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二人の思い



健司君の誘いを断って会わなくなってから2日がたった。私の心は既に壊れかけている。誰かが小石をぶつけると簡単に砕けるだろう。数時間おきに、もう限界と思う気持ちと絶対にやり遂げるという気持ちが交互に出てくる。そして何も考えられなくなっていく。



最初に私の異変に気付いたのは、当然栞だった。栞は修学旅行から帰ってくる彼氏を心待ちにしていて、帰ってきたらいつものように、私や健司君と4人でお昼ご飯を食べたりと思っていた。でも私は栞の誘いには応じなかった。


栞は本当に心配そうに私に言ってきた。健司君と何かあったの? 物凄く顔色が悪いよ… 元気ないよ…どうして死んだような顔になってるの… 栞も私に異変が起こっているのはわかっている… 


ただ、どう対処していいのか分からないようだ。それでも本当に心配してくれているのは凄く感じる… でも今はそっとしておいて欲しい… 健司君と一緒に居るときの一時間はあっという間に過ぎる… 今は一時間が一日に思える… 



あれから健司君はなにも連絡をしてこなくなった… それだけが救いだ。今健司君の声を聞いたら… 絶対に健司君に駆け寄ってしまう… 今健司君に会えば思いっきり抱きしめてしまう…  そして…健司君無しでは一日も生きていけなくなる… それが叶わないのなら私は… 何をしてしまうか分からない。



あの日から限界が来ようとするたび唇をかみしめる。その度に血の味がする… それを何度も繰り返す… それでもいい… どんなにつらくてもそれが先に繋がるなら今は何だって我慢して見せる。健司君と一緒にもっと先に行きたい… ずっと一緒に居たい… 私さえしっかりすれば、健司君はこの先ずっと私の傍から離れないでいてくれる。もう少し… あと少しの我慢だ… 



私の心は健司君によって完全に満たされている。誰から見ても私は健司君に愛されている。このままでいいんだ… これ以上なんて必要ないんだ… このままで十分幸せ… それを理解して… 私の心…



望むものは全て与えられた… 今日会えなくても明日会えればいいんだ… 明日会えなくても明後日会えばいいんだ… その日もだめならその次の日でも… 健司君は絶対に私を離さないから… どれだけ会えなくてもどれだけ離れてても健司君はいつも変わらず私を愛してくれてるんだ…



今まで誰も怖いと感じることはなかった…



誰に対しても向かって行けた…



私は絶対に負けない…







麗奈と会えなくなってから数日がたった。俺の心の中は虚しさでいっぱいになっている。いつも振り向けばそこに麗奈がいると思ってた… それが当たり前だと… みんなはこんな時どうしてきたのだろう…


俺には恋愛という経験がない… 麗奈以外との… 思いやりを持ってあげれば… 人に優しさを向けることが一番いいことだと信じてきた。器用でない俺にはそうすることしかできない… 何故、こんなことになる… 俺はどこで間違ったんだ… 麗奈と初めて離れることになって一つ気付いたことがある… 俺も麗奈がいないともう生きていけない。



まさかこんな感情を身に染みて思う時が来るなんて思わなかった… 愛理さんに言われて必死で麗奈に連絡を取るのを我慢している。俺にも限界がある… 


俺は麗奈を愛してる… 麗奈も俺を愛してくれている… 何故それで上手くいかない? おかしいだろ… 



直人や裕子もおかしいことには気づいているが、俺には何も言ってこない。いつものようにしてくれている。その優しさが本当に心に沁みる… 俺の心も砕けそうだ… 誰かに助けてほしいと思う気持ちもあれば、誰とも関わりたくない気持ちもある。今は何も冷静に考えられない…



愛理さんは、麗奈は今 自分の心と格闘していると言っていた。それがどれだけ辛いか分かるのかと俺に言った。 今の俺にならわかる。


毎日、鳴らない携帯を見つめている… 麗奈は今何をしているんだろう… 麗奈は今泣いているんじゃないのか…なにもやる気が起こらない… 全てがどうでもいいような気がするときもある… でも、今は待つしかない。



麗奈とはもっと先に進みたい… ずっと一緒に居たい… 麗奈、お願いだから頑張ってくれ…


今の俺には何もしてやれることがないけど… 麗奈の気持ちが落ち着いたらいつでも麗奈を受け入れる… 戻ってきてくれるなら、いつまでも待ち続ける… 早く戻っておいで… 戻ってきたら二人でもっと先に行こう…



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