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晴れ時々大男

▽▽▽▽▽





ドサリと音がした気がして振り返れば、大柄の男が倒れていた。



さっきまでは誰もいなかった筈だった。

しかも、私の家の敷地内だ。


不法侵入?

……の割に大怪我……?


あ、頭にコッ子(鶏)が乗った。

かわいそうに糞までつけられてる。


「えー…」

どうしよう。正直関わらないのが一番だ。


最近裏のステフおばあちゃんの家に泥棒が入ったとも聞いたし、


「このまま見なかった事にするか、裏山に捨ててくるか…」


心の中で考えていたことがどうやら口に出ていたようで



「すみません。泥棒でも悪いやつでもないので助けて下さい。血を流しすぎたせいで動けなくて、落ちてしまいました。すぐに回復すると思うので……」


身じろぎ一つ取らず、倒れ込んだ男が喋った。


思ったより声は若そうだ。


「えー…めんど…じゃなくて、えー、やだ…」

うたうっかり本音を言ってしまい、あからさまに男が落ち込んでるのが見てとれた。


「面倒って…、やだって言われた……」

涙声になりながらへこんでる。


「だって我が家には他人を介抱できるほどのスペースも蓄えもないし、第一に怪しすぎでしょ?……って、あれ?落ちたって言った?落ちた? どこから? 」


空を見上げても青い空が続いてる。

あーあっちの雲真っ黒だ。一雨来そう……。


王都に行けば珍しい飛行船などはある筈だが、そもそも落ちるものがない。


どこもかしこも平坦な田園風景が広がるばかりで、山も崖もここ一帯何もない。


ちなみに飛行船が通ればすごい音がするからすぐにわかるし、こんな短時間でどこにも見えなくなるような早い乗り物でもない。



大金持ちが空を楽しむための娯楽みたいなものだから、移動手段に使われるなら馬に乗った方が断然早い。


まぁ、落ちたのはいい。としよう。わかんないから。


だが

やはり介抱は勘弁してほしい。

どう見ても男は私の2倍はあるし、重くて家に連れ帰るのも厳しそうだ。


顔の方に回って見たけど、ヒゲがボーボーで髪も伸び切ってるのかボサボサで正直何日もお風呂に入った感じがしないし、ちょっと…いや、かなり臭い。


血の匂いもそうだけど汗とか、頭とか…………うわぁーきたなっ!!


無理無理無理無理!!!!



白い粉と油が浮いてるし、さっきうちの鶏のコッ子が落とした無残な忘れ物もびっちゃりついてる。


介抱したらアレを家に入れるのはものすごくやだ。


「礼金をたんまりしますので……どうか」


「お断りします」


「ひどい」


ハラハラと涙が流れる音が聞こえそうなほど悲嘆にくれる男は置いておいて、

私、リリーは目の前の鶏小屋から産みたて卵を頂戴した。


「うんうん。コッ子もコケ子ココ子みんな偉いぞ」


散らばった三個の卵をカゴに入れて、近くにいたコケ子の頭を撫でてやる


とりあえず雨風防げるように

「あそこの納屋なら入っていいよ」

あそこは一昨年屋根に穴が空いて、虫が大繁殖して管理を放棄した場所だ。


もう使わないし入りたくもないので

「あそこなら好きに使っていいよ。中にあるのも全部。あ、使ったからには謝礼はもらうから」


「……。納屋。…。」


「三年前くらいの馬の干し草とか入ってるから、使いたいならどーぞ」


ただし、虫がすごかったけど、とは言わないでおく。


「これから雨降りそうだし」


「…………。ありがとう。使わせていただきます」


なんとか、納屋の方に這っていく芋虫のような姿。


正直怪しくてしょうがない。

着てる服だって、いつから着てる服なのかボロボロであちこち穴が開いてたし、


「脱走?」

ふと頭に浮かんだ牢獄と犯罪者。


「違うから。僕は何も悪いことしてないから!!」


この距離のつぶやきがよく聞こえたなぁと感心しつつも、やはり極力関わらないようにしようと全力で思った。


男がもぞもぞと移動する姿を横目に、そそくさと鶏の餌やりを終えて家に帰る途中、


「ギヤーーー虫が虫が沢山!!」


男の悲鳴がこだました。



「うん。元気そうだ」


あれだけ大声が出せれば大丈夫大丈夫。


何気に出血の多さに少し心配はいていた。

触りたくはないけど。


こんな田舎に来訪者も珍しいから色々話を聞くのも面白いと思ったのだが、いかんせんあの容貌はいただけない。


なんだかんだで私もうら若き17歳の乙女なのだ。

父も母も出稼ぎに遠くの街に出てる。


自分を守れるのは自分しかいないのだから警戒心が強くなるのは当たり前のことをだった。


そして再確認。

いつも父と母に言われていた「考えてることがよく口に出てる」と。


いけない。気をつけないと。



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