一日中、家でぐうたらしていた。


  もう七月の下旬になろうとしている。クーラーをつけていないと室内でも耐えられない。仕方ないので軽くシャワーを浴びた。シャツとズボンを脱いで洗濯機の側にあるカゴにぽいと放り込んだ。フェイスタオルを二枚持って浴室に入った。鉄の引っ掛け棒にタオルをかけてシャワーの蛇口をひねる。さあとお湯が出てきた。髪の毛をゆすいでからシャンプーを出して手で泡立てた。髪にまんべんなくつけて念入りに洗った。そうしたらシャワーですすぐ。リンスもして再びすすいでシャワーを止める。引っ掛け棒にあったタオルを取って濡れた髪の毛を拭いた。身体もボディーソープでざざっと洗い、シャワーで泡を洗い流した。その後、使ったタオルをゆすいだ。終わるともう一枚のタオルで水気を拭き取りドアを開ける。脱衣場に上がるとドアを閉めた。


「……ふう。さっぱりした」


  そう独りごちて使ったタオルも洗濯機の側にあるカゴにぽいと入れた。そうして持ってきておいた替えのシャツと短パンに着替えた。髪を軽くドライヤーで乾かして自室に戻る。そうしたらミニ龍の嵐月がお袋さんの月澪様と一緒にいた。これにはかなり驚いてしまう。


「……嵐月と月澪様じゃないか。一体どうしたんですか?」


『ちょっと気になっての。様子を見に来たのじゃ』


「はあ。わざわざありがとうございます」


『礼はいい。雄介。今日は怜さんの守護龍が後で来るそうだ。そのつもりでいてくれよ』


「怜の守護龍って言ったら。あの蒼月さんか」


  そう言うと嵐月が苦笑しながら頷いた。


『そうだ。雄介は蒼月が昔から苦手だったな』


「……まあな。蒼月は何かっちゃ、俺を目の敵にしていたからな」


『……まあ。今回は我慢してくれ。後で夕凪さんに頼んでお前の好きなプリンを買ってきてやるよ』


  俺は食い物で釣ろうとする嵐月をじとっと睨みつけた。


「嵐月。お前、夕凪ちゃんを呼んでどうするんだ。俺ん家の事に巻き込んじまうだろうが」


『仕方なかろう。私が買ってきた物を食べたって雄介にしてみれば。味気ないだろうが』


『……二人とも。ケンカはよすのじゃ!』


  ピシャリと月澪様に叱られた。そうしたら嵐月は背筋を伸ばして黙り込んだ。俺も口を閉じて月澪様を伺う。


『まあったく。お主ら、いい大人じゃろうが。少しはわきまえるがよいぞえ』


『……すみません。母上』


「すみませんでした。月澪様」


『……反省したんだったら良い。それよりもうそろそろ来るはずじゃが』


『ああ。そのようですね』


  嵐月が言うとびゅうと強い風が吹いた。キラキラと日の光を弾く銀の鱗が目に入った。どうやら、怜の守護龍の蒼月さんが来たらしい。


『……久しぶりだな。雄介さん。それに嵐月殿と月澪様』


『うむ。久しぶりじゃな。蒼月殿』


「おはようございます。蒼月さん」


『ああ。今日はちょっと知らせたい事があってな。それで来た』


『知らせたい事か。聞かせてくれないか。蒼月殿』


  嵐月が言うと蒼月は頷いた。ふうと息をついた。


『……実は。私が守護している怜が誰かによって呪われているようだ。それで雄介さんに頼みに来た次第なんだが』


「え。怜が呪われたって。蒼月さん。それ本当か?」


『本当だ。昨夜に熱が出てな。未だに高熱でうなされている』


  そうかと言うと蒼月はいつもの意地悪な態度ではなく真面目な感じで頭を下げてきた。


『……すまないが。怜の呪いを解いてやってくれないか。今、頼れるのは雄介さんくらいしかいない。この通り頼む』


「……わかったよ。怜の呪いを解くのは俺が引き受ける。ただ、一人だと大変だから。他の奴にも協力を頼んでもいいか?」


『それはかまわないが』


「んじゃ。話は決まりだな。早速、夕凪ちゃんにも呼びかけてみるか」


『……雄介さん?』


  蒼月さんがキョトンとした顔をしている。俺は御構い無しにスマホを取りに立ち上がった。机に向かい、スマホを手に取った。操作をして夕凪に電話をかける。プルルと電子音が鳴ってしばらくしたら夕凪が出てきた。


<はい。日野枝ですが>


「もしもし。夕凪ちゃんかな。俺、雄介だけど」


<あ。雄介さん。どうしたの。電話かけてくるなんて。珍しいね>


「……ああ。ちょっとな。唐突で悪いんだが。頼みたい事があって電話したんだ」


<頼みたい事?>


  夕凪は不思議そうに尋ねる。俺は苦笑いしながら答えた。


「実は。俺のはとこの怜って子がいるんだが。その子が風邪をひいたらしくてな。けどなあ。どうも怜の守護龍が言うには。誰かに呪われているって言うんだ。んで夕凪ちゃんにも呪いを解くのを協力してもらいたいって思ってな」


<……なるほど。それで私に電話したんだね>


「そうなんだよ。本当に悪いな。夕凪ちゃんも嫌だったら断ってくれてもいいんだぜ」


<ううん。そんな事は思っていないよ。わかった。雄介さんの頼みだったら引き受けるよ>


「……ありがとうな。この一件が終わったらラーメンでもおごるよ」


  冗談交じりでいうと夕凪はクスクスッと笑った。


<はい。ラーメン、楽しみにしてるよ。じゃあ、今から雄介さん家に行ってもいい?>


「いいぞ。あ、今俺一人だから。ろくな物出せないけど」


<気にしないで。私が何か持って行くよ。ちょっと一旦切るね。身支度をしたいから>


「……ああ。ごめん。じゃあ、また後でな」


<うん。バイバイ>


  夕凪が言うとそこで電話が切れた。俺も電話のオフボタンを押した。そうしてもうちょい詳しい話を蒼月さんから聞いたのだった。


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