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文化祭2日目

文化祭2日目


今日の俺の担当時間は午後2時から3時まで。一応文化祭の出店はこの日は3時で終了となる。昨日麗奈の魔法少女事件でクラス内の装飾が完全破壊されたこともあり、朝から担任の先生に注意を受けている。

今朝も直人を見つけたら、校庭に埋めてやろうと探したが見つからなかった。



今日も俺の担当は午後からとなっていたので、麗奈と一緒に午前からいろいろ廻ることにしていた。二人で校舎内をぶらぶらしていると… そこには愛理さんがいた。そう言えば今日は一般公開の日だ。


「あれ、愛理さん来てたの? 連絡くれればいいのに…」


「いきなり来てびっくりさせようと思ってね」


愛理さんは相変わらず天真爛漫である。悪戯っぽく笑っているが、服も可愛く似合っており、愛理さんが校舎内を歩くと大変なことになるだろうと思った。


「裕子には連絡入れてあるの?」


「一応入れといたけど、しばらく勝手に回ってるって言ってある」


「これからどこへ行くの?」


「ちょっと待ち合わせしてて…」

そんな話をしていると… 向こうの方から幸次が歩いてきた。


「幸次、今は当番じゃないのか?」


「俺は昨日やったんで今日は無いよ」


「そう言えば、愛理ちゃん 待ち合わせって誰と?」

麗奈が尋ねると、幸次が言った。


「俺が愛理さんを呼んだんですよ。今日は1日あいてるんで、愛理さんと一緒に廻ろうと思って…」


愛理は少し照れている表情をしている。こんな愛理を見るのは麗奈も初めてである。


「そういう事なんだ。またあとで健司君や麗奈ちゃんとも一緒に廻ろうね」

愛理は少し顔を赤くしてそう言った。


「じゃ、健司 また後でな」

そういって、幸次と愛理は一緒に歩いて行った。


「麗奈、どう思う?」

「何か… いい感じだよね…」



二人は顔を見合わせて、少し驚いていたが、すごく嬉しい気分になった。でも、幸次 愛理さん連れて校内歩き回ると大変なことになるぞ… 俺はそう思っていたが、ある意味楽しみでもあった。


「でも、本当に上手くいって欲しい。私にとっても愛理ちゃんは大事な友達だから…」


「俺も本当にそう思う。でも、幸次なら絶対愛理ちゃんを満足させられると思うけど…」


何となく二人は同じことを思い、手を取り合って歩いて行った。



今日は麗奈に頼んでお弁当を作ってもらってきている。クラスの出店での食べ物だけではとても足りない。昨日廻れていない所から順番に見ていくと、いろんな風景の写真を展示している教室があった。


その中で俺が注目したのは高原に昇る朝日の写真だった。俺は麗奈に声をかけて一緒にその写真を見た。二人で行った上高地での朝日を思い出してなんだか懐かしくなり、麗奈とまた行こうねと言った。


それからもう少し見て廻ってるとお昼になったのでお弁当を食べることにした。俺はふと思い、幸次に電話した。


「幸次、今どこ?」


「愛理さんと一緒に占いをしてもらって終わったとこ」


「よかったら一緒にご飯食べないか?」


「いいのか?」


「あんまり量は無いけど、お前らもなんか食べてるんだろう?」


「たこ焼きぐらいは食べた」


「なら来いよ、体育館の横あたりで待ってる」


「わかった」



「麗奈、幸次たちも呼んだけど大丈夫だよね?」


「二人分と少し作ってきたから、一人分を渡して半分こして食べてもらおう」


「俺らも半分ずつで食べようか」


「それでいいよ、私達はいいけど… あっちは大丈夫かな?」


麗奈は笑っている。一人分の弁当を2人分けて食べるとなれば… 色んなことが起こりやすくなるわけで… ただ、健司にはこの感覚が完全に欠如している。なので健司にはこれから何が起こっても理解できない。


幸次たちがやってきて、お弁当を渡して「悪いけど半分ずつで食べて」というと、「それでも有難い」と言って幸次は喜んで弁当を受け取った。幸次と愛理は弁当を分け合って食べる。割り箸は2つあるので大丈夫だが…


