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健司の決心

   火曜日


明日は立花先輩と二人で遊園地に行く日だ。何故かそわそわしてしまう。考えてみれば「まともな女の子」と二人で遊びに行ったことがない。よくよく考えたら俺は“デート”なるものをやったことがない。


直人がいるので、裕子と3人や裕子の友達が混ざったりで複数人での女の子がいる状況が結構あったので、あまり意識していなかった。それと、もう一つ,そわそわしてしまう理由は、やっぱり立花先輩のことを俺は意識しているからだろう。


この前、紹介された日は半分冗談の気持ちで臨んでいけたが、今度は違う。それに思うところもある。そういえば、最近毎晩欠かさず愛理さんと立花先輩からのLINEが届く。内容は今日はどんなだったとか、他愛もないことだが、二人とも必ず俺の部活休みを聞いてくる。もうすぐ3年生の最後の大会なので、今はなかなか一日休みはない。この大会が終われば遊ぶ時間は取れるからと二人には言う。


LINEに時間は取られるが、愛理さんはやっぱりしっかりしていて話の内容も俺の人生の勉強になる。立花先輩とのやり取りでは、時折意味不明なスタンプや顔文字などがくっついてくるが、それはそれで楽しい。ただ、今重要なのは立花先輩との関係である。多分、明日は何かしらの変化が起こるかもしれない。



それは、俺が変化を起こそうとしているから……



授業も終わり、部活に励む。沖本先輩を見ると、無性に最近できた彼女についていじりたくなるが、今はまだ我慢。もう少し知らないふりをしておこう。


(いつかグランドに彼女さんが来たりして…)


練習も終わり、沖本先輩と一緒になった時、不意に話しかけてきた。


「そういえば、ゲーセン行った日はすまなかったな」


「いえいえ、あの後立花先輩に晩御飯奢って貰って、喋ってて楽しかったっすよ」


「立花綺麗だろ? 何せこの学校のマドンナだからな」


「俺そういう情報に疎いから知らなかったですけど、本当に綺麗な人ですね」


「1年生の時も同じクラスだったんだが、その時凄くてな。3年、2年の先輩、同級生からひっきりなしに告白されていた。誰が落とすんだろうと、みんなで楽しみにしたんだけどな」


「それでも立花先輩は誰とも付き合わなかったんですよね?」


「そうだよ。10人目くらいまでは数えてたんだけど、後はだるくて数えなかったな。多分今までで30人斬り以上になると思うけどな」


「やっぱ、お眼鏡にかなう人がいなかったんですかね」


「とにかく中途半端がないんだよな。断るときも完全否定。一部の希望も与えないよ」


「なんか怖いっすね… 」


「だから、彼女は女子にも好かれてカリスマみたいになっているんだよ。断られた男もきっぱり言われるもんだから、すがすがしくフラれる。フラれても何か憧れるんだけど、現実的な彼女を作ろうとする。だから、他の女子にもきちんと男がまわってくる。ちやほやする男の取り巻きを作らないからね」


「なんか、かっこいいっすね」


俺は話を聞いていて、不用意に立花先輩に好きな感情を向けるのが怖くなって、震えあがった。



明日ど~しよ。こんな話聞くんじゃなかった。 俺もばっさりやられて、31人目?


その夜、当然のごとく立花先輩から連絡があった。しかし、LINEで文章を打つ俺の指は… 微妙に震えていた。


『 健司君、明日のことなんだけど、待ち合わせ時間と場所決めよう (ウキウキ) 』

この(ウキウキ)も罠なんじゃないだろーか? 何か怖い。


『 ご所望の時間と場所を言っていただければ、どこへなりとも行かせていただきます 』

『 健司君、何か今日は文章が変だよ? 』

『 左様なことは御座いません 』

『 やっぱ変だって。いつものように話してちょうだい 』

俺は正座をし、10秒間の瞑想の後、通常の精神を取り戻した。


『 先輩の家が利用してる駅に9時10分到着の電車があるんですが、その電車の1両目に俺が

乗っていますので、その車両に乗ってもらえますか 』

『 分かった。遅れずに必ず行くね 』

『 そういえば、夜遅くなっても本当に大丈夫ですか? 』

『 大丈夫!何なら泊りでもいいよ 』

何ですと? 冗談だよね? 一瞬心臓が止まりかけた。


『 冗談、冗談… 結構遅くなっても平気だよ 』

『 ありがとうございます。では明日は遊園地で思いっきり遊びましょうね 』

『 うん。本当に楽しみ。誘ってくれて本当にありがとう 』


後は明日だな。沖本先輩の話聞いてちょっと怖くなったけど、俺も自分の気持ちに正直に行動してみたいと思う。まだ、どれくらい好きかわからないけど……


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


危なかったぁ~ ついつい本音を打っちゃった。

健司君、ほんとはいつでもお泊りOKだよ。


栞にきつく言われているので、とりあえず暴走だけには要注意。

でも何で、最初の方の文面、おかしかったんだろう? 健司君のギャグ? 何かに怯えているような気もしたけど……


とにかく明日は一日中二人っきり… 最高に幸せ… でも楽しんでいる場合じゃない。やることは沢山ある。必ず明日は1歩いや2歩、出来れば3歩、まさかの結婚まで… 


とにかく行けるとこまで前進しよう。それと、何を着ていこう? やっぱり勝負下着は… だめだめ、栞に殺される。 遊園地だから動きやすくて、機能性重視かな… 季節柄でショートパンツとタンクトップ、あと薄手のシャツかな? ただし、胸は強調。


そういえば、雨が降ったらどうしよう? その場合は仕方ないから… ホテル? (キャッ)


だめだめ、煩悩を抑えよう。とにかく早起きしないとね。


明日、たとえ少しでも今よりも近い関係になりたい… 出来れば変な策を使うことなく…


とりあえず積極的に行こう。手をつなぎ、腕を組み、楽しく歩く… いいなぁ~



でも問題が一つある。私はそういうことを男の人とやったことがない…… どうしよう。



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