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麗奈の命令

お盆期間 5日目



明日は両親が戻ってくる。麗奈と二人っきりの生活も今日が最終日だ。朝ご飯を食べて片付けが終わり、麗奈も一息ついているとき、俺は麗奈に近寄り俺の膝に麗奈の頭を寝かせた。俺が急に麗奈に膝枕したので、麗奈も少し驚いて俺の顔を見ている。



「麗奈、二人っきりも今日が最後なんで、今日は麗奈に感謝をこめて麗奈の好きなようにしてあげるよ」


昨日のこともあり、少しでも麗奈に元気を出してもらいたい俺は、今日は一日優しくしてあげようと思った。出来るだけ麗奈の希望を聞いてあげて、できるだけ麗奈のしたいことをさせてあげて、麗奈が元気になれるように…


膝の上に乗っかっている麗奈の頭を撫でながら、俺は麗奈に優しく言った。


「急にどうしたの、健司君…」


「何かして欲しいことあったら何でも言って」


「急にそんな事言われても… 何でもいいの?」


「何でもいいよ」


「そしたら… とりあえず結婚して」


「無理」

とりあえずって何?


「何でもいいって言ったでしょ~」


「できる範囲でお願いします…」


「じゃあ… 」


こういう時に麗奈が言葉に詰まると、ろくな事がないような気しかしない… 言わなきゃよかった?


「私の言うことに全て従ってくれる?」

何気にありがちな… やばそうな… そんなことを言ってくるな…


「あの… 俺ができること限定だよ」


「それは大丈夫 フフッ」


そういうわけで、今日は麗しき麗奈様の下僕になることが決定した。



「それじゃ 最初に愛情のこもったキスをして」

「仰せのままに…」


俺は麗奈様を満足させるように、愛情をこめて少し長めのキスをした。


「次はねぇ~ 後ろからしっかり抱いていて」


麗奈は基本、俺が後ろから抱きしめることを好む。その方が俺のことを感じることができるらしい。しばらくそのまま何も考えずに麗奈を抱きしめている。



「ん~ん 充電完了… これから私をデートに連れて行きなさい」


「どこへ行けばよろしいのでしょうか…」


「取り敢えず私に付いてきなさい」


「かしこまりました」



こんな感じで俺は麗奈に先導されて出かけて行った。50分ほど電車に乗り、そこからバスに乗ってようやくたどり着いたところは… とある大学のキャンパスだった。


「健司君、ここが私が受験する大学… そしてあなたが目指す大学だよ。」


昨日、麗奈が卒業したらと考えていたが、卒業するということは次の進路があるわけである。今、実際に麗奈の目指す大学を目の前にして凄く現実感が湧いてきた… 本当に俺たちは遠くなるんだな…


今は会いたければ学校であればすぐに、お互い家に居てもさほどの時間がかからずに会える。でも、来年からはそうはいかない…


「一緒にこっちに来て」


そう言って麗奈は俺の手を引いて歩いていく。着いたのは入学案内のパンフレットなどが置かれている所。麗奈はそのパンフレットをとって俺に渡す。


「私はもうこれを持っているから… 健司君もこの大学を知っておいて…」


今日の麗奈の行動の意味がなんとなく分かった。来年自分がどこにいるのか、俺が来年どこを目指して頑張らないといけないのか… それを俺に分からせたかったんだろう…


それから俺たちは、キャンパス内をぶらぶら散歩する。やはり大学だけあって広い。高校とは比べ物にもならない。今は夏休みなんだろうが、大学内には結構な人数の学生がいた。高校とはまるで雰囲気の違うところ… ここで麗奈は俺と離れて一人でいることになる… 俺にもすごく現実感が出てきて、少し寂しい…



大学内を適当に散策して正門付近に来た時、麗奈は立ち止った。


「健司君、私のいう事に何でも従ってくれるんだったね… 」



「再来年の入学式の日、私はここで待ってる。健司君、必ずここに来なさい」



そう言った麗奈の目は、俺に何かを訴えかけるような真剣な目をしていた。俺は麗奈に必ず私の元に戻ってきなさいと言われている気がした。その気持ちはすごく俺の心に響いた…



「わかった、約束する。必ずその日に麗奈の元へ戻ってくる… そして麗奈ともう一度同じ時間を過ごす」


「必ずだよ…」



麗奈は真剣な表情で言う。

麗奈が今日、俺をここへ連れてきた理由ははっきりと分かっている。これが今の麗奈にとって本当の願いなんだろう… たとえ一度離れても、もう一度必ず戻る… 


それから俺たちは家に帰った。帰りの電車では麗奈はいつものように戻り、俺にべったりしていた。


「次の命令は、健司君は私から10cm以上離れてはいけません」

それ、無理だから… 改札出れないし…



麗奈は精一杯甘えてくる。こんなに甘えた表情をしているけど、大学で見せたあの真剣な表情も同じ麗奈なんだ。俺は、麗奈の気持ちに答えてやると心に誓った。



家に帰ってからも、一緒にご飯を作る命令、一緒にお風呂に入る命令など、麗奈はその権利を行使していたが、寝るときには麗奈の権利を奪ってやった。



「麗奈、これからお前を抱く」

そう言って、麗奈には何も言わせなかった。



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