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文化祭1日目



11月になり、麗奈の受験も近づいてくる中、恒例の文化祭も始まる。健司たちの高校は1日目は校内学生のみ、2日目は一般公開となっている。今は文化祭の準備で大忙しの段階である。


直人はめんどくさそうに言ってきた。


「結局うちのクラスは“コスプレ体験しよう”になったんだよな?」


「そうらしいな。ま、いいんじゃねーか。適当に衣装用意して、やりたい客にコスプレしてもらって満足してもらえばいいんだから… 結構楽勝かも…」

俺もそんな感じで答えた。



問題は、コスプレ衣装を集めることだが… うちの学校にもオタク達が実は結構いて、協力を求めると… じゃんじゃん衣装が集まってきた。一体、何でそんなにコスプレ衣装持ってるの?


問題は高校内で披露できる程度のコスプレであることである。結構とんでもない物も多く、学校内でとてもじゃないが見せられないようなコスプレ衣装もあった。そもそもそんな衣装を希望する客もいないと思うけど…


極端に露出の多いものは先生からお叱りを受けるので除外していたが、それでも結構きわどいものもある。俺と直人は分担時間を決められ、客の相手をすることになった。


分担時間は1時間。どんな衣装があるか、リストを見て覚えて、客に衣装を用意して更衣場所に誘導して着替えてもらい、記念撮影ができる場所へ連れていく。さほど難しくはない。それぞれ役割が決められ、2日間の分担時間も決定された。


他のクラスの出し物は… 裕子のいる5組の出し物は焼きそば喫茶、幸次のいる1組の出し物はダーツや輪投げなどのゲーム、麗奈のクラスは占いらしい。俺たちのクラスの準備で大変なのは、更衣場所の設定と記念撮影の場所作り。


特に記念撮影をするにしても教室がそこまで広いわけじゃなく、おまけに更衣場所も結構な面積をとるので、そこまで大きな撮影場所を用意できない。どのみちそんなに大勢が一度に押し寄せるようなこともないだろうということで、適当な大きさの仕切りを持ってきて、それぞれの場所を設置した。




文化祭1日目



今日の俺の担当は午後2時から3時までの1時間。それ以外は自由時間で他のクラスの出し物を見学に行ける。他のクラスの出し物は食べ物や飲み物を扱う店、演劇、展示物など様々。直人の担当が午前11時からの1時間だったので、俺は麗奈と2人でまわることにした。


取り敢えず、文化祭スターから少しの間、俺は自分の当番の仕事内容を確認するためしばらく自分のクラスで見学していた。客が来て一通り仕事内容を把握できたので麗奈と一緒に2人で見学を始めた。



先ずは2年1組の幸次のクラス。輪投げなどゲームを主体とした遊びを行える出し物で、麗奈と遊びに行くと幸次が働いていた。


「健司、来てくれたのか」


「暇だから遊びに来たよ」


「麗奈さんもよく来てくれました」


「幸次君も頑張ってるのね」


「幸次、俺が来た理由 わかってるよな?」


「健司、また俺に負けに来たのか?」


というわけで、俺と幸次が揃えば当然ゲームのスタートである。先ずは輪投げ… 幸次の馬鹿が投げた輪は、何故か一番小さな標的をしっかりとらえて輪がおさまる。俺の投げた輪は、何故か的にはじかれる… 次はダーツで勝負。


結果は言いたくないので省略。次に射的… 以下同様。結局俺は何一つ勝てなかった。幸次はいつゲームを練習してるのか本当に聞きたくなった。幸次曰く、「コツさえつかんだら練習なんていらない」らしい。


その話を聞いてて、普通にむかついた。そんな俺たちの勝負を見ていた麗奈はお腹を抱えて笑っていた。勝負が終わったころには、何度もハンカチで涙を拭いていた。俺が勝負に負けて悲しげに麗奈の元に帰ってきた時も慰めの言葉をかけながら、必死に笑いをこらえてた。


麗奈、そういう慰め要らないから…



麗奈に楽しいひと時を満喫してもらったので、それからしばらくいろんなクラスの出し物を見て廻った。文化祭は普段見慣れた学校の教室などが、全く異なった風景に見えるので、歩いているだけでも楽しくなる。それから、裕子のクラスの焼きそばを食べに行ったり、たこ焼きを食べたりして、その後に麗奈のクラスの占いに行くことにした。


