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それから



麗奈が学校を去り、そして新たに新入生が入ってくる。俺は3年生になり1年生には鈴が入ってきた。3年では直人と裕子が同じクラスとなり、俺は幸次と同じクラスとなった。


幸次もすっかり愛理さんと仲良くなって上手くやっているらしい。あの幸次が彼女自慢をしだしたのにはびっくりした。流石に愛理さんは自慢できる彼女で間違いないと俺も思う。鈴は入学してから俺の予想通りに学校内で暴れまわっている。


鈴との関係をばらしたくなかった俺は、ずっと黙っていたのに何故かみんなが俺の従兄妹だと知るようになった。本人が言いまわっているらしいので、みんなが知るようになったらしい… 


鈴の性格は全く変わっておらず先輩だろうが誰だろうが思ったことは遠慮なく言う。結果、トラブルも起こり、その度に俺の元へ苦情が来る。「お前の従兄妹を何とかしろ」と言われるが、何とかできるなら昔にやっている。


そもそもあいつに近づく方が悪い。あいつの背中に猛獣危険の張り紙でもしておいた方が皆のためだ。ただ、何を思うのか物好きな奴も多く、やたらと鈴のことを紹介してくれと頼まれる。サッカー部の後輩達からもよく言われるが、クラスメイトに言われたのにはびっくりした。確かに顔は凄く綺麗だが、中身は猛獣だ。


よく知らないのに付き合いたいと思う奴らの気が知れなかった。必ず後悔することになるだろう… しかし、鈴は明るく元気なのでクラスでは相当な人気者らしい。俺はその内に鈴がクラスを支配するんじゃないかと思っていた。あいつならやりかねん。特に女子からは絶大な人気を誇っているようだ。その理由は多分、鈴がイジメのようなことを凄く嫌う性格だからだろう。あいつなら複数人でイジメに来られても、全員を殴り倒すと思う。あいつは運動神経が抜群で、ケンカも強そうだ。



麗奈は目標の大学に合格し、今は大学生となったが… 大学生って暇なんですね… 麗奈は週の半分ちょっとしか大学にはいかず、俺と一緒に居ることが多い… 詳しく言うと… ほとんど俺の家にいる。何せ部活から家に帰ってくると毎度麗奈が出迎えてくれるぐらいだ。俺が家にいない時も母さんと楽しくやっているみたいだ。


大学の出席は大丈夫? と聞くと、ありとあらゆる悪どい手を使って出席を稼いでいるらしい… さすが麗奈。麗奈も大学に入ってすぐに仲の良い友人も多くできたみたいだ。当然、麗奈に近寄ってくる男も結構いるみたいだが、あまり近寄ってくると、今でも麗奈は本気で怒るらしい… 初めてその姿を見た大学の友人たちはドン引きしたらしい…


麗奈がいなくなって寂しい思いをするかと思っていた俺だが、鈴が学校内で暴れまわってくれるおかげで、寂しさを感じる暇もない。俺は「鈴相談所」のような感じとなっていた。放っておくのも嫌なんで鈴をだまして生徒会にでも入れてやろうと思い、鈴をおだてて生徒会に立候補させた。すると本当に生徒会役員になってしまった。これで多少はおとなしくなるかと思ったが… 行動はさらにひどくなった。生徒会役員としての自信がついたことが原因らしい… 



俺たち3年生の最後の大会も終わり、俺も部活を終了して夏休みには受験勉強を始めた。相変わらず麗奈に家庭教師をしてもらって頑張った。部活も終わり休みも増えたので夏には麗奈と旅行にも出かけた。二人っきりでいる時の麗奈は依然と全く変わるところもなかった。いまだに高校生のようにはしゃぎまわって楽しそうにしている。



夏休みがあけて学校が再開したころ、何故か鈴のことをみんなはこのように言い始めた。



「学校のマドンナ」



初めは何の冗談かと思ったが、後輩たちに聞くと真剣に鈴は皆にマドンナと思われているという…


鈴は結構な人数に言い寄られてるみたいだが、誰とも付き合うことは無かった。そのため、鈴を好きな連中は遠巻きに一歩引いて鈴のことを見守るようになった。どうやらそれが原因らしい。


