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受験



1月ももうすぐ終わりになるころ、麗奈は俺の部屋に来ていた。



「センター試験も大丈夫だったんだね」


「一応予定以上は取れたんで、あとは当日の試験が何とかなれば合格できるかな」


「やっぱり麗奈は凄いな…」


「だって、まずは私が合格しないとね。それで次の年に健司君に来てもらう…」


「そういえば、何か学校の皆が鈴の事を麗奈の親戚と勘違いしてるみたいだね」


「私が鈴ちゃんを連れて廻ってたからね。鈴ちゃん綺麗だし、みんな見てたのかな?」


「勘違いされてていいの?」


「だって、私と健司君が結婚したら本当に親戚の子になるんだよ…」


「そういえば… 何かそれは嫌だな」


「健司君って本当に鈴ちゃんが苦手みたいだね… クスッ」


「あいつは俺の天敵だからね。あいつの中身は本当の悪魔だよ」


「それは言いすぎだよ… 凄く真っ直ぐで元気があっていい子じゃない」


「俺だけには優しくないからな… 4月からが憂鬱だよ…」


「そっか… 鈴ちゃんも素直じゃないんだね」


「麗奈も気を付けた方がいいよ。俺の家に遊びに来るともれなく鈴が粘着してくるよ」


「私は鈴ちゃんが可愛いと思うから別にいいよ。何か可愛い妹が出来たみたいで嬉しいし…」


「でもなんか俺は嫌だな…」



そんな話をしながら俺はふと麗奈の手を見みていた。麗奈の薬指には俺があげたリングが光っている。麗奈は学校ではリングを外してるが、それ以外の場所では必ずはめている。俺も自分の指のリングを見て麗奈との繋がりを感じる。


麗奈の大学受験までいよいよあと一ヶ月、そして卒業まではあと二ヶ月だ。本当にあともう少しで麗奈はこの学校からいなくなる。うちの学校にはマドンナがいなくなってしまう…


そういえば、鈴の高校受験は麗奈の卒業式前に行われる。麗奈と鈴は丁度入れ替わるようになる。


「麗奈も卒業して俺も3年生になるのか… 何かあっという間だったな…」


「私も健司君と出会ってこの半年は凄く短かった」


「でも、俺たちはまだまだ始まったばかりだからな…」


「そうだね。まだまだ先には大きな目標もあるしね」


俺はこれからのことを考えて少し寂しい気持ちになっていた。でも時間はどんどん流れていく。それに応じて俺達の環境も常に変化していく。しっかり麗奈のことを思っていないといつの間にか時間の流れに取り残される。そんな物思いにふけっていると、麗奈が話しかけてきた。


「卒業式が終わったら大学の入学までしばらく暇になるんだ。何処でもいいから旅行に行かない?」


「そうだね、卒業記念の旅行か…」


「何か二人だけでゆっくりと出来るとこだったら何処でもいいな…」


「それじゃ、俺が考えておくよ。麗奈は受験の方を頑張って」


「じゃ 健司君に頼んでおくね」



卒業記念の旅行か… 3月の末頃でどこか静かなところ… とにかく調べてみよう。


それからは、麗奈が学校へ来るのは週の半分程度となり、もっぱら麗奈の家に俺が合いに行くことが多くなった。最近は、いつ会うかも全て麗奈任せになっている。麗奈が会いたいと言えば、いついかなる時でも俺は麗奈に会いに行く。


麗奈のご両親にも迷惑をかけるねと言われたが、俺も麗奈にできるだけ協力したいと思ってるので気にしないで下さいと言った。部活も冬場は基礎体力の強化が中心なので、部活を休んでも走り込みだけは欠かさずやっている。


麗奈が勉強をやっている傍で俺も一緒に勉強をやっているが、麗奈は疲れてくると、いきなり抱き着いてくる。5分くらい抱きしめていると、また勉強に戻っていく。こんなんで麗奈の集中力が維持できるんならと思うが、見てて楽しくなってくる。そんな感じで過ごしているうちに、とうとう明日が麗奈の入学試験当日となった。俺は入学試験終了時間近くに麗奈を大学まで迎えに行くことにしている。


「とうとう明日だね。麗奈、頑張って」


「うん。結構自身もあるし何とかなると思うよ」


「取り敢えず、明日は大学まで迎えに行くね」


「わかった。健司君のお迎えがあるんで明日は頑張れる!」


「それじゃ、今日はそろそろ帰るね」


麗奈に頑張ってもらうため、少し長めのキスをして俺は家に帰った。


明日は麗奈の受験、そして麗奈が学校に居るのももうほんの少し… 麗奈は次の一歩を進めていく。俺も次の一歩を歩み始めなければいけない。麗奈のいなくなった学校で、麗奈が待っててくれる大学に行くために…


家に帰ってきた俺は、麗奈との卒業旅行の行先を決めようと色々探してみた。いくつかの候補に絞られてきたが、あるものに惹かれて俺は行先を決定した。麗奈もきっと喜んでくれると思う。



明日は麗奈の入学試験。麗奈、頑張れ!



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