表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/80

距 離

お盆期間 4日目


朝 起きると  俺は  麗奈に襲われてた……


「寝込みを襲う」とはよく言うが、「寝起きを襲う」とはどうなんだろう … 


「麗奈~ 朝から何やってるんだよ~ …」


「朝ごはんできたから健司君をお越しにきたら… 私の朝ごはんがここにあったから… 」


「俺は餌ではありません」



昨日は麗奈の親友の栞さんカップル誕生で、麗奈と栞さんの電話が長くなって俺は先に寝ていたんだが… 昨日なかった分をどうして朝一番で補おうとする… 


朝 起きた段階で一日の体力の半分を失った俺は、朝食で何とか失った分の半分を取り戻した。


さて、俺に残っている体力はあとどれだけでしょうか ……


などとくだらないことを言っている場合でもない。今日は部活も休みだ。麗奈とまったり過ごそうと思う。



「麗奈、今日行きたいとことかある?」


「別にないかな」


「だったら後で買い物に行って、今日はお家で過ごそうか?」


「そうだね。今日も外は暑いし…」



真夏に好んで外に遊びに行くこともない。部活で暑い中さんざん走らされてるんだから、今日は涼しいお家でゆっくりしよう。買い物に行って昼食も食べ、家でゴロゴロしてたが暇だから映画でも見ようということになって、録画しておいたアニメ映画を麗奈と一緒に見る。


ストーリーは、幼馴染で気が合ってお互いを好きに思っている男の子と女の子が、親の転勤で離ればなれになり、最初は文通などしていたが、やがて便りもなくなりお互い思い出を引きずりながら、それぞれの新しい出会いに向き合っていくもの。


映画を見ていた途中でふと麗奈の方を見ると気が抜けたような… 放心状態のような感じになっていた。終盤になると涙を流していたが…… なんとなく映画が悲しいのではなく何かを思い浮かべて悲しんでいるようだった。無言で呆然としている麗奈を見て、どうしたんだろうと考えていると… 


だんだん分かってきた。 来年、麗奈が卒業して俺達の距離が離れていくのと重ねて考えている… 俺は良くないものを選んだと後悔したが、実際に距離ができるのは事実だ。 今はいいが、この先どうするかを真剣に考えていかなければ…  前にも言ってたが、麗奈にはそれが耐えられないらしい… 


二人の結びつきをもっと強くすればいいのかもしれないが、今以上を考えるのが難しい。麗奈との関係は最後までいってるし、お互いの家に泊まったりもできる。環境的にはこれ以上どうしようもない。


簡単に言うと、会ってる時間を極端に短くしても精神的に安定できるような関係… 今は思いつかない。


麗奈は、物欲的な我儘は言わない。どこかへ連れて行けなども言わない。一つだけ言うのは一緒に居たいだけだ。それが出来なくなる。とりあえず今は麗奈を慰めないといけない…


麗奈の肩をそっと抱くと、麗奈は俺の腕を握る。次第に握る力が強くなっていく。何かに怯えているように…


俺は麗奈と多少距離が離れても、会える時間が少なくなっても我慢はできる。麗奈が俺のことを思っててくれる限りは我慢はできる。俺も正直、麗奈と会える時間が少なくなるのはいやだ。でも、我儘を言って麗奈と離れてしまうようになるなら我慢する。でも、麗奈が寂しそうにして悲しむ姿を見るのは我慢できない。


そんな姿を見たら、何とかしてやりたいと… 仕方がないからと諦めることなんて出来ない。俺にはそんな麗奈の姿を見るのが一番つらい… 唯一、それだけが耐えられない。



ずっと後になって愛理さんに言われた…  それがあなたの一番ダメなところだと…



放心状態になっている麗奈をそっと抱きしめて、麗奈の頭を撫でながら、


「おれだったら、どんなに離れてもいつか必ず会いに行くよ… そのままになんてしない」


映画の主人公の行動を否定するように言った。


「寂しくても次にいつか必ず会えるんだったら、俺は頑張れる… 二度と会えないよりはよっぽどいい」


そんな言葉くらいしか出なかった。


「健司君はそうなんだ… 私は… 」


何か言いかけて麗奈の言葉は止まる。相変わらず涙が止まらない。麗奈が卒業まであと七ヶ月、それまでに何とかしなければいけない。何もしないと何ともならない…


俺は泣いてる麗奈を抱き上げてベッドに連れていき、麗奈を抱いた。麗奈はすごい力で俺を抱きしめてくる。麗奈の心の不安が伝わってくる。今は俺には麗奈を抱きしめてあげるしかできない…



その日はそのまま少し眠った。起きてから麗奈を優しく抱いていると、ようやく元気が出てきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