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2年後の約束



いったい何から語ればいいのか… 沢山ありすぎて迷ってしまう…

取り敢えず、俺と寝奈は元に戻ることが出来た。正確に表現するともう一度二人は始まった。

あの公園から…


俺の家に連れて帰った日は、まだ麗奈の精神は不安定だった。

でも、俺の両親も精一杯俺たち二人に力を貸してくれた。両親の暖かい言葉で麗奈も凄く安らいだみたいだった。俺の部屋でもまだ少し怯える麗奈だったが、俺はずっと彼女の傍で彼女の手を握っていた。俺もその手を離すのが怖かった。


手を握っている限り麗奈はここにいる… 二人ともほとんど口を利かなかったが、それでも安心できた。公園で見つめ合った麗奈の目にもう迷いはなかった。もう大丈夫なんて言えるはずもないが、今はそれでいい… もう俺の心も限界だった…



時折、二人の目が合いキスをする… お互いを確かめるために… 俺たちはお互いの感情に疑問などかけらも持っていない。麗奈が俺を愛してるのは俺が一番よく知っている。俺は大事な勉強をした。お互いに思い合っててもだめになるときがあるんだと… そんなことは一度も思ったことがなかった… 誰も教えてくれなかった…



あの時俺は麗奈が求めるなら、一緒に死んでやろうと思っていた… それでよかった…

何も後悔はない。

麗奈が俺を頼るように、俺も麗奈に頼っていた。


あの時、ナイフを持った麗奈を見たが、一目でわかった。麗奈は俺を刺す気はないと… 麗奈の目が訴えかけていた。今が最後の限界… まだ自分を保てている最後に俺に会いたかったんだと… あれは麗奈の本当に最後の賭けだったんだろう… あともう少し壊れたら…


あの時が自分が自分でいられなくなるギリギリの状態…


それほど麗奈は俺を傷つけたくなかったんだろう… でも俺と麗奈は未来を生きることを選択した。これから起こることを、これからやりたいことを夢見て、その先を目指して… 今は麗奈がまたいつどうなるかなど分からない、でもこれから先に向かって生きると言った麗奈を信じる。


どっちにしろ、俺は麗奈から離れるつもりはない… それだけは分かっている。



麗奈が落ち着いた時に父さんに少しだけ呼ばれた。大丈夫なのかと言われ、もう大丈夫と言うと「そうか」とだけ言われた。父さんはどこか安心した様子だった。麗奈の両親には連絡しておいたと父さんは言った。


これから二人でまた新しく歩み始めなければいけない… もっと先を見て… 今だけじゃなく…


麗奈が眠るまで俺は傍でずっと手を握っていた。やつれた顔をした麗奈はようやく安心出来たように優しい表情ですぐに眠りについた。本当は力いっぱい抱きしめたい… でも我慢した。早く明日が来てほしい…

次の日も、その次の日も… その内、明日に向かうのが当たり前になるように… 



次の日は二人とも学校を休んで、二人で出かけた。どこへ行くわけでもないが、学校に行くよりも静かな場所で二人でいたかった。不思議なのは、あれだけいつもべたべたしていた麗奈は手を繋ぐことも腕を組んでくることもしない。俺が麗奈の手に触れるとビクンとする。まるで今日から付き合い始めたカップルのように…


俺はそれでいいと思った… また、初めからやり直せばいいと… 何か付き合い始めたときのドキドキとする緊張が戻ってきて楽しかった… しばらく二人とも無口だったが、「麗奈、お腹空いた」と俺が言うと麗奈は少し笑顔になって、「また健司君にご飯を作ってあげる」と言って楽しそうに笑った。



ぶらぶらしてるとあることを思いつき、麗奈の手を取り一緒に電車に乗って出かけた。今日どうしても麗奈に伝えたいことがある。それを伝えるにはあの場所がいい。バスに乗り換えて向かった先は麗奈に連れてこられた大学である。



2年後の春、俺はここで麗奈と待ち合わせの約束をしている。そこに付け足したい約束が出来たので俺は今日、麗奈をここに連れてきた。


「麗奈は2年後の春、ここで俺を待っててくれるんだね?」


「うん、私はここで待ってる… 健司君が私の元へ戻ってくるのを…」


「俺も約束する。2年後の春、俺は必ずここに来る。麗奈のところへ戻ってくる、そして…」


俺は繋いでる手を離し、麗奈の両肩に手を置いていった。


「そして、そのとき俺は麗奈に結婚しようと言う…」

俺の言葉を聞いて麗奈は涙を浮かべたが、その顔は幸せに満ちた顔をしていた。


「わかった… 私も約束する。そのとき私は、“はい”と答える」

麗奈は俺の胸に顔を埋めて泣いていた。嬉しそうな顔をして…



これで俺たちにはもう一つ大きな目標が出来た。この目標に向かって頑張らないといけない。寂しいなんてことを言ってられない。その先に行かないと二人にとってのゴールにたどり着けない。


麗奈の瞳はしっかりと目標を見据えた力強いものになっていた。

そう言って二人で誓いのキスをした。麗奈の瞳には輝きが戻っていた。


その後、麗奈の両親も心配してると思い、夕方に俺たちは麗奈の家に一緒に行った。



麗奈の両親も凄く心配していたが、昨日、俺の父親が電話で説明してくれてたおかげで、優しく俺たちを迎えてくれた。俺は麗奈の両親に、今は無理だが将来必ず結婚させてほしいと頼み込んだ。麗奈の両親はその時に二人がそれでいいなら自分たちは何も言うことは無いと言ってくれた。麗奈もすごく嬉しそうにしていた。少し麗奈の両親と話してから俺は自分の家に帰った。



もう一人、大事な人にこの結果を伝えなければいけない。俺は愛理さんに電話をかけた。

愛理さんは俺が元気に戻ってきたことを何より喜んでくれた。細かいことのいきさつは、後日どこかで話そうといって電話を終了した。後で直人と裕子にも電話をしなくてはならない。


これから大変なことが沢山あるが、前に向いて進まなくてはならない。明日から学校に行き、麗奈も受験勉強を頑張り、俺も部活に精を出す。これからがまた始まりとなる。



俺は麗奈と約束した。2年後にあの大学の門で麗奈に迎えてもらうと… 結婚を申し込むと…



まずはそこまで頑張らないといけない…

まだまだ先は長い


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