表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/80

健司の修学旅行

9月になり、夏休みも終了してまた学校が始まる。今月は2年生の修学旅行があり、健司も修学旅行に行く。当然、麗奈の気分はやや鬱となる。



学校も始まり、普段の日常が戻ってきた。変わったことと言えば、昼の弁当を健司は麗奈と栞カップルなどと一緒に食べるようになったことや、麗奈がちょこちょこ健司の教室に来るようになったこと、それから、麗奈と裕子が二人で帰ったりするほど仲良くなったことだ。9月も中旬を過ぎて来週から修学旅行が始まる頃となった。修学旅行は4泊5日である。



「来週から健司君が消えてしまう… うぅ」


「俺、この世から消えるわけじゃないから… 」


「5日間も会えないなんて… 死んじゃうよぉ~」


「死なないから、大丈夫だし… すぐに帰ってくるし」



そう言えば、よくよく考えてみると麗奈と関係が深くなってきてから5日間会わないなんて今までになかった…最近は、長い時間は会えなくても昼食のときや、教室で話をしたり、たまに一緒に帰ったりしていたので、一週間近く全く会わないなんてことはなかった。それに、あんまり時間が取れないときは麗奈は俺の家に泊まりに来ていた。



俺にとっても麗奈にとっても、ほとんど毎日会ってるのが当たり前の日常になっており、俺自身も5日間麗奈と会えないのは寂しい。しかし、麗奈にとっては俺よりももっと深刻な問題である。麗奈が俺に唯一我儘を言うのは常に一緒にいたいということだけだからだ。そのため俺も、できるだけ男友達との付き合も行かないようにしている。



「健司君の乗る飛行機が落ちたら… 健司君の乗るバスが崖から落ちたら… 健司君の泊まる旅館が火事になったら…」



どれだけ不幸なことが起こるのか… 麗奈、おれ何回死んでる? なんかそんな事ばっかり隣でぶつぶつ言われると、本当に起こりそうな気がして俺も怖くなってくる…


「大丈夫だよ。必ず元気に戻ってくるよ。安心して待ってて」


「あとね、絶対ほかの女の子と仲良くなっちゃいやだよ…」


「それは大丈夫だよ。大体直人たちと一緒に行動するから」


「そうだよね。健司君は絶対浮気しないもんね」



俺は浮気はしないし、するつもりもない。 ただ、もし浮気して麗奈が怒った時のことを考えると… リアルに命の危険を感じる。麗奈を信奉する人からの攻撃も怖いし、麗奈自身ももっと恐ろしいし… 怒った時の顔を見た裕子は怖くて震え上がったらしい… この前裕子から直に聞いた。 俺に浮気をする勇気はない… いろんな意味で



麗奈の精神状態も環境が大きく変わり変化したことも多い。親しくする人間の数も増えてきて、孤高のマドンナだった頃よりだいぶ表情が柔らかくなっている。周囲の者からは相変わらずマドンナと呼ばれているが、何か親しみを持った言い方に変わってきた。これなら愛理さんが心配してたことは改善されたと思う。


「健司君が出発する前日は泊まりに行くからね」


「いいよ。しばらく会えないから、二人でゆっくりしよう」



出来るだけ麗奈に心配かけないように、優しくしていこう… 愛理さんにはあまり優しくしすぎるとだめだと言われたが… こういう場合は仕方がないよね…





修学旅行前日

麗奈は俺の家に泊まりに来ていて、明日は学校に一緒に行って俺を見送ってくれる予定だ。



「健司君、毎日ちゃんと電話頂戴ね。それと、美しい景色とか送ってきて」


「わかってるよ。麗奈も電話待っててね。あと、お土産とか考えておいて」


「健司君と5日も会わないなんて初めてだもんね… 大丈夫かな…」


「連絡は毎日入れるし… 大丈夫だよ」


「じゃ 今日のうちに甘えておこう~ 」


「甘えておこうって… なんで俺の服を脱がすの?」


「だって、邪魔だから… ん~ えい!」



こうして健司は今日も麗奈のいいようにされていく… 明日からしばらく会えないので健司は麗奈の好きなようにさせておいた。今日は前日なので、麗奈も少し元気がなくなるかなと思っていたが、案外元気なので健司も安心していた。