みんな気でも狂ったのかと思い俺はこれ以上あまり関りを持たないでおこうと思っていたが、鈴は度々俺の教室にこれと言った用事もないのにやってくる。普通、1年生は3年生教室に行きにくいものなんだが、鈴は全く気にしないで、ずかずかとやってくる。おかげで俺のクラスの奴らで鈴を知らない者は一人もいない。おまけにそんな鈴を見て俺に紹介しろと言ってくるクラスメイトも出てくる始末である。



鈴が一度だけ俺に言ったのだが、麗奈と話してた時の麗奈の言葉が心に残ったらしい。自分もその言葉通りに行動しようと思っているそうだが… これ以上有名になるのはやめて欲しい。


なんでも俺は、元マドンナの彼氏であり、現マドンナの従兄妹であるという事らしい。確かに鈴は綺麗な顔をしているが、それ以上に性格がやばいので俺からはとてもマドンナなんて言葉は出てこない。


そう呼ばれている本人はまんざらでもないらしい。麗奈に与えられていた称号を自分が貰えるのが光栄だと言っていた。麗奈に惚れ込んでいる鈴らしいコメントだ。



秋になって受験勉強も本格化してきたが、成績はまだ安全に合格できるまでには至っていない。俺は少し焦ってきた。このまま成績が伸びなかったら不味いなんてもんじゃない。俺の成績で麗奈に悲しい思いだけはさせたくないんで、気合を入れなおして頑張った。それから麗奈にも勉強を教えてもらう時間を増やしていき、冬に入るころにようやく学年で50位程度となり、なんとか合格圏まで辿り着けた。おかげで麗奈にはどこにも遊びに連れていってやることが出来ずに申し訳なかったが、麗奈もそんなことは何も気にしていなかった。俺の大学受験が迫ってくると麗奈の表情も真剣なものへと変わっていった。



麗奈は大学生になってから、自分の家よりも俺の家に居ることの方が多くなった。おかげで俺の両親と鈴は大喜びで、両親に至っては「急に可愛い娘が二人も出来たみたいだ」と言って満足しているようだった。鈴も相変わらず麗奈にべったりだが、俺の受験勉強にだけは協力的になってくれていた。そしてクリスマスが過ぎ年が明け、いよいよセンター試験。


頑張ってはみたものの、何とか踏ん張れる微妙な点数であった。ここまで来て合格できなかったらシャレにならないので必死に頑張った。そしていよいよ受験当日となった。麗奈は大学まで一緒に来てくれて俺を励ましてくれた。試験が開始され、俺は出来るだけのことはやった。


試験が終了して外に出ると麗奈が待っていてくれた。凄く心配そうな顔で試験の出来を聞いてきたが、俺はやるだけのことはやったとだけ答えた。試験は終わったので後は結果が出るだけである。今更何を言っても始まらないので、俺は久しぶりに気分がすっきりした。





そして今日、俺は麗奈のいる大学の正門前にいる。約束の時間に到着した。



そこには俺のマドンナがいた。



「やっと来てくれたね…  ずっと… ずっと待ってた」


「ようやく来れたよ… 待たせてごめん、これからはまた一緒だよ」


「愛してる… もう寂しい思いはさせないよ」


「そばに居てくれるだけでいい… それだけで幸せ…」


そして俺はもう一つ、麗奈と約束していた言葉を言った。



「麗奈、結婚しよう」


「はい」



お互いにしっかり抱きしめているその手には、リングが輝いていた。



麗奈は本当に嬉しそうな顔をして泣いていた。これからようやく同じ場所で、また同じ時間を過ごすことが出来る。ここまで来るのに長かった… でもようやく来れた。だけど、まだゴールではない。大学を卒業して麗奈と一緒になるまでの道はまだまだ長い。でも今は本当に嬉しい。やっと麗奈のいるところに戻ってこれた。


初めて麗奈と会って、俺は人を好きなるという事がどんな事なのかを学んだ。自分が相手を愛し、自分も愛されてそれだけで幸せだと思った。ただ、それだけでは上手くいかないことが起こることも学んだ。本当に続けていきたいなら、続けられる方法を見つけていかないと駄目になってしまう。人間の感情はやはり複雑で理解しにくい部分も多い。ただ、相手のことを大切に思い一緒に歩んでいくための努力を行えばなんとかなる。


俺が心から思う事… 俺は麗奈のことが好きだ、麗奈を愛してる… この単純なこの気持ちを持ち続けることが出来れば、この先も共に歩んでいけそうな気がする。





長らくのご愛読、ありがとうございました。

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