とりあえず皆で食べ始めると最初に幸次が言った。


「凄く美味い、これ 麗奈さんが作ったの?」


「そうだよ」


「麗奈の料理は美味しいだろ? 俺は麗奈の料理が食えるだけで幸せなんだ」


「麗奈ちゃん、こんなに料理が上手だったんだ…」


愛理もびっくりしている。麗奈の見た目からは、家庭的な料理上手なんてのは想像がしにくい。やがて、食事が進むと麗奈が予想してた通りのことが起こる。


「幸次君、何が食べたい?」

愛理が言うと


「玉子焼きかな」

幸次が答えると、愛理は自分の箸で玉子焼きをつまんで幸次の口に入れる。幸次は顔を少し赤くして照れているが、それを見ている健司には全く意味が分からない。


「麗奈、俺にもから揚げ食べさせて」

健司が言ったので、麗奈がから揚げをとって健司の口に入れると


「美味い、やっぱ麗奈の料理は最高」

と言って何にも気にしていない。逆に幸次と愛理は平然と人前でそうやって食べる健司の方を不思議に見ていた。健司を見ていると、間接キスなどという言葉がばかばかしく思える。そんな健司を見ていて愛理も幸次も可笑しくなってきた。



4人で和やかにご飯を食べた後は、皆で何となくいろんなクラスの出し物を見ていったが、健司の担当である午後2時近くになったので、健司は一人でクラスに戻った。健司担当の時間は終われば、出し物は終了となる。


20分ほどして麗奈と幸次、愛理が健司のクラスに来た。


「健司君のクラスの出し物はコスプレ体験なんだね」


「そうだよ」


「凄く面白そう。ねえ、健司君 どんな衣装があるの?」


嫌な予感が押し寄せてきた。愛理の可愛すぎる顔がすでに周囲の人を集めてきている。さらにそこにはマドンナもいる。ここで愛理にコスプレされたらヤバい… 健司は必死に愛理のコスプレを阻止しようとするが当然愛理は言うことを聞かない。健司が嫌がると余計に愛理はコスプレすると言い出す。こうやって揉めていると、更にギャラリーの人数が増加していった。もはや手遅れである。健司は愛理と周囲の圧力に負け愛理のコスプレを手伝う羽目になった。


「幸次、いいのか? 愛理ちゃんどうせ過激な衣装を選ぶぞ?」


「彼女が着たいんだったら、俺は彼女の意思を尊重する」


そういう問題じゃないんだってば… 健司は心の中で叫んだ。どうなっても知らんぞ…


健司には昨日の悪夢がよみがえる… また、クラス内部が崩壊する… 健司は愛理にお願いだからイベント終了の直前まで待ってくれと頼んだ。そしてあと10分で終了の2時50分になるとき、愛理のコスプレショーが始まった。



愛理が選んだのはエルフのコスプレ。不思議な耳をつけ妖精のような格好をするが… なぜエルフもミニスカなの?しかも胸なんて布を巻いてるだけのようなもの… 谷間なんてもろ見えですけど… こんな格好で恥ずかしくないの? と俺は思った。


しかも最後なんで、記念撮影場所の壁を取っ払ってオープンにすると愛理さんが言い出す始末。この教室は愛理のコスプレ披露会場となってしまった。先ほどから多くの人が集まっていたが、愛理がコスプレして登場すると瞬く間に観客は増大し、もはや教室と廊下が人間を収納できる限界となっている。さらに、愛理が調子に乗って、ギャラリーからのリクエストにこたえて、いろんなポーズをとるので教室は異様な熱気で包まれている。もはや愛理のワンマンショー… 愛理もノリノリの状態だ。


もうどうしようもない。俺はできればこの場からトンズラしたかったが、どうせ後で担任にこってり絞られるのが分かっていたので覚悟を決めた。こうして異様な雰囲気の中、文化祭は終了していった。


しかし、愛理さんの悪戯は本当にレベルが違う。あの人は何を考えているのか… 幸次、頑張れよ…


この日の騒ぎは、昨日の麗奈のときよりもひどかった。当然、責任の大半は俺が取ることになる…



そして、今年の文化祭は伝説となった。


「うちの学校には究極の魔法少女とエルフがいる!」



麗奈、愛理さん、変な伝説つくらなくていいから……


来年から絶対にコスプレ関係はやらないと強く心に誓った。



「酷い目にあった…」


「健司君、元気出して」


「麗奈も騒ぎを起こした張本人なんだよ… 」


「ご、ごめんね… 健司君。コスプレしてるとつい気分が高まって…」


「しかし、幸次と愛理さんはやっぱり発展して行ってるんだね…」


「そうだね、上手くいってくれると本当に嬉しいんだけどね…」


「でも、あの様子だと幸次はしっかり愛理さんの事好きになってるな」


「そうなの?」


「幸次は好きじゃない相手にあそこまで近づかないし、気を使わない…」


「あとは愛理ちゃんかな…」


「愛理さんの気持ちも幸次に傾いてきてると思うけどね…」


「そうだよね。今日、うちの学校に来たのも幸次君に会うためだもんね」



麗奈とそんな話をしながら騒々しかった文化祭もようやく終わった。


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