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マドンナの変貌



麗奈との関係が元に戻ってから二人とも最初に学校に登校した日はさすがにいろんな方面から説明をさせられた。沖本先輩や栞さん、直人に裕子… その他にもいろんな人に説明をさせられたが、皆温かく迎えてくれた。



みんなが最も驚いたのは麗奈の表情の変化だろう… 完全な無表情に戻っていた麗奈の表情は、逆にみんなが見たことないような子供のような無邪気な顔に変貌していた。俺が最も好きな表情である。


俺の前ではよく見せていたが、教室ではめったにしないような表情である。マドンナの尖った表情はもうどこにもなかった。そこには子供っぽいただ無邪気な女の子がいた。クラスの皆はその変化に驚いて結局麗奈には近づきにくかった。


ただ、沖本や栞からはいい表情になったと褒められていた。ある意味、いままでの学校のマドンナはいなくなった。学校内、特に3年生ではこの変貌ぶりに驚き、噂となっていた。ただ、今のその姿は皆にとって親しみを持てる


新たなマドンナの誕生なのかもしれない。


麗奈はその表情の変化とともに、行動も大きく変化した。今では気軽に健司のいる教室に遊びに行き、昼食も栞たちと食べたり、裕子たちと食べたりと自由奔放に行動している。



今日は俺や直人、裕子たちと一緒のお弁当タイムだ。


「今日は麗奈ちゃんも一緒にお弁当だね」


「麗奈さん、なんか明るくなって… 一層綺麗になりましたね」


「うふふ、ありがとう。そういえば、今度料理つくるからみんなで食べようね」


「マジっすか、ホントにいいんですか?」


「麗奈ちゃんの作ってくれる料理だったら絶対食べに行くよ」


「お前らあんまり麗奈に甘えんなよ」


「健司、彼女の独り占めは良くないよ…」


「普通、彼女は独り占めだろ… お前は裕子を誰かに貸すのか?」


「裕子を借りたがるやつがどこに……」


話の途中で直人は裕子に殴られた。 ま、そうなるよね…



こんな感じで、ごく普通のお弁当タイムを2年生教室で行っている。最近では健司のクラスメイトも教室にマドンナがいることにすっかり馴れていた。


ただ、馴れただけで注目されてないわけではない。健司が無邪気な顔の麗奈を好きなように、皆も同じである。はっきり言って、人気はさらに上昇中である。今まで怖くて近寄れなかった連中が、こぞって寄ってくる。


以前は近寄りすぎた相手にはあの冷たい表情で睨みを利かせてたが、今は誰にでも笑顔で話している。ある意味みんなから愛される正真正銘のマドンナになった。



おかげでとばっちりを食うのは俺の方となる。今までよりも妙な感情のこもった優しくない視線を周囲の男子から沢山頂くこととなった。麗奈の美貌に憧れる奴は本当に多い。



元に戻ってから最初の間は妙に恥ずかしがるというか、遠慮がちに俺と一緒に居た麗奈だったが、最近では学校内でも普通に手を繋いだり、腕を組んだりしてくる。凄く楽しそうにしている彼女に俺が何を言えるわけもないので好きなようにさせている。以前のような妙に執着するところもないので、このままで大丈夫だろう。



マドンナの人気は広範囲に及んできており、サッカー部の後輩の1年生に俺はよく質問される。


「鈴木先輩はどうやってマドンナさんと付き合えるようになったんですか? その方法を教えてください」


「ただ、遊ぶようになって自分の本音を伝えただけだよ」


マドンナ自身に仕組まれたなんて、男として言いにくい。ちなみに、俺が麗奈と知り合うきっかけ自体が麗奈の仕込みであることを知ったのは、愛理さんから教えてもらったからだった。


「やっぱ、そういうとこ健司君は鈍いよね」

こんなコメント付きで教えてもらった。 恥ずかしかった…


「何で先輩はマドンナさんみたいな人と付き合えるんですか…」


このような半分妬みみたいなコメントをよく貰うが… お前ら俺がどれだけ苦労してきたか分かってんのか? 命の危険をさらして一度誰かと付き合ってみろ! などと言えるはずもない。悔しい…



今は10月、季節は丁度変わり目を迎えてこれから本格的な秋になっていく。麗奈と知り合ってからまだ四ヶ月程度であるが、10年分ぐらいの人生経験をしたような気分だ。でも本番はこれから… まだまだ始まったばかり…



麗奈と一緒にいる時間自体は多少少なくなったが、定期的に俺の家には泊まるに来る。俺に会いたいのもあるが、俺の母さんが麗奈に会いたいから頻繁に声をかけるという理由もある。俺もたまに麗奈の家に泊まりに行く。当然、これまでのことを考えて度を超すようにならないよう注意はしている。



結構、環境が大きく変化したが、俺と麗奈は今の状態に満足している。学校内は以前より騒がしくなったが、ある意味楽しくもある。



麗奈が卒業するまであと半年、今のうちにやりたいことを精一杯やっておこう。麗奈にとってはこの半年が最後の高校生なのだから…



まだ物語は続いていきます。今後もご愛読よろしくお願いします。

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