黒い天幕に覆われて暗闇の中に入ると帽子をかぶった魔女の格好をした人がいて占いをしてくれる。俺と麗奈は一緒に入り、麗奈は相性占いと今後を占ってほしいと頼んだ。


「ん~ 見えます 見えます… あなたたちの相性は最高です。これ以上ない組み合わせです。今すぐ結婚しなさい。今の相手を捨てて別の人と付き合うと地獄へ落ちるでしょう… 今後のあなたたちは… 2人の間に子供が2人できます。幸せな家庭を築いていけるでしょう。特に彼氏、麗奈さん以外とは絶対にうまくいきません…」



怪しすぎる占い結果に麗奈は大満足。占い師の手を握って大喜びしてる… これ、絶体やらせだよね… マドンナに気を使って、リクエストに応えただけだよね… 俺、麗奈と別れたら地獄行き決定?……


胡散臭い占い結果を聞いていると、俺の担当時間がやってきたので、いったん麗奈と別れて自分の教室へ戻った。交代して客数を見ると、開始から今までで20名程度、ぼちぼちの客数だった。このペースだと1時間で5人程度なので楽勝と思っていた。 この後まさかあんなことが起こるなんて… 



交代して30分ほどが経ちあと半分と思っていた時、突然麗奈と直人、裕子がやってきた。すると直人が言い出した。


「麗奈さん、一度コスプレしてみたかったんだって… 健司に対応頼みたいらしいぞ」


「麗奈、本当にコスプレするの?」


「折角だし、健司君に見てもらえるなら一回やってみようかなって思って…」


俺も麗奈のコスプレには興味があったので、それじゃやってみようということとなった。


「麗奈、これが衣装のリストだよ。この中から好きなの選んで」


「わかった。 それじゃ… これにする」



麗奈が決めたのは「魔法少女」だった。でも、これが問題で… なんで魔法少女はミニスカでへそ出しルックで胸元開きまくってんの? いったい誰と闘うの? どんなスケベな相手?


取り敢えず、記念撮影の場所はコスプレした人と同伴した人以外は見えないように段ボールなどで囲まれた部屋となっている。だから問題ないと俺は思っていた… 甘かった…


麗奈が着替え終わって、出てくると… 何と学校のマドンナは… 超絶色っぽい魔法少女になっていた。その色っぽさが本当にヤバい… 俺が記念撮影の場所へ連れていってるとき… 事件は起こった。



直人がマドンナがコスプレするということを冗談半分で周囲に言いふらしていると… どこからともなく集まる人の群れ… やがて教室内部にまで押し寄せ… 段ボールの隔壁などあっという間に崩壊… 記念撮影場所が外から丸見え状態となった。


その記念撮影場所に見えるのは… 何と超色っぽいマドンナの魔法少女… もはやみんなの我慢は限界突破した。噂が噂を読んでさらに集まる群衆、教室内の構造物は全て崩壊、皆マドンナの魔法少女を見ようと必死で押し寄せる。


携帯のシャッター音が鳴りやまない状況となり、教室内はカオス状態… 麗奈も逃げればいいのにポーズをリクエストされるとそれに応える始末… 健司のクラスの出店は崩壊した。教室、廊下はこれ以上人が入れないほどになり、廊下は使用不能状態… それでもみんな必死で写真を撮っている。驚いたことに女の子連中も必死に写真を撮っている…


どうなってんの?


俺はノリノリになってる麗奈を更衣場に隠してみんなに退散するようにお願いしたが、全員からモーレツなブーイング… 結局騒ぎは30分ほどで治まったが… 完璧に部屋の内部構造は破壊された。


結局、担任の先生からさんざん説教され、その後は部屋の構造の修復作業… 夕方までかかりようやく元に戻った。俺は騒ぎの原因をつくった直人を屋上から吊るしてやろうと探したが、すでに直人は逃亡していた。


その後も学校内は騒然としていた。みんなマドンナの魔法少女姿の画像を見せ合って… とんでもない雰囲気となった。



こうして文化祭1日目は終了した…


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