朝になって、麗奈と一緒に学校に行く。


「それじゃ 健司君、気を付けていってきてね。みんなで楽しんできて」


「ありがとう麗奈。毎日連絡するからね」


「楽しみに待ってるね」



そして、健司は自分のクラスのバスに乗っていく。



「健司、昨日ちゃんと麗奈さんに優しくしてあげたか?」


「当たり前だろ。直人こそ裕子と全部一緒の行動はできないだろ?」


「その辺はすでに相談済み… てか、裕子に命令されてる」


「さすが裕子だな…」


裕子だけクラスが異なるので、直人と常に一緒の行動はできない。全体での見学や自由研究などの時間しか一緒にいることが出来ない。


「とりあえず裕子と二人のとき以外、俺は健司とずっと一緒の行動だな」


「俺もその方が助かる。あんまり知らないやつらの中も困るし…」



修学旅行の行先は定番の京都を中心とするエリア。3日目と4日目は一日自由研究という名の自由行動である。今日は飛行機でまず大阪に行き、大阪で一泊する。無事大阪に到着し、色々観光をして今日の宿泊先につく。携帯を見ると麗奈から伝言が…


『 健司君、栞のために聡君の写真を撮って送ってくれる? 』


なるほど、栞さんも心配だろうしな… 麗奈の親友のためだし


『 わかった。できるだけ撮って送ってあげるよ 』


『 ありがとう、健司君 』


聡はクラスが違うので、全体行動のときにでも撮りに行こう。


俺は麗奈に頼まれた綺麗な風景などを見つけては写真を撮っている。直人も普段より写真を多く撮っているが、裕子にでも送るのかな?


その日の夕食時や寝る前などに、麗奈に頼まれてた栞さんの彼氏である同じサッカー部の聡の写真を数枚撮り、栞さんの携帯に直接送ってあげた。これで栞さんも喜んでくれるかな? それにしてもみんなどこに行っても写真を撮りまくる。食事などは必ず食べる前に撮るのが常識なほど… 裕子や直人も例外ではない。


俺の写真もたくさん撮っていた。その日は就寝時間前に麗奈に電話をした。


「麗奈、電話遅くなってごめんね。今大阪からだよ。今日はね……」


今日あったことを麗奈に報告し、他にもいろいろと喋ったが、思ったより麗奈は元気そうで安心した。


次の日も移動しながら観光をして、今日は奈良、その次の日は京都に2泊である。


3日目の夕食後、いつものように麗奈に電話を掛けて喋ったときに「少し雨が降ってたみたいだけど、大丈夫だった?」と聞かれたので、お寺とか見てたから雨には濡れなかったと答えたんだが… 何か不思議なような…


次の日は京都で泊まる最後の日で、一日自由行動だ。俺は直人と裕子と3人で神戸に行った。一度行ってみたかったし、案外京都から近い。神戸は横浜と似たような感じがあり、中華街もある。3人でいろんなところを巡ったが、なかなか風情があっていい街だ。山手の方では異人館、海の方ではハーバーランドなどがあり、いつか麗奈を連れてきたいと思う。



やっぱり旅先でも麗奈のことを思うときが多い。俺もすっかり麗奈に惚れこんでしまっていることを実感した。夕方前に麗奈から電話があり、「やっぱり神戸ってきれいな街なんだね」と言ってきた。なんで神戸にいるのを知ってるの? 俺は麗奈に何も話してなかったので、不思議に思って聞いてみたらさっき裕子から電話をもらったと言っていた。最近は裕子ともよく連絡を取っているみたいだ。



予定時間に宿泊先に戻り麗奈に電話をすると、少し元気がないようだった。でも、明日にはそっちに戻るし、晩になら麗奈にも会える。麗奈にもそう言って元気を出すように慰めた。やっぱり麗奈も寂しいよな……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