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健司のお迎え



今日は麗奈の入学試験当日。俺は試験終了時刻よりも少し早めに大学に到着した。以前麗奈と来たときに少し見学したが、もう一度大学構内を色々と見て廻りたかった。それと、来年受けるにしてもまだ具体的な学部までは全然決めてない。決めた所で目的通りにその学部に行けるかは、どうなるか分かんないけど… 


春からは麗奈はここにいる。もうあと一ヶ月もすれば麗奈の居場所はここに変る。そして俺は本当にここに来ることが出来るのか… そんなことを考えながら大学構内を何となく歩いていた。



入学試験終了の時刻となり、約束の場所で待っていると試験を終えた麗奈が帰ってきた。


「健司君、迎えに来てくれてありがとう」


「どうだった?」

俺はやっぱり心配なのですぐに麗奈に聞いてみた。


「取り敢えずやれる分はやれたと思う。ちゃんと実力は出せたと思うよ」

「そうか… 良かった」


俺は安心した。いつも控えめに表現する麗奈が出来たというんだから、多分大丈夫だろう。


「麗奈、お疲れ様。取り敢えずご飯でも食べて帰ろうか…」


「そうだね。やっと受験も終了した。気分が晴れ晴れするよ」


麗奈はすっきりした顔でそういった。表情も凄く明るい。俺の腕に自分の腕を絡ませ、元気よく歩き出していく。


「今日は一回家に帰って受験の報告したら健司君の家にお泊りに行くね」


麗奈は楽しそうにそう言った。結構ストレスも溜まっていたんだろうと思い、麗奈の好きなようにさせてやろうと思った。


帰りに寄ったレストランで、麗奈は俺の方を真剣に見て喋りはじめた。


「もうすぐ本当に離れることになるね。分っていたことだけど、やっぱり不安に思う気持ちが大きい。でも、私がしっかりしないと,次は健司君を迎えてあげないといけないんだね」


「実は俺も麗奈が受験中に大学内を歩いていたんだ。もうすぐ麗奈が通うことになるキャンパス、ここで麗奈はどんな学生生活を送るんだろうなって… そして俺が通うことになった時、どんな事が待ってるのかなって…」


「多分色んな事が起こるんだろうね。でも、健司君が来たら何が起こっても二人一緒だから心配してない」


「俺も3年生か… そういえば部活でも俺たちが一番上の先輩になっちゃうんだな」


「健司君もしっかりしないとね。沖本君みたいにしっかりした先輩にならないと…」


そう言って麗奈は笑っていた。もう麗奈が学校へ行くのは後数回のみ。もうすぐ麗奈のいない学校が当たり前になってしまう。そう思って今までの学校生活を振り返ると何だか寂しい。そういえば、麗奈が俺を初めて見たのは去年の春休み、ちょうど1年前のことになる。まだ俺は何も知らなかったが、そこから俺たち二人は始まったのかも知れない。



そう言えば、麗奈に質問してみたことがある。麗奈が俺のことを先に好きになって俺に近づくために沖本先輩に協力してもらったと言ってたが、どうして直接俺に言ってくれなかったの? と聞いてみたら、健司君みたいな人は自分から好きになった人じゃないと真剣にならないから… と言っていた。だから麗奈は俺の気を引くことだけを考えてたらしい。そのうち俺が麗奈のことを好きになれば、俺の方から告白してくると… まんまと乗せられて引っかかったのは俺だ。


愛理さんにも鈍いと言われたが、こういう所は自分でもどうしようもない。でも全然後悔はしていない。それよりも、麗奈が先に好きになってくれていたことの方が嬉しかった。


それから俺たちは一旦それぞれの家に帰り、麗奈はその後俺の家に来た。俺の両親も麗奈の受験の苦労を労いよく頑張ったねと声をかけていた。母さんは今後の麗奈の予定を聞いて、暇があればずっとこの家に居ていいからねと言って、麗奈を家に来させようと頑張っていた。母さんは本当に麗奈のことが好きだ。


麗奈も暇が多くなるんで、長くお邪魔すると言っていた。麗奈も長い春休みを楽しみにしている。


「今日は久しぶりにゆっくりできるね。健司君にいっぱい甘えよう…」


そう言って俺の部屋に入るとすぐに抱き着いてきた。麗奈にとっての充電時間。


「これから時間もいっぱいあるから、焦んなくても大丈夫だよ」


「今まで結構我慢してたから、今からはご褒美の時間だもんね」


麗奈は幸せそうに笑っていた。そうして、少し喋っていたがふと振り向くと麗奈は小さな寝息を立てて寝ていた。俺は麗奈の寝顔を見るのが好きだ。俺の横で安心しきって眠るその顔は無邪気で子供っぽくて、俺だけが知る麗奈の顔。俺はそんな麗奈に寄り添うように一緒に寝た。



ただ、麗奈がこのまま眠るはずもない… 真夜中にいきなり起きて何故か生命力に満ちた顔つきになっていて俺を起こす。そのまま麗奈のいいようにされて朝を迎えたが、麗奈は再び寝始めた。ちなみに俺は普通に学校へ行かなくてはならない。寝不足でふらふらしながら朝食を食べ、部屋でまだ麗奈が寝てることを親に伝えて学校に行った。そういえば俺ももうすぐ定期テストだ。また麗奈先生にお世話にならないと…



